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ワシ、魂はまだこっちに居てたらしいデ
2015年2月8日にコッチ来たと、おもてた、んやけども。
身体をなくした、というだけで、どうやらワシの魂はあの世へ行かれんとウロウロしてたらしい。
というのは、
愛美さンいう「エンパスリーディング」いうのをつかわはる霊能者の方が、ワシの痕跡を読んでくれはって、孫で養子娘のアカネちゃンにそう伝えてくれはったらしい。
肉体滅びてなお、アッチに行かんと、
この世に色々思うことあったワシの思いを通訳してくれはったまなみさんへのお礼と共に、思いだす色々を以下に取り留めなくまとめたい所存。
まぁ年寄りの書きごとやから、ぼちぼち行きます。
ワシの自己紹介をモッペン。
ワシは大正6年3月19日京都の上京、出水学区生まれ。所謂京都の西陣ていうとこで、生きてたら105になってます。
家業は西陣特有の撚糸業というやつで、原糸というのがバサッと来るのをきれいに整えて糸巻きに巻く仕事やさかい、真面目さとかきっちりさとかがいるものやった。
ワシは幼くして死んだ兄の良一の生まれ変わりやと言われ、ホンマは次男坊やけども長男のように、大事に大事に育てられたもので、嫌いなもんは嫌い、好きなもんは好きと憚らずに云うてしまうような子ぉで、泣き虫やった。
幼い頃から京都の街中に親戚を持って、お三味線ができる祖母オマサはんに可愛がられ、この芸術家肌のオマサはんがワシも好きやった。
家業の忙しさをありありと見て育ったけれども、
好き嫌いはっきりのワシはどっちかて云うとお三味線やらお歌やらちょっと文化的なことの方が好きやった。
オマサはんの影響も多大にあったやろなぁ。
自分で言うのもなんやけど勉強も割合でけたし。
当時にしては「男たるもの」の逆をいくなヨォっとした、まぁ要するに京のヤサオトコやったのです。
対する親父はみんなから慕われて、ツヨイひとやったと思う。
泣いたらあかん、ミっちゃん。て。
小さい頃は「感情」というものを使いあぐねては抑圧でけずによう泣いたもんやけど、
時代は戦争へと進んでいく中で誰もが何かをいつも我慢していくのが当たり前になって。
親父はやっぱり泣いたらあかん、つよならなあかんてワシをしばいたりして。
表に出したらあかんのや、て12歳くらいには思うたわけです。
14−5の頃にはもう綺麗なもんを綺麗とおもて泣くよな
ナヨナヨしたヤサオトコのミっちゃんは封印して。
ほんで、死ぬ間際までワシは「感情」をうまいこと殺して生きていくのやけど。
感情抜きに、戦争で腑抜けた時代を生きるには力が必要やったのやね。
21で徴兵があって、いっぺんは中支(ワシの頃は中国を支那というて。中支は中部の支那)へ派遣、いっぺん帰国してもういっぺん今度はビルマ。
「ジャワは極楽、ビルマは地獄」
ていわれてなぁ。
ワシの居た野洲兵団はマラリア部隊と言われるくらい、兵隊さんの殆どは戦死よりもマラリアに罹って死んだもんやった。
感情は遠くに置いてきたけども、
こんな時代、ビルマなんていう熱帯に来る機会なんて滅多とないさかいに、
こんな僻地の珍しいお花や動物を見ては
「へぇ」と動く心持ちなぞがあったりして。
まぁ、それをワシの出来心でこっそり日記みたいなのに書き留めたりしてたら、
上官にバレてしもたりして。。。
やっぱりこんな戦の最中に、楽しむ心というのは「悪」とされたのです。
色々あって終戦から家に帰れたのは3年後、
1948年、ワシは31の時でした。
帰国できることになった時、軍用船はなかったさかいに
民間船(三菱とちゃうかな?)が迎えにきて、広島まで帰って。
ほんで広島から列車で京都に帰ることができて。
敗戦後の国内、市中の人たちをワシは目の当たりにしたのが、
ワシの時代に立ちながら人前でものを貪るなんてことははしたないと思って当然の感覚やったのやったのやけど、
帰って目を見張ったのが、誰も誰もが、
ひもじぃてしゃあない様子で何かをかじってたことやった。
そういうワシも、人目も憚らず、恥なんかは戦時中にとうに捨てて
おいしこともない、なんぞをかじって飢えをしのぎしのぎ家へと急いだのやった。
家について、
当時は呼び鈴なんかないし、鍵もかけへんご時世やったから、
戸が開いてるて知ってるし、中にお母ハンやらがいるて知ってるのやけど、
すぐに「ただいま」とも平和なそぶりでは云えず、
戸の前で、
「やっと、生きて、帰ったのや」
とおもてはこみ上げるものを堪えられずに泣き崩れてしまったワシやった。
ああ、ちょっとようけ思い出を書いて疲れたので、またの機会に続きでも。
時間はこっちにきてようけあるさかいな、、、
ミツオ
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