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殺すより盗むが良く、盗むより騙すが良い。//チ。

大帝国宰相ウィンストン・チャーチルには味のある名言・箴言が多い。
その中でもこれは白眉だと言えるだろう。

「殺すより盗むが良く、盗むより騙すが良い」

これはチャーチルが「諜報の極意」として語った台詞であり、現代を生きる日本人にとってもなかなかに示唆のあるものだろう。
今日はこの箴言について語っていこう。

麻生太郎とゴルゴ13に学ぶ「諜報」


諜報というのは日本においてもはや聞きなれないフレーズかもしれない。
先の大戦によって大日本帝国は強い軍隊と最強の諜報機関を失ったからだ。
諜報とは、
情報を操ることによって自らの組織や共同体を有利に導く「技法」メソッドである。

分かり易いのが「CIA」だったり「KGB」だったり「モサド」といった諜報機関だ。
CIAはアメリカの諜報機関。
KGBは旧ソ連の諜報機関。
モサドとはイスラエルの諜報機関。
このように「ゴルゴ13」を読めば、世界の諜報事情に表向きという注釈つきながら精通できるはずだ。
あの麻生太郎がゴルゴ13を愛読して「世界の諜報事情がよく描写されている」と語ったことがある。
それを受けて中曽根元総理が「麻生が言うんならば読んだれ」とゴルゴ13をパラパラとめくって「大苦笑」したという逸話も残っている。

中曽根は先の大戦を将校として実地体験した人物であり、本物の諜報を生で知る人間だから思わず大苦笑してしまったのだ。

それほどまでに諜報の世界は深い。



気付かれたら試合終了の世界


「殺すより盗むが良く、盗むより騙すが良い」

ではチャーチルの箴言を紐解いていこう。
前段の「殺すより盗むが良く」とはどういうことか?
諜報の世界においては、気付かれないように動くのが原則である。
スパイというのは気付かれたらそれ以上活動できないからだ。
さながら、気付かれたら試合終了ですよ、の世界だ。
会いに行けるアイドルなどがブームだが、スパイとしては会いに来られては甚だ困るのだ。



殺す

では、
期せずして関係者に会いに来られたらどうするか?
関係者を殺すことになる。
気付かれたこともろとも関係者を抹消抹殺するのだ。
これは最後の手段である。
何故なら諜報の心得は、関係者から継続的に情報を入手することだからだ。

関係者を殺してしまうことには2つの問題点がある。
問題の1つ目は、関係者を殺してしまうと情報が継続入手できなくなるということ。
問題の2つ目は、関係者を殺してしまうと「追われる存在」となりその場所で諜報活動が出来なくなるということ。

だから「殺す」ことは上策ではないのだ。



盗む

気付かれたら試合終了ですよ、の世界。
諜報の世界において殺すのは上策ではないことは既に述べた。
ではいったい諜報員諸氏はどうすれば良いのだろうか?
情報を「盗む」のがなかなかの好手だ。

国家機密情報などを盗めば、その国家がどのように動くかを知り、先んじて動けるため外交・軍事において風上に立ち続けられる。
だから情報を盗むことはなかなかの好手になり得るのだ。
だが「盗む」ことにはリスクがつきまとう。
盗むことが発覚した場合に、先ほど述べた「殺す」ことになるからだ。
殺してしまえば継続した情報収集はご破産となり、ひいては追われる立場になって諜報活動が蹉跌することは既に述べた。
だから「盗む」ことも上策ではないのだ。



だます

殺すのはダメ、盗むのもダメ。
では諜報員諸賢はいったいぜんたいどうすれば良いのだろうか?
おすすめは「だます」ことだ。
ここまで「殺す」と「盗む」を解説してきたが、両者には通底する問題点がある。
その通底する問題点とは「受動的」だということだ。
「盗む」というのはある国家がどう動くのかを密かに知る行為だ。
これではある国家の意思までは変えられない。
「敵国の動きを知るための情報は盗んだが、もう打つ手がないことが分かった」
「敵国が攻撃してくることがわかっ  」
では手遅れだ。
それでは自国を守ることはままならない。

そこで「騙す」という積極性が必要になるのだ。
「だます」とは簡便化すれば敵国をこちらの意思通りに動かすことだ。
だから「だます」諜報においては「盗む」必要がなくなる。
ひいては「だます」諜報は敵国を敵ではなく味方として扱える。
マイナスが消えてプラスになるのだ。

しかもこれまでの「殺す」「盗む」といった受動的諜報にあった発覚リスクが抑えられる。
やっこさん達は、こちらからの情報でチャキチャキ動いてくれるのだから。



殺すより盗むが良く、盗むより騙すが良い


諜報とは情報を縦横無尽に駆使して自分たちの共同体を守る「技法」メソッドである。
戦争や外交の前に自国を優位に導き「戦わずして勝つ」を実現するための技法である。
この諜報において国家要人を暗殺するのも一案だが、この殺すという行為自体が戦争の発火点になりかねない危険な手口だ。
この諜報において国家機密情報を盗むのも一案だが、この盗むという行為には発覚リスクが付き纏う。
しかも「殺す」も「盗む」もリスクの割に他国を意のままには操れず、諜報合理性に欠ける。

そこで「騙す」がおすすめに浮上する。
敵国中枢にもぐり込み意のままに操れば、殺す必要も盗む必要もなくなる。
しかも発覚リスクは最小化される。

だから「だます」は諜報において上策中の上策になりうるのだ。

便宜上、国家単位で話しを進めたが、
この「殺す << 盗む << 騙す」の不等号は企業でも個人単位にも当てはまる。
殺すや盗むなんて物騒なことをしなくとも、
「信じてもらう」ことで人間関係は好転するのだ。
それを時に「騙す」ということもあるが。





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