初めてのアシスタントは質問していきましょう

初めてアシスタントの仕事を受けた方が、最初に悩むのは、どれくらい作家の先生に質問をしてもいいのだろうか、だと思います。

先生、この描き方でいいですか? 描けていますか?
もっと描き足しますか?
描きすぎですか?

程度が把握できていないので、実は細かく先生に訊きたいのだけど、先生は忙しくて、訊いていいものなのか躊躇する。
これはありがちで、本来確認作業は仕事の上で重要で、それは忙しかろうがやるべきで、忙しいからこそおろそかにできないことなのです。

今、多くなった在宅での、デジタル漫画作業前提で、仕事場で他のアシスタントさんに、どうしたらいいのかを尋ねられない状況でお話しています。

何しろアシスタントをするのが初めての人は特に、程度も、仕様も、流儀も何もわからない手探り状態です。
私なら、しつこいくらい、やり方や描き込む程度を先生に聞いて、というアドバイスをしますね。
と同時に、アシスタント側は、第一稿が上がったので、その後は直すものだという気持ちでいましょうと。一発で通ればラッキーくらいに思っていて、それが通常運転だと。
自分で分からないなら原稿をDropboxに入れてとにかく見てもらってと。
 
これは漫画家の仕事場が、作業スタイル、流儀が、各個人で違うので仕方がないでしょう。

むしろ訊かないで、よそでこうだったからと、違うやり方を持ち込まれて、作業現場が混乱したことは沢山あるんです。
私の仕事場でも他所の仕事場でこうだからと勝手に下絵を消されて、仕事をやり直しさせられ困りました。しかし、そのことを前もって言わないのは、こちら側の責任でもあるなと痛感しました。

本来は、仕事場ごとの手順確認、そして仕事場での進行確認は重要事項なのです。
忙しさを理由に、アシスタントからの質問を面倒くさがる。そこの手を抜くことが危険な事だと思うんです。

確認して欲しくてDropboxに入れた原稿も見てくれない、それは本来おかしいんです。

周囲に〆切で忙しい時は先生はろくにチェックしないと言われることは多いです。でも、そういう状況を招いたのは先生自身の責任だから、手伝う側から不明な点があれば確認したいのだし、そこは当然です。ガンガン訊いていいはずです。

アシスタント側が自分が不慣れなせいで、忙しい先生の作業の手を止める、つまりいちいち煩く聞いて悪いとか、申し訳ないとか思うのは筋違いで、先生にはきちんと指示を出し、結果を確認する、その責任があります。

大体、忙しさを理由に、上手いアシスタントに適当に処理を任せるとか、丸投げする描き手って、私は嫌いなんですよ。

作家のとる行動として甘えてるなって思います。細かくイメージを伝えて自分の世界を表現するのが本来やることだろうって思うし、丸投げはアシスタントの作業量が増えること、頭も余計に使う、その分時間もかかるって負担が増すことには意識を払わない人がやりがちです。でもそうしておいて作業を急がせているんです。

(親しい漫画描き仲間でもこれをやられると私は内心がっかりしますね。丸投げするしかないような事態を招いたのも貴方なんだよねって思いますし、それで最初から楽が出来ると思って投げてきたとしても、私は「リテイク出ても、直す時間がこちらにないから」と、しつこいくらいチェックを促します。大体、甘く見て投げる人には、投げられるより確認しながらの方が結局作業は早いことが何故か多いんです。気が引き締まるんでしょうか? でもそういう制作進行の舵取りは本来アシスタントが管理するこっちゃないので、周囲に余計な世話はかけさせないように、と思います)

本来作家として自分が描くところを他者に手伝って貰って、時間を稼いでいるんだから、そこを適当にやる=投げるっていうのが私は納得できないですね。
そこまで任せたら作画担当誰々とクレジットしなよって思うんです。それやってる漫画家はいるよ?って。
その必要がないと思うなら、アシスタントに、なるべく正確に、やって欲しいことを伝えるのは作家としての、先生の仕事の一つなんです。

忙しいからを理由に依頼した画面のチェックもしないのは気も、手も抜いてるってことです。
リテイク出て、描くのはアシさんだから。先生は金は払ってると思うんでしょうが、仕事場全体でも、無駄に皆の時間も使ってます。
 
こうしてくれると思ってた、と言うならちゃんと言うべきなのです、先生は。
自分で勝手に任せる、つまり投げたら当然責任は先生がとるものです。
 
でもその前に、作家は作業を安易に投げるな、ってことなんですよ。

忘れちゃいけない。
アシさんはな、怖くて先生に大事な指示も簡単に訊けないものなんだよ
でもそれ、おかしいでしょ、仕事の場のありようとして。

アシスタントが、分からない自分が悪いのかと勘違いさせるって、先生の怠慢が起こすことです。

実際忙しくても、初めての人に沈黙させるようにし向けることは控えて欲しいものです。こっちはこんなに忙しいと見せて、相手に考慮するように願うのは作家、描き手の先生の甘えです。
その初めての人にお願いしたのは、誰でもなくご自身ですよ。その責任逃れになるんです。
 
先生もアシに仕事依頼するなら、依頼した側の責任も生じるので、色々勉強しないといけないんだって話です。

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