整数解の数

0<y≦Nを満たす数yを
適当に選んだとき、y周辺の数が
平方数である確率(割合)は
1/2√yの程度になります。
平方数yは
y=x^2(=f(x))
と表されます。
f´(x)=2x
なので、yの周辺では平方数の
間隔が2x=2√yの程度に
開いています。
このことからy周辺の数が
平方数である割合は1/2√yの
程度であることがわかります。
これを確率モデルとして考えると
0<y≦Nの範囲にある
平方数yの数は

① Σ1/2√y (1≦y≦N)

の程度であると期待されます。
①を次のような積分で近似して
みます。

② ∫dy/2√y
(積分区間は[0,N])

②の値は√Nとなり、実際の値の
よい近似となります。
より一般に、

③ F(x,y)=0

の整数解の数について考えて
みましょう。
ここでFは既約なZ係数多項式で、
素数の因数も持たないとします。
(上の平方数の例は
F=y-x^2
のケースにあたります)
xが整数値x0をとったとき、③は

④ F(x0,y)=0

となります。
この左辺をg(y)とおくと、
これは整係数多項式です。
すると④は

⑤ g(y)=0

となります。
上の平方数の例と同様に考えて、
⑤の解y0が整数である確率は
1/g´(y0)と想定されます。
g´(y0)=Fy(x0,y0)
なので、この式は
1/Fy(x0,y0)
と表せます。ここで、Fyは
yによる偏微分∂F/∂yを
表します。
F(x,y)=0の陽関数表示を
y=f(x)とおくと
y0=f(x0)です。
よってxの区間[a,b]に
おける整数解の数の期待値は

⑥ Σ1/Fy(x,f(x))
(a≦x≦bについての和)

となります。
⑥は次のような積分で近似
されます。

⑦ ∫dx/Fy(x,f(x))
(積分区間は[a,b])

これも一つの近似式ですが、
③が多価関数であった場合は
分枝ごとに分け直して考える
必要が出てきます。
そこでxではなく、③の解曲線C上
での積分で表してみましょう。
C上ではF(x,y)=0なので、
微分を考えると

⑧ Fxdx+Fydy=0

となります。
ここでFx,Fyはそれぞれ
x,yに関する偏微分を表します。
⑧より

⑨ dy/dx = -Fx/Fy

また、Cの線素をdsとおくと

⑩ dx/ds
  =1/√[1+(dy/dx)^2]
  =1/√[1+(Fx/Fy)^2]

となります。
⑨,⑩より

dx/Fy(x,f(x))
 =ds・(dx/ds)/Fy(x,y)
 = ds/(Fy・√[1+(Fx/Fy)^2])
 = ds/√(Fx^2+Fy^2)

よってC´を解曲線Cの一部分
とすると、C´上にある整数点の
個数の期待値は

⑪ ∫ds/√(Fx^2+Fy^2)
(C´上の積分)

となります。
3変数以上の場合も同様です。
たとえばF(x,y,z)を
既約な整数係数多項式
(素数の因数も持たない)とすると
曲面F(x,y,z)=0の
適当な領域D上にある整数点の
個数の期待値は

⑫ ∫ds/√(Fx^2+Fy^2+Fz^2)
(D上の積分)

となります。ここでdsは面積素,
またFx,Fy,Fzはそれぞれ
x,y,zについての偏微分を
表します。
⑪,⑫はあくまで確率的な
期待値であって、実際の値に
符合するとは限りませんが、

F(x,y)=y-h(x)
あるいは
F(x,y,z)=z-h(y,z)

のような形の関数の場合は
よい近似となります。
しかし期待値と実際の値が
大きく異なるケースもあります。
次回はその例として、
フェルマーの大定理のケースを
取り上げようと思います。
(つづく)


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