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ヤフオク、浮世絵、名家コレクション落札金額五百万千円

noteにて浮世絵のヤフオク事情を何回か書いてきました。
2020年7月には芝居絵の3枚続きが安く良いのが出品されているからと書きました。

上の絵柄は摺りも状態も良いのに5251円で落札されたのです。
美術館に飾ってもおかしくない状態なのに1万円以下で買える。
浮世絵は唯一世界に誇れるアートなのに、日本人は関心を示しません。
私が訴えたからか、今ではこんなに安くは落札はできません。
とは言っても1万円を超えるくらいで落札されてしまいますから、まだまだ、日本人に正当評価されていないと言えるでしょう。
日本人が自国のアートに気づけば、この3枚続きも最低数十万円するようになるでしょう。
1800年代の浮世絵はヨーロッパの絵画に革命を起こしたのですが、それに日本人は全く気付いていません。
そして、その1800年代の浮世絵の中でも幕末の浮世絵が印象派を創ったのです。
印象派に影響を与えた浮世絵は広重、三代豊国の浮世絵が中心です。
その三代豊国の3枚続きが1万円以下で買えるなんて、おそらく今を置いてないことでしょう。
ヤフオクは高額の品物は余り出品されません。
1000万円以上の品物を、現物見ずに買う人はいないでしょう。
それ故、浮世絵も500万円を超えるのはまれです。
そのまれが昨日ありました。

歌川貞秀の6枚続きです。
この浮世絵は名家コレクションと題名にかかれているだけで、説明欄には何も記してありません。
寸法も書かれていないのです。
題名には「(う12) 名家コレクション 浮世絵 歌川貞秀 アメリカ国大船之図 木版画 時代 当時物 」と記してあるだけです。
ただ、写真は10枚載せられていて、裏からの写真も載せてあります。

この裏からの写真により、この浮世絵が印刷ではないということと、よそからのコピー貼り付けではないと分かるので安心はできます。
それにしても、ちゃんとした浮世絵出品者(浮世絵の店など)はスキャンしたのを載せるのに、これはカメラで撮った浮世絵を載せています。
つまり、本気で売ろうとしていない。
流れ作業で出品しているということです。
写真を10枚載せ、裏の写真も載せているので素人ではありません。
そこで、他にどのようなものを出品しているか調べると、

上の写真にあるように古美術品ばかりです。
つまり、この出品者は古美術商、骨董屋と分かります。
評価は4051なのでそこそこの骨董屋でしょう。
つまり浮世絵のことはあまり詳しくないということです。
これはどういうことかと申しますと、浮世絵コレクターが亡くなるとそれを相続した人が、骨董屋に持っていき、一山数万円とか、数十万円で売り払ってしまい、それを買い取った浮世絵商がヤフオクに出品するということです。
最近は、このような出品が増えています。
私の世代(今は70歳前後)に一度、浮世絵のバブルがありました。
つまり70代前後から80代くらいの浮世絵コレクターのコレクションがヤフオクに流れているということでもあります。
これは、コレクターがが亡くなり、引き継いだ人が骨董屋に売るというだけではなく、コレクター自身がヤフオクに出品していることもあります。
有名な国周コレクターが80歳を超えているので、自身のコレクションをヤフオクに何年間も出品しています。
ただ、コレクター自身が出品する場合は浮世絵の価値を分かっていますから、絶妙な値段をつけます。
1000円から出品などはしません。
1000円から出品する人は浮世絵の価値などは分からず、直ぐに換金したいだけです。
だから感じの良い人はあまりいません。
今回の出品には名家コレクションと出ているので、コレクターは金持ちなのか、名のある人だったのでしょう。
ただ、一般の名品の浮世絵が出品されたわけではありません。
この500万円を超えた浮世絵を始め、歌川貞秀作品は9点あります。
今回の名家コレクションは100点近くの出品がありますから特別多いというわけではありません。
ただ珍しいのが多いようです。

上の浮世絵を見たら国芳の「源頼光公館土蜘作妖怪図』だと勘違いするかもしれません。
でも国芳のは下です。

微妙に違いますね。
そしてこの国芳はヤフオクで194,000円で落札された浮世絵です。

名家コレクションの方は、国芳でもないし状態から見て高く落札したように思えますが、貞秀のこの浮世絵は珍しいからかもしれません。
同じ貞秀で名家コレクションでも下のように安く落札されたのもあります。

これは逆に安く落札されすぎていますが、これを見ても貞秀作品が高いわけではありません。
同じ名家コレクションで貞秀の3枚続きをしたに載せます。

42,500円と21,500円という落札金額は相場の金額に思えますし、これが貞秀の評価だと思います。
ただ、500万円とは行きませんが、普通の相場より高値の落札もありました。

上は横浜絵とか長崎絵と言われている浮世絵で横浜港開港により、欧米と貿易が行われるようになり、外国人も横浜に居つくようになったために、外国人を入れた浮世絵が人気を得てたくさん出版されました。
印象派のモネも横浜絵はたくさん所有しています。
ただ、普通の横浜絵はヤフオクでは2万~5万くらいが落札の相場なのですが、これは倍の値段が付きました。
また、貞秀ではないのですが横浜絵で136,000円で落札されたのもあります。

これは歌川広重と記してありますが、印象派に影響を与えた初代ではなく2代でしょう。
そして貞秀でもう一つ高値で落札がありました。

縦3枚続きです。
これら高値で落札された共通点は珍しい浮世絵だからということです。
私も今回出品されたのを見て、こんなの初めて見るとすぐにウォッチリストに入れましたから。
もちろん安値なら入札をしましたが、手が出ない値になっていったので見ているだけでした。
ヤフオクは、100円からとか1000円からの出品に関しては、一般市場の2分の1もしくは3分の1で落札されます。
だから、一般相場は落札の2倍から3倍と考え下さい。
ところが珍しい浮世絵は一般価格かそれ以上になることもあります。
500万円以上で落札された6枚続きの相場の金額は私もわかりません。
私は落札金額6万円前後だと思っていたので、500万円は理解のできない浮世絵が出品されたということなのだと思います。
もしかしたら世界に1枚しか無いのかもしれません。
とは言っても、世界に1枚しか無いという浮世絵ってそれなりにあります。
世界に数枚ならゴロゴロあります。
私のコレクションにもいくつかあるはずです。
そして、世界に1枚しか無いという浮世絵で高値になるのは有名絵師の場合です。
でも貞秀って、名前は知れ渡っているけど幕末から明治の浮世絵師の中でナンバーワンというわけではありません。
芳年や国周よりは知名度は落ちます。
それなのになぜ500万円?
横浜港には大型客船は横付けされませんから、客船から港、港から客船に行くときは絵のような小舟で行きました。
それが珍しかったのか?
私もこのような船(サンパン)の存在は知っていましたが実物は知りませんでした。
もっと小さい船なのかとも思いました。

サンパンは水上タクシーなので、港で待ち構えてお金を取って地元の人が商売していましたが、この絵を見ると水兵さんが櫓を漕いでいるようです。
そして小船に載っているのも貴婦人や紳士のようだし水兵も外国人に見えるので、サンパンとは違うのでしょう。
まあ、歴史的にも貴重な浮世絵なのだと思います。
10万円以下なら参加したのに。
名家コレクションはこれ以外にも高値で落札されたのがいくつもあります。
10万円以上を載せます。

そして、ここまでのほとんどが幕末1860年代の浮世絵です。
江戸の浮世絵の中では価値のないとされている年代の浮世絵です。
下は名家コレクションでは珍しい、幕末の浮世絵ではありません。

70万千円と130万千円ですから、浮世絵としては数カ月に1回あるかないかの高値です。
6枚ある春英は1700年代に活躍した浮世絵師です。
写楽や歌麿と同じ年代です。
1880年代のパリでは、この年代の浮世絵を最盛期の浮世絵として幕末の浮世絵とは区別していたし、印象派やファン・ゴッホに影響を与えた幕末の浮世絵を軽蔑していました。
そして、それは現代でも引き継がれ、浮世絵の名品の展示会というと、1700年代の古浮世絵が展示されます。
だから名家コレクションという題名をつけるのなら、この6枚の春英のような作品が多く出品されるはずなのに、一般では価値が低いとされている幕末の浮世絵が中心です。
それでも珍しい浮世絵なので高値で落札されていましたが。
でも、なぜわざわざ名家コレクションという題名をつけたのでしょう?
すると、題名に(う20)などの番号が振られているのに気づきます。
あいうえおが初めに来て最高30のナンバーがつけられています。(お30)(え30)など。
ということは、5×30で150点ほど浮世絵があったのではないかと推測できます。
つまり50点は出品されていない。
推測ですが、その50点は歌麿や、北斎、晴信、清長などの作品で、高値で売買できるために浮世絵商の処に直接売ったのかもしれません。
幕末の浮世絵を浮世絵商は高値で買ってくれないために、ヤフオク出品にしたのかも。
そして、この落札金額は出品者の骨董屋も予想外だったでしょう。
今頃、ほくほく顔を浮かべているに違いありません。
何しろ、500万円という金額はめったにヤフオクではありません。
最近、写楽が出品されたことがあり、私もそれをnoteに書きました。

この写楽は1、656、000で落札されました。
この時はもう一点写楽が出品され、それは80万円で落札されました。

これは宮沢賢治の遺品作品だと書かれていて、本物っぽいのですが、私は復刻版ではないかと思いました。
これも裏からの写真が載っていて、それを見ると紙が厚いように感じ復刻版の可能性が高いと私は思ったのです。

それに本物の写楽なら浮世絵商がこの落札金額以上で買い取ってくれるはずです。
写楽だと外国人もお客になりますから、最低、数百万円で売れるはずです。
おそらく浮世絵商に持っていき、本物ではないと言われヤフオクに出品したのではと推測できます。
では、これは詐欺なのかと問われるとグレーですが詐欺にはならないでしょう。
浮世絵の表と裏を載せていますので、後は自己責任になってしまいます。
ヤフオクで浮世絵の詐欺はあります。
過去に何百回もあり、私もヤフオクに通報したけど、ほとぼりが冷めると出てきます。
見極めは簡単で評価なしとか評価ひとけた台で良い絵柄の浮世絵が出たときは詐欺の可能性が高いです。

上のようなのが詐欺です。
よそから画像をコピー貼り付けしてます。
そして印刷をして掛け軸として送ってきます。
もちろん印刷の掛け軸とは書いてありません。
去年は本物として出品していましたが、今年はサイズを掛け軸のサイズにしてあるので大判浮世絵より大きなサイズが記してあります。
だから完全な詐欺とはいえないのですが、詐欺の中と言えるでしょう。
でも。警察に訴えても、ヤフオクに訴えても取り上げてくれず泣き寝入りになります。
この詐欺で過去に最大の落札金額は85万4千円です。


最初の二十五万千五百円のと同じ絵柄です。
この絵柄は何回も使われています。
同じような詐欺に近いのに下があります。

国芳の有名な『宮本武蔵の巨鯨退治』です。
下のような写真もあるので、これだけなら本物に見えます。

ところが、裏からの写真がありません。
これが印刷されたものなら裏からの写真でわかります。
そして説明欄には
《「宮本武蔵の鯨退治」は3枚続きの作品で、3枚の画面いっぱいに波に乗る大きな鯨が描かれており、中央の絵の中ほどでは、危なげなく鯨の背にまたがった武蔵が鯨に剣を突き立てています。この構図は宮本武蔵の修行時代の伝説からヒントを得たもので、現実にあった出来事ではありませんが、荒れ狂う海と暗雲が立ち込める空の描写にはリアリティと迫力があふれており、武蔵の体は小さいながらも自信に満ちたている様子がその表情と体の動きから感じ取れます。

サイズ 各 縦約36.2cm×横約25.2cm

プリントアートにご興味をお持ちいただき、ありがとうございます。
専門的な知識はございませんので予めご了承ください。
画像にてご判断いただけると幸いです。》

と書かれています。
プリントアートにご興味?
これ、プリントアートとは書いていないけど、読みようによっては、印刷なのかと分かります。
つまり、詐欺ではないよと言いたいのでしょう。
でも、これも詐欺だと思うけど、訴えても警察もヤフオクも相手にはしてくれません。
ちゃんとしているところは印刷ははっきり印刷と書いてあります。
落札者が誤解しないようにあちこちにそれを入れています。
私もプリントアート(今の六色か八色のプリンターならプリントアートを印刷できる)を出品していますが送料込みで800円です。
これは、商売というより、クレポンを浸透させるために、ぎりぎり赤字の出ない価格で出しています。
もしプリントアートとして出品するのならば15000円の値段がつけられます。

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