手袋を捨てて不自由になれりゃいいのに

からだを一気に小さくさせたから
気が付くと
ポケットサイズにされてしまう

一生そこに住めたら
どんな人生を送れるのだろうか
そう少しだけ大袈裟に捉えてしまった。


そのあったかさが右手からみるみる芯まで伝わってきて
気が付いたら体ごと
手袋の中に入っていたのかな。

そうだったらいいのに…


結局はそのとき、ちゃんと密閉されてるのが右手だけだから
ちょっとだけ嫉妬してしまう

こんなに防寒してきたのは
なんだったんだろう

ピアス屋の店員に「あったかそうですね」
とだけ言われた
その洒落っ気も可愛げもない
グレーで無地の右手の手袋だけ
そっとわたしの上着の右手のポケットの中にしまってさ


すると一瞬にして

この世にとって右手の手袋は
必要のないものになったのだという事実が証明された

だって捨てたはずの右手だけが
どんどん温もっていくもんだから

役目を終えて飽きて捨ててしまったみたいで
その分厚い布には
悪いことしたなって申し訳なくなる。

そして、熱を持ったものは蒸されていく
「手汗も吸収してあげるよ」
そんな気色の悪い言葉も何だか有難い言葉かのように聞こえてしまうのは、大人になったからなのだろうか
それは全く分からないけど

「これ以上好きになってもいいの」
「どんどんいいよ…」

「依存してくれればいいから」
「ほんとにいいの…」

ちゃんと不自由になる道を決めきれない自分の中途半端さには、
いまは頬っぺしか侵入を許すことが出来ていないそれも含めて、まだポケットの中に入りきれてないこういう気持ちがあるんだ。

時間が経つと
いらないはずだった
右手の手袋だけが
がんじがらめにされて
わたしのポケットに転がっているだけだった
そんな結末を
恐れなくてもほんとにいいの…

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