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ミュージカル SPY×FAMILY感想

帝劇SPY×FAMILYの感想です。

最初に参考までに書いておくと、私は原作を最新まで一気読みしてから舞台を観に行きました。
アニメも、たまたまだけどちょうど舞台でやったあたりまでは観てます。

なのでリアルタイムで追ってたファンのようにSPY×FAMILY自体に強い思い入れがある訳じゃないけど内容は知ってる前提で書いてると思ってください。

あと2.5の観劇経験はあんまり無いので、そのあたり文化は理解してないところがあるかもしれないです。

総評

結論から言うと、だいぶしっかりした出来栄えだったので、普通に知り合いや原作ファンに勧められる感じの完成度でしたね。
歌もお芝居も安定してて、進行自体もすごく堅いつくりで、減点があんまりない感じ。
あえて嫌味な言い方をすると優等生的ってやつかも。
でもミュージカルとして笑あり涙あり興奮ありで楽しめたし友達や家族と観に行くのに向いてると思います。

原作をなぞってるだけと言えばそうなんですけど、これでいいやろみたいなやっつけ感があんまり無かったというか。要は丁寧って事になるのか?
これこれ!って感じになることが多かったですね。なかなか説明しづらいんですけど原作のミュージカル化としてしっくりくるというか、「SPY×FAMILYをまんまミュージカルにするならこのシーンはこんな感じになるよな!」みたいな。
いやお前は何目線だよって感じなんですけど、もちろんできたものに同意するのとゼロから作るのは全然違うので、無難なのかもしれないけど納得感のあるものを作れるってすごいことだよなと思います。

すごく主観的な話になるんですが、どれとかどれと比べてなのかは言わないんですけど、「あー、ちゃんとミュージカル好きな人が作ってるなー」って感じました。
そりゃそうだろって言われるかもしれないんですが、「実際に好きな人が作る」のと「好きな人が作ってるんだろうなーと客に思わせる出来栄えにする」のは全然違うのでこういう表現になる。
(わかってるなとかでもいいんですけどそれだとあまりにも玄人面というかお前何様だよって感じなので……)
アンサンブルの活躍させ方とか好き。

脚本

話は原作の途中までをほぼ忠実になぞってたと思います。大きく違うのはフィオナの出番が早まってるくらいかな?
こんなに変えなくてイケるものなの?となるくらい、思ったより話の内容は変えてなかった。と思います。
あくまで1回読んだだけの人間の記憶なのでもしかしたら気づかなかっただけかもしれませんが、大筋は学園に通い出す手前までをほぼそのまま舞台にしたと思っていいと思います。

特徴として、原作の台詞をそのまんまなぞって歌にしてる率がかなり高かったです。
別の2.5の舞台の感想で「原作の台詞をそのまま歌にしてポンと出しただけでは客に伝わりにくい」みたいな事を書いたんですけど、この作品に関してはそんなこともなく、原作の台詞を流用しながら自然に歌になってるなと感じました。

何でか考えたんですけど、今作、かなり歌と台詞の境目が曖昧というか、曲!台詞!曲!というよりは話してる流れのまま台詞をメロディに乗せてるようなタイプの曲が多かったのでそのおかげかなと。
パンフレットのG2×かみむら周平さんの対談を後で読んだら、やっぱりそこら辺はけっこう工夫してたみたいで、素人にも伝わってるってことはその点は成功してるんだろうなと思います。

文脈やキャラの知識が無くても単でこの曲強いな!ってナンバーがバンバン出てくるって感じのミュージカルではないんですけど、2幕最後の曲とかフィナーレに使われてた曲は盛り上がりましたね。
たぶん、曲名は違うけど3回くらい同じようなメロディでリプライズされるメインテーマみたいな複数キャストの曲があると思うんですけど、そこはだいぶ単で盛り上がってたと思いますね。
1幕フィナーレとか、かなり好きでした。

キャスト

どのキャストも原作再現度が高かったと思います。
アーニャ役が福地美晴さんだったんですけど舞台の仕事が初とは思えない堂々たる演技でびっくりしました。
あとユーリ役の岡村さん初見だったんですが歌が上手くてシスコンの芝居(シスコンの芝居?)も器用でウケてた。良かったです

あえて言うなら

ここまで基本褒めてるんですが、ここからあえて欠点を書きます。
読みたくなかったら飛ばしてOKです。

まず、さんざん書いてるように話自体は基本的には原作をなぞってるだけです。
なので舞台的な演出とか曲ではなくて、脚本自体に何か新規性が欲しい人はたぶん物足りない。
かつ舞台で描かれるのは途中までなので、連載中の原作漫画があってそれの舞台化である事を理解してないと、キリいいところで纏めてるとはいえ、話自体はだいぶブツ切りになります。
ただこのあたりは、最初の方にも書いたけど私が2.5あんまり観てないので……。続き物の漫画の舞台化ではまあ普通なのかも。

個人的にその皺寄せをだいぶ被ってるなとなるのがフィオナで、後半で出てきてけっこう長丁場で絡んだ後けっこうすぐにフィナーレになってしまうので、フィオナを知らない人には脇道感というか何のために出てきた感があるかもしれない。
フィオナが出てきて黄昏先輩好き好きムーブするのって原作だとわりと後ろの方だと思うんですが、学園編に入ってしまうとダミアン他主要生徒を出さないわけにはいかなくなって子役の数と出番をべらぼうに増やさなきゃいけない、とか色々と制約があっての出番繰り上げなんだろうなと推察します。
ただ出すにしても原作通りにせずそこくらいはオリジナル展開で何かいい感じにして最後まとめでもよかった気はしてますね。
まあ、そのあたりはオリジナルなるべく入れて欲しくない人には長所だろうし、一長一短だと思います。

まとめ

そんな感じで良くも悪くも原作遵守、さすがに小慣れてて手堅いというか、安心して勧められるクオリティでした。

SPY×FAMILYの舞台化として見るとかなりの完成度という意味で原作ファン向けのようでもあり、漫画原作のしっくりくるミュージカル化のお手本的な意味で観劇好き向けのようでもあり。

方向性自体はだいぶ明確なので、これから観に行く人がいれば合う合わないの判断はしやすいかも。SPY×FAMILYをそのまんまミュージカルにしたいんだよ!という想いを感じた。