パシャスタイル認定展2020

「Kayさんの写真教室に行ってライティングが分からなくて勉強した」
と言うお話をいくつか頂いた。
僕にとってはある意味反省すべきだけど、一方ではそこから凄まじく勉強した成果がそこには確かにあった。

「パシャスタイル認定展」
本日が最終日で13:00から最後までレビュワーとして在廊したが、ひとつひとつをゆっくり見て回るにはそれでも時間が全然足りなかった。足りないほどの熱意が成果になった作品の数々が、所狭しと並んでいて、そのどれもが、プロ顔負けと言って良いレベルだった。もちろんプロとして仕事をしている人も参加されている訳だけど、その情熱は確かに結晶化していた。

僕もみんなと大して変わりはしない。
だから僕は「Kay先生と呼ばないでほしい。Kayさんと呼んでくれ」と皆さんに言っている。

子供の頃から写真を撮っていた訳ではなく、僕は大学に入って初めて一眼レフカメラに触れた。
武蔵野美術大学映像学科というところで映像の基礎は一眼レフカメラと言われて強制的にカメラを購入させられた。
それでも写真が良く分からなかった。ほどなくして一枚の写真を見て「ちゃんとした一眼レフカメラってこんなに綺麗に撮れるのか…」と思った。
それはただ、学食で友人が友人を撮っただけの、何気ない日常の、多分なんの話をしているかすらその時にはもう覚えていないほど、本当にありふれた瞬間を切り取っただけの、なんの変哲もないポートレートスナップだった。

それが30年前の話だ。

それから僕はプロカメラマンになって20年を越える年月が過ぎた訳だけど、20年、雑誌や広告で写真を撮ってきた。ケラやアゲハ、黒文字系女性媒体が多かった。カタログ系ファッション誌の中でも割りと自由度の高い事をやらせてもらっていた。
意識高い系カメラマンから「クソギャル雑誌」と罵られながらも楽しみながら紙面を作ってきた。
タイアップしたブランドから「面接にきたバイト志望者が切りぬきを持ってくる」なんて言われるととても嬉しかった。そう言う楽しさを、僕は確かに経験させてもらった。

今回のパシャスタイル認定展で
「Kayさんって、最初もっと直感的に撮ってるのかと思ってました」
と言われた。
確かに、気心の知れたモデルやスタッフと作品撮りを行う際、ノー
プランで勢いで撮る事もなくはないが、大体の場合は、事前に撮るべき内容や機材は決まっている。

仕事で撮影する場合、昔であれば
打ち合わせ→機材とフィルム発注→現場撮影
と言う流れになる。
テーマなどに即して絵コンテ(ラフ絵)は編集者やアートディレクターが描き、そのテーマに合わせてスタイリストが衣装をかき集めて徹夜でコーディネートする。
ロケの場合、ロケバスと打ち合わせしてどこで何を撮るかを決め、スタジオの場合、モノによっては前日からセットを作り込んだりする。よくアシスタントと編集者と3~4人でスタジオセットを作っていた。(予算があれば美術セットの建込みをいれるけど、スチール撮影でそこまで予算があった事が、僕にはない。)

そしていよいよ本番だが、スタジオの場合は足りないものがあっても、なんとかなる場合が多いので仮に何かがダメになってもなんとかなるが、ロケの場合、雨天時も含めて毎月のルーティン撮影に予備日などないので、必ず撮りきる必要がある。最悪雨の場合は雨をしのいで撮りきれる事も算段に入れ、必要カットに応じて機材とフィルムも準備する。冬場の日中は、日照時間の関係で15:00~16:00にはロケカットを撮りきっている必要があるので、よりタイトなタイムスケジュールになるが、“ルーティン”なチームワークである場合が多いので、各スタッフの連携は相当スムーズに進む場合が多い。

そんな撮影を大体毎月、数冊の媒体でそれぞれ行う訳だけど、こんなものを“直感”で進められるわけがない。
撮影後は、撮影中にアシスタントに計測露出、撮影露出などを書き込んでもらったフィルム番記表を元に、まずテストボディで数枚ずつ撮ってあるテストロールを現像に出し、それに即してそれぞれの状況に合わせて、現像指示を決定して本番現像を流して、仕上げる。


これらがワークフローの全てと言うわけではないが、概ね、商業カメラマンの行っている作業は、直感というものとは程遠く、予め狙った結果に、違わず到達することを目的にして黙々と作業を進める事になる。
アーティスト撮影や広告撮影の場合は、デザイナーやアートディレクターとカメラマン(場合によってはアーティスト自身も加わって)が、プロデューサーやアーティストの意向を汲み取ってラフデザインを作り上げた後でスタイリストやヘアメイクと分業していく。

作品撮りはこれらの分業を、ごく少数のスタッフで、ごく限られた機材とごく限られた予算でやらなければいけない。
デジカメが主流になり、また屋外で手軽にストロボ撮影が可能にもなったことで、これらのワークフローがとても簡単になったとは言え、それでもとても大変だ。

さて、今回のパシャスタイル認定展を振り返って、驚くのは、この作品展に出された作品のどれもが、
“ちょっと押せば写る“程度を遥かに越えた、それこそ昨日今日でさっと撮られたような、それこそ“直感的”なものではなく、じっくりと悩みこんで“作り込まれた”計画的継続的な成果そのものを、いくつも見ることが出来た…と言う部分だった。

手間隙を惜しみ無く注ぎ込んだ成果の凄さは、恐らく、経験した者にしかわからないかもしれない。“直感的”な作品こそ素晴らしいという人もいるかもしれないけど、その情熱の“凄さ”は全ての作品から伝わってきた。

普段SNSが主な作品の発表の場であれば、特に、印刷やプリントになった場合の違いをまざまざと感じた人も多かったようにも見受けられた。
もちろん新しい課題にぶち当たった人も多かったように思う。

それぞれの参加者の方々の、それぞれの情熱を、本当に大事にして、僕も一緒に励んでいきたいと心の底から思った一日だった。


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