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今、MTGAと韓国MTGコミュニティが熱い!神決ベスト8、MF京都2日目に残った韓国人プレイヤーに話を聞いてみた

 ラヴニカの回帰からMTGを始めたという、ベ・デギョン選手の優勝で幕を閉じたMF京都。それも、渡辺雄也という殿堂を倒しての大金星だった。渡辺も、自信のTwitterで、「彼のプレイはとても上手かった」と話しており、MTGAによる新時代の到来、そして、韓国のMTGコミュニティが今熱い。

 そんな中、私は偶然にも知り合いの会社の同僚ということで、とある韓国のプレイヤーと知り合った。そんな彼は、今年から日本に来たばかりで、いきなり晴れる屋のスタンダード神決定戦ベスト8、そして、今回のMF京都でも、こっそり2日目に残っている。今回はそんな方と対談という形で、韓国のMTG事情と、MTGA新時代を話してもらおうと思う。

「えっと、Google翻訳を使うのであれば、韓国語、英語でも対談できますが、日本語とあわせてどれがいいです?」

「日本語でお願いします。日本語の勉強がしたいです」

「わかりました! ではまず、お名前から聞かせてください。HNでもいいですよ」

「チョウ ジョンウ。35歳です。今年から日本でプログラマーをしています。MTGは本名を使うことが多い文化なので、むしろHNは秘密です・・・SNSがバレてしまいます」

「わかりました( MTG歴は何年?」

「15年です。相手を驚かすようなカードを使うコントロールが好きです。普通は使わないカードとか、メタサイドボードとか」

「具体的にどんなのです?」

「韓国選手権のトップ8で、悪斬の天使の入ったフェアリーを使ったりしました。あと、安全な道で火山の流弾を防いだりとか、メインから野生の跳ね返りで祖先の幻視を奪って6ドローするとかですね」

「そういう発想ができる人は強いですねぇ。野生の跳ね返りは確かに驚きそうです!」

「まぁ、成功したことはあまりありませんが、楽しいゲームになることは多かったです」

「いいですね! ところで、渡辺雄也のファンだって聞きましたよ。彼は昔は毎日うちでドラフトしていました。彼が家に帰るための電車がなくなる時間を勝手に調べて、それまではやれ! って言った時もありましたね( アニメのけいおん!とかも知ってます?」

「アニメは好きでした。けいおん!が流行ってる時は韓国の兵役義務中だったのでビッグウェーブには乗らなかったです。最近はあまりアニメは見ませんね。時間をほぼゲームに使ってしまうためです」

「ソウル在住だったと聞きましたが、ソウルのショップの事情を教えてもらえますか?カードやパックの値段、デュエルスペースの料金や営業時間とか」

「2019年の今、デュエルスペースのあるショップは6~7件。30人以上プレイできるショップはその中の4つです。基本どこも入場料無料ですね。パックは日本より少し高くて、350円ぐらいです。シングル価格は外国サイト(cardkingdom)を参考する場合が多いですね」

「ほとんど日本と変わりないですね。晴れる屋トーナメントセンターみたいなものは流石に日本くらいしかないはずなので」

「カードを販売する店はもっと多いですが、デュエルスペースまである店はそれだけです。2年前はもっとあってPPTQも10回できましたが、ちょっと減りました」

「それらのお店でのコミュニティについて聞かせてもらえますか? どういう人達が集まり、どういった形でMTGを遊んでいるかとか」

「基本的に遊戯王に比べ凄く値段が高いイメージがあり、大学生と社会人が多いです。コマンダーの場合、英語講師のアメリカ人とか色んな外国人が集まって楽しんでいます。最近はハースストーンとシャドウバースの影響でDCG勢が増え、MTGAが出た後は中・高校生も増える途中です。韓国での販売代理店であるハスブロ社の韓国支部が、戦略的に他ゲームのライブストリーム配信サービスのストリーマー達に依頼して広告したんです。オンラインコミュニティはMTGAが流行ったあと増えましたが、詳しくは知りません。有名ポータルサイトにMTGプレイヤーが集まり、外国の情報を共有しているらしいです」

「遊戯王も流行ってるんですね。MTGと遊戯王以外にもカードゲームってあるんですか?」

「小学校~中学校でポケモンと一緒に人気ありました」

「あぁ、ポケモンもですか。韓国だけのカードゲームとかもあります?」

「バンガードも韓国版があります。韓国だけはDCGはありますが、TCGは今はないです。昔はアラド戦記とソードガールズのTCGありましたが、今はもう撤退していますね」

「なるほどー。そんな中でチョウさんは、強くなるまでにどんな経緯がありましたか?」

「私は一緒に遊んでいた同じチーム内に、MTG一本でのプロプレイヤーを目指した人がいて、そこからいろいろな情報を得ました。海外のコラムを見るのも大好きでしたね。でも練習時間が少なくて、成績は普段は悪かったんです」

「やはり、プロの人と交流があったり、コラムを読んでいるプレイヤーが強いのはどの国でも同じですね」

「はい。新たな情報は大事だと思います。でも、最近はコラムよりストリーマーさんの方がいいかもしれません」

「市川ユウキプロが、有料配信とかもしてるそうですね」

「友達が彼のファンで、購読者限定記事をもらっていたらしいです」

「MOやMTGAはやっていますか?」

「私はseason1だけミシックで、就労関係であまり熱心にプレイしませんでした。まぁ、これからはもっとしようと思っています。MOは今はあまりプレイしていないですね。運がいい時MOCSのトップ8に入った時もありましたが、まともな結果は出ませんでした」

「覚前輝也プロが、MTGAで結果を残しましたからね。これからは、MTGAをやり込むことが実力につながるでしょうね」

「はい。そうだと思います。今日、高橋優太プロも同じような話をしていたと友達に聞きました。私はMTGAは無課金勢でしたが、結局課金しちゃいました」

「いくら課金しましたか?」

「1万円しましたね。リミテッドをするならもっと必要かも・・・」

「リミテッドはしていないんですね。リミテッドすると逆に、どんどんカードが揃いますよ!」

「シールドのイベントはよかったんですが、ドラフトは一度失敗した後は繋がらなかったです」

「まぁ私も結局、ダイヤモンド1で10000円の課金が切れてしまいました・・・あと1個でミシックなんですけど、追加課金ですかね・・・さておき。今回のMFで韓国の新人が優勝しましたが、この先、韓国のMTG文化・コミュニティはどう発展・成長していくと思いますか?個人的な見解で構いません」

「アリーナは結構人気ある状況で、優勝という良い結果が出たからもっと挑戦する人から増えると思います。韓国にはゲームで成功したいと思う人が多いです」

「確か、韓国はネットゲームのプロが大勢いる国ですからね。確かに、そんな下地はありそうです」

「ですね」

「では、チョウさんのMTG感に関して、まず、神決・MFで使用したデッキと、使用した理由を教えてください」

「ラクドスアグロでした。リストは晴れる屋にあります。理由は色々ありますけど、一番は友達の言葉でした。私は普段コントロールが好きだったんですが、その上手い友達に、『君はミスをしてもドローが多いから勝てるデッキしか使わないから実力が上がらないんだよ。ミスったら負けるミッドレンジよりも速めのデッキも練習しろよ』と言われまして。せっかくたから昨年強かったデッキをモチーフにして作りました。神決の成績が良かったので、少し調整してMFもでました」

「なるほど。確かに、ビートダウンは、小さいミスで負けてしまいます。でも、コントロールやミッドレンジのようなロングゲームを狙うデッキほど、ミスが響きませんね」

「強いカードでミスを相殺するとか・・・」

「ありますねぇ。だからこそ、試合の中での緊張感が違うのでしょうか?」

「それもありますが、今の段階では出した後で『しまったー』とミスに気付くことが多いですね。コントロールの方がやっぱり相手にどのように対応するか緊張します」

「それはまだ、ビートダウンに慣れていないからかもしれませんね。私は逆にビートダウンの方が緊張してしまいます。特に、同じビートダウンと戦う時ですね」

「カードの使い方の選択肢が多いからですか?」

「ですね。特に、クリーチャーでの戦闘の選択肢が難しいんです。で、今回のデッキは、どこでどうやって作りました? あと、練習方法とか」

「昔のデッキコンセプトを今のカードを使って作るのは好きなので、代わりを見つけながら作りました。マイナーチェンジですね。青いデッキに勝つため稲妻牝馬をメインから4枚使いましたけど、MFでは一度も当たらなかったですね・・・メタ失敗です。練習は、今回はあまりしてないです。その結果MF2日目でミスって負け、調子に乗れないまま連敗しました」

「大きな大会で特定のデッキに当たるかどうかは運ですから、仕方ないですね」

「赤いデッキに4回当たって、3回負けてます・・・」

「やはり同じようなデッキとのデュエルは、経験の差が出ますね」

「途中対戦した晴れる屋HOPESのタイの方曰く、『日本はいつも赤いデッキが多いんだ』と言ってましたね」

「一昔前は、青が多かったんですけどねぇ。晴れる屋の独自メタもあるので、注意が必要です。神決・MFでの印象に残ったゲームについて教えてもらえます?」

「神決は瀧村和幸プロに勝ったゲームでした。炎鎖のアングラスで、ハイドロイド混成体を奪って勝ったんです。MFはアゾリウスアグロ相手に有利な状況で土地ばかり引いて、負けかなと思う最後のターンで火による戦いをドローしてかちました」

「トップデッキが決まると気持ちいいですね」

「そうですね」

「でも、トップデッキは、その状況を作るまでの腕前の差だと思いますよ」

「それで結局裏目で負けると悔しいですけどね」

「今のスタンダード環境ってどうでしょう?」

「速いデッキがブン回ると一瞬終わるゲームが多いと思います。やりすぎだと思うほどメタらないと勝てない場合が多いんですよね」

「確かに、昔に比べてクリーチャーがとにかく強くて、コントロールの逆転が難しくなっていますね」

「なんか息を継ぐ暇がないイメージです」

「強いコンボもあまり見ませんし、スタンダードはどんどん、ビートダウンの時代になるかもしれませんね。さておき、ここまででやっぱりコントロールが好きなんだなぁ、ってよくわかりました! モダン、レガシー、あと、リミテッドの経験とかは?」

「レガシーは友達が凄く好きなので色々借りてプレイしました。GPも2回。モダンはあまりプレイしませんね。横浜は出る予定ですが。リミテッドは昔は好きだったんですが、韓国ではいつも取切のドラフトで、競技的な練習が出来ないからどんどんやらなくなりました」

「モダンはコントロールが強いので楽しいですよ!」

「と、思いましたが、最近はフェニックスとドレッジが厳しくて・・・」

「あぁ、コンボも強いですねぇ・・・」

「メインから安らかなる眠りを使う青白が結果を出したとも聞きました」

「確かにフェニックスとドレッジに勝つなら、必要かもしれませんね・・・リミテッドは、アリーナでも練習が難しいんですよねぇ。CPUとのドラフトと、人とのドラフトはまるで違います。BO1の登場によって、サイドボードという、プレイヤーの実力の差が出る試合が減りつつあります。でも、ドラフトはこの先もずっと、プロが強いでしょうね」

「そうだと思います。ドラフトでもアーキタイプを作って戦略的に強化していくのはいつもプロのほうですから・・・」

「MTGAのEスポーツ化について思うこととかあります?」

「ウィザーズが色々実験始める時期だと思います。基本的には良いと思いますが、紙との両立は上手く出来るのかなと心配です」

「MTGAは素晴らしいと思いますが、すべてがMTGAになってしまえば、カードの価値が変わってしまいますからね。今までの市場を壊さないためにも、ウィザーズは少なくとも、モダン以下は紙で行うと思います。スタンダードだけEスポーツ化していくんじゃないですかねぇ」

「コマンダーも大事ですね。ボードゲームみたいで好きです」

「確かに! で、昨今のMTGの賞金とかどうなんでしょう。韓国の物価を踏まえて」

「もちろん低いと思います。一般人の話題になりませんし、他のPCゲームに比べて圧倒的に低いです」

「やはり低いですね・・・最近私が感じてることなんですけど、MTGの記事の価値に関してはどう思います?チャネルの有料化、晴れる屋の質の高い無料記事、プロの有料記事とか」

「私は普段は無料記事だけみてスターシティプレミアムはあまり見ないんですが、最近の日本のプロのnote記事は時期によって500円を遥かに超える価値があると思います。それでも見たい人は見る、ぐらいですが。適切な価格は難しいですね」

井川良彦プロのエスパーコントロールの記事は買いました?」

「はい。買いました」

「あれは素晴らしい記事でしたね」

「サイドボードに関する方向性を語るのが特に良かったです」

「八十岡翔太プロがTwitterで、マリガンルールの変更で、今まではマリガンが難しかったけど、今はサイドボードが一番難しくなったと言っていましたね。BO1の流行とあわせて、サイドボードの戦略がプロとアマチュアを分ける差になりそうです」

「そうですね。でもアリーナのせいでBO1のオフラインが今後増えるかも・・・」

「賞金以外で稼ぐプロってどうでしょう。有料配信やサロン、ティーチングへの興味関心とか」

「正直に言うと、賞金が低いからしょうがなくするんだと思います。最近の佐藤レイさんのサロンは関心ありましたが、売れ切れでした。ティーチングは詳しく説明しても人が一瞬上手くなるはずがないんですが、受ける側はそれを期待しているから失望することが多いと思います。経験談ですね」

「経験談というところを、詳しく聞かせてもらえますか?」

「MTGじゃない経験が多いですが、MTGの場合、MOで上手い人に色々学んだことがあります。話は理解したと思えても、大事なドラフト(PTQ)で結局レアを取ってしまって、デッキがうまく回らなかったんです」

「理論を覚えていることと、経験が身についていることは違いますからね。結局は、練習が一番、ということですね。だからこそ、とにかく回数がこなせるMTGAは良さそうです」

「はい。自分のプレイが正しいと納得するまで、プレイするのが大事だと思います」

「私もそう思います! で、この先、晴れる屋に通うらしいですけど、日本のプロコミュニティへの興味とかってあります?」

「日本は新たな戦略が多く出るから興味はいつもあります。でも、入っていくのは難しいと思います。周りにマジックにオールインしたけど上手くいかなかった人がいて、ちょっと失敗が怖いです・・・」

「確かに35歳という年齢を考えても、今からのオールインはとてもできませんね・・・でも、MTGAでミシックを維持し続けることはできると思います。実際今回も結果を出していますし、仕事との両立はできると思いますよ!」

「時間・空間的に便利なのがMTGAの良い点ですからね。それなら出来ると思います」

「それで、今のチョウさんの目標は?」

「まずは日本の生活に慣れることですね。後は私もMFトップ8入りたいです」

「日本はご飯が美味しいと、海外のプロはみんな言っています。今回はネットでの対談でしたが、今度新宿の近くの美味しいお店にいきましょう!」

「はい。今回も京都の紹介してくれた店、凄く美味しかったです」

「それはよかった! 最後に、チョウさんにとってMTGとは?」

「人生をかけるほど面白いゲーム。色んな出会いが生まれ、世界が広がる趣味です」

「では、遅くまでありがとうございました!」

「ありがとうございました!」

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