「を、歩道橋で」分冊版(2)
著:カワセミオロロ
歩道橋には花壇が並び、季節の花が咲いている。肌寒くなりつつある夏の終わり、秋の始まり。10月とはいえ、冬に比べればまだ暑い。
比較することで感じることができる有難み。
過去を乗り越えて今があるとは、到底いえない。受け入れることは出来たけれど、乗り越えてはいないと感じる。
一人で街を歩いていると、染みわたる人の声と響く雑音の中で、過去の記憶が引き出される。
「悪い癖だ。」
ただ、昔ほどやり直したいと思わなくなったのは治療のおかげだろうか。
泣いて叫んで、大暴れ。私は何度も死んだ。都合が悪くなればリセットボタンを押し続けた。
その結果、私は一人になった。
壊れた原因なんて一つに絞りきれない。いろんなことが多感な時期に重なり、刺激し崩壊させていった。
誰も責めれない。本当のことなど言い切れない。自分を責めることばかりを選び、身体中を傷めつけた。
「みんなと同じように歳を重ねて、同じようになりたかった。」
私だけ、こんな目に合うのか、そんなことで頭がいっぱいなのに、自分を責め続け、事態は悪化していった。
ひどく懐かしいのに、曖昧な記憶ばかりなのは病気だからか。
少し感傷的になりながら、少しばかり長い歩道橋を渡り始める。
ご高齢の奥さまグループや、大学生がすれ違ってゆく。そして、私もすれ違って前に進む。たくさんの人とすれ違い、これからも生きていく。
誰も気にも留めない。この世界の当たり前のルール、対して他人のことなど、気にもならない。
頭の中は少しポエマー。そして、このまま数十メートルの歩道橋を渡りきるのだろう。花壇の花を眺めながら、真っすぐに歩いていくのだろう。
この日、彼女と出会わなければー。
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続く
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