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日記(20191211)

お湯が止まったので困った。どれぐらい普通なのかわからないけど、うちには水と電気しか来てなくて、ガスはもともと通ってない。たぶん建物の中央ボイラーで熱湯を作ってて(そこにはガスが来ている)、それが各家のお湯とかハイツング(暖房)に循環してる。

ちょうど今、読む必要があって貯めていた本をまとめて読み進めているところで、生活が不規則になっていたんだけど、夜中に暖房が動いていないことに気付いた。

いくらしっかりしていて保温性の高いドイツの建物でも、建物全体に血管のように巡っているお湯が一斉になくなったら、どんどん冷たくなっていく。外はゼロ度に近い。最初は「布団の中でも本は読めるからな」と余裕でいたが、翌朝になっても動いていないしお湯も出ないので、すくなくとも自分の家だけなのか、建物全体なのか、それだけでも把握しておきたかった。

昼になって建物の玄関を見に行ったが、なんの貼り紙もないし、何かの業者が来て工事をしている様子もなかった。とりあえずその場で

「うちは今、全部屋の暖房がつかないです。うちだけですか?なにか情報がある人は共有してくれるとうれしいです。メールアドレスはこちら…」

と書いて貼っておいた。1時間ほど経ったころにメールが来て、その人の家もそうだということ、すでに管理会社に連絡したが、いつ直るのかは分からないということを教えてくれた。名前とフロア数が書いてあったので、すぐに顔が浮かんだ。何度かすれ違ったことのある人だ。中国のような名前。僕の名前もすぐにアジアだと分かる名前だ。お互いいろんな苦労がわかるから、特に助け合わなきゃ、っていう気持ちがある。

集合住宅には他にも、「うちの荷物誰か預かってませんか?」「来週日曜日、誕生日パーティーで多少うるさくなります、ひどかったら呼び鈴を鳴らすか電話してください」「イケアのでかい棚が不要になったんだけど誰か要りますか」みたいな貼り紙が日常的にある。

先日、クリスマスの飾りがなされた出窓に「この超かわいいデコレーション!あなたの家のデコレーションは私を笑顔にしてくれた!ありがとう!」と貼ってあるのを見た。数日後、そこに「私も!ありがとう!」と別の筆跡と色で書き足されていた。間違いなく、登場人物たちがどう振る舞うかでその場の空気は変化する。

(おわり)

おしらせが2つあります。

どちらもよろしくおねがいします。