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詩集

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練習帖ですが、よければご覧ください。
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2024年1月の記事一覧

大晦日

便器を念入りに磨く 年越し蕎麦を啜る 国と私の絆 曇りなき窓は青い 落葉した栗の木が天に向かう それが自然だから 夜が来た いつものことだ だから今日もいつもの一日だ 乞食は龍の化身だった―― だからあの湖に消えた 燃えさかる湖面 暗闇に浮かぶ民衆の眼

手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手を 繋ぐ 手は 私だった

行き先は…

無限に続く一本道に すみれの花が咲いていた ぼくがその深紫色を 感覚に取り込もうとするとき 後ろから遮ったやつがいた 「馬鹿!そんなものほおっておけ!」 「うるさい!」と僕は叫んだ しかしそのスーツ姿のバッタ男は 鞄から硝子で出来た容れ物を取り出すと その細長い緑色の触手を伸ばし すみれをむしり取って 容れ物に入れてしまった だからぼくの感覚は バッタ男を取り込むと すみれもバッタ男もいなくなってしまって―― 結局、また僕は独りぼっちになってしまった そうしてぼくは ふたたび

JAZZ

孤独な夜はJAZZを聞く そう、俺は月明かりに照らされた男 ベージュのトレンチコートの胸ポケットに 秘密のメモ書きが大量に入ってる 大きく開け放たれたステンドグラスの窓から トランペットの音が山を越えて流れていく 狼男がトランペットの音を追いかけて、 今にもその音色に泣き出しそう 山の反対側のセレブが沢山住んでいる街の灯は 点いたり消えたりして、 いつ終わるとも知れない遊戯に 人だかりができている! 狼男はついにその街まで下りて来ちゃった! あるスターが玄関扉を開けるとばった

泥棒

泥棒どもはたくさんいる その花菖蒲の葉叢の陰に あの古刹の寺の窯の中に 庭の芝生の日溜まりに あまりに早く 冬から春に季節がめぐるほどの早さで かすめ盗って行く 枯葉が舞って 気付いた 遅し! もう手遅れだった! 無花果は熟したが それは惨めな夢の影 色とりどりの小石が転がる浜の 永遠の歌