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可愛さへの執着

可愛くなりたい。私の生活は可愛いへのストーカー行為と化している。清純で、かわいくて知識があって、細くて、愛嬌がある女の子に私はなれない。いつからこうなれないって気づいたんだろう。

幼稚園の時から女の子をできなかった。ピンク色とプリキュアが好きでズボンは持っていなかった。だけど、おままごとでは毎回お父さん役だった。名前が「ゆうき」だから。男の子みたいな名前だから。ゆうきくんって呼ばれるのが何よりも苦しくて切なかった。
お遊戯会ではピンクの衣装を着てダンスをしたかった。でもグループの女の子から「ゆうきちゃんはたかしくんとピエロをして」って言われて、何もできなかった。でもそのあとに先生が仲介してくれてピエロは免れた。ピンクが好きって言ったらキモがられたから水色が好きって言ってた。習い事で新体操をしてたんだけど、手具のボールは水色にした。今でもピンクにすればよかったなって後悔する。

小学校に上がっても、小児科へ行っても、新しいコミュニティに入ると必ず「ゆうきくん」って呼ばれていた。自分の名前が大嫌いだった。自分が女の子をするのは社会から拒否られてる気がした。それでも可愛くなりたかった。女の子が良かった。AKBになりたかった。ともちんに憧れて前髪を伸ばしたし、まゆゆみたいなワンピースをよく着ていた。私はかわいい女の子になりたかった。

小4から太りだしてミニスカートが履けなくなった。体操着の短パンを履くのがとにかく嫌だったけど、長ズボンを履くと汗をかいていじめの対象になるからそれもできなかった。休むのは親が許さなかった。太ったらかわいい服を着れないから、かわいいから遠のいてしまう。でも食事でストレスを飲み込んでいたから我慢できずブクブクと太っていった。今思うと食欲に負けちゃうのかわいいなって思うけどね。当時は惨めだった。

クラスの中心にいる女の子はダンスしてる派手な子が多かった。私もそうなりたくて運動会ではダンスリーダーをした。新体操でリズムダンスはしてたから、振り付けは私が考えた。一番頑張ったのは私な自信があったけどセンターは細くてかわいい子になった。仕方ないって知ってたけど悲しかった。

かわいいものへの執着は高まるばかりだった。ずっとずっと、可愛くなりたかった。愛することが可能な女の子になりたかった。

高校生になるとメイクをしても、かわいい下着をつけても親が口出ししなくなった。メイクは先生にばれると落とさなくちゃだったけど、先生と仲が良かったので目をつむってもらっていた。女の子を解禁することが許されて嬉しかった。

それと同時にスマホの利用も解禁された。だけど、インターネットにはかわいい子の「ブスだから死にたい」って言葉が添えられた自撮りやブスへの攻撃で溢れていた。私は、私宛ではないひどい言葉にブスブス刺された。
ブスは可愛いを許されない。愛されることは不可能。ブスなんて評価基準ないのに。ブスは実体なんてないじゃない。ブスは思考だから、押し付けないでほしい。てか人はそもそも可愛いし、それを馬鹿な世の中に分かりやすく伝えられたもン勝ちだと思ってた。
でも、私はブスだから謙虚に生きたほうがいい気がした。ブスのくせに調子乗ってるのはイタイ。顔が整ってないのに「私、今日もかわいい♬」って面していると「なんでブスなのにそんなに自信あるの?うらやましい」って言われるし、「ブスだから死にたい」って言うと「ブスのくせにネガティブとか救いようない」って言われる。とにかく黙っていないとなんだ。

で、黙ってた結果、生きづらいくらい可愛いことに敏感になった。皮肉なことに私は自分をブスだと思えば思うほど可愛くなっていった。女の子として扱われるようになった。
女の子扱いされることに喜びしかなくて、女として見られることが何よりも嬉しかった。セクハラ紛いのことを言われても私にとっては御守りだった。

世の女の子は、おじさんから触られたり、繁華街で女の子だけ貰えるティッシュが差し出されるとすごく嫌だと思う。だけど私は構ってもらえるのが何よりも嬉しくて、女の子として見てもらえたことが自己肯定に繋がった。
おじさんが私を触るのは可愛がってくれてるからで、繁華街でキャバクラに誘われるのは私が女の子だからでしょ?違うのかな。そうだと嬉しいな。私は他者に肯定されないと、自己肯定もできないのだ。こんなに1人が好きなのに絶対に1人で自分を好きになれない。こんなの嫌だけど、認めるしかない。

ここ2、3週間ずっと病んでてリストカットをしたり死ぬ方法を調べたりしている。何で死にたいのかなって考えた。多分、最近は人から褒められてないし、女の子扱いされてないし、可愛いって言われてないからだと気づいた。私は【人から】何かしてもらわないと死にたくなるんだ。何か惨め。頑張って人から可愛いって言ってもらえるように社会的な美を目指したい。けど、人の可愛いと自分の可愛いは関係ないしなぁ。私の可愛いはもう十分可愛いんだけどなぁ。

でも死なないように、みんなに分かってもらえる可愛さを築いていかないとかも。

誰か憂鬱を譲ってください。あとちょっとの憂鬱で私は死ねる気がするんです。死なせてください。人生が可愛くないと生きてる意味ない。



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