フェルマーの最終定理の確率解析

フェルマーの最終定理(FLT)は
次のような命題です。

「nを3以上の自然数とするとき、
整数x,y,zが
x^n+y^n=z^n
を満たすならばxyz=0である」

言い換えれば、
いずれも0でない整数x,y,zで、
上の式を満たすものは
存在しないということです。

nが大きければ感覚的にもそうした
例がなかなか存在しないだろうと
予想されますが、小さい値なら
反例(すなわち非自明な整数解)が
あっても不思議はなさそうに思えます。
確率的にはどうなのか。
まず、方程式

① x^n+y^n-z^n=0

はxyz座標空間内の
曲面M(n)を定めます。
左辺をF(x,y,z)と
おきましょう。
曲面M(n)の部分領域M´内にある
整数点の個数をN(M´)とおくと、
その期待値E(M´)は次の積分で
表されます。(前記事を参照)

② E(M´)=
∫dS/√(Fx^2+Fy^2+Fz^2)
(曲面M´上の積分。dSはその面積素)

非自明な解を考えるならば
xyz=0の領域を除いて積分
することになりますが、この領域は
3平面の合併となり、
そのまま取り除くだけでは
積分値に影響しません。
そこで除外する領域に厚みを
もたせたいのですが、
厚みとしては1が妥当なところ
だと思います。これは、
格子点d=(p,q,r)に対し、
その代表領域R(d)を

p-1/2<x≦p+1/2,
q-1/2<y≦q+1/2,
r-1/2<z≦r+1/2

で与えられる区域と考えれば
自然に出てきます。すなわち
dを中心とする辺長1の立方体です。

すると積分の対象となる領域Dは

x,y,z∈(-∞,-1/2]∪(1/2,∞]

となります。
原点を中心とする半径rの閉球を
S(r)={(x,y,z)∈R^3
|x^2+y^2+z^2≦r^2}
また
M(n,r)=M(n)∩D∩S(r)
とし、
N(n,r)=N(M(n,r)),
E(n,r)=E(M(n,r))
とおくと、FLTにより
N(n,r)=0(0<r)
r→∞としてもN(n,∞)=0です。

他方で4≦nならばE(n,∞)は
有限確定値となります。
これはまあ、計算の具合で
その程度のずれはあっても
不思議ではありません。

ところがn=3のときには
E(3,∞)=∞となり、
確率的には無限に多くの解が
あると期待されます。
実際にはN(3,∞)=0となり、
これは大きく異なります。
ここには何か秘密がありそうですね。
FLNの証明には楕円曲線の
数論的性質が重要な役割を
果たしますが、n=3の場合は
素イデアル分解の性質により導かれます。
そうした数論的性質がこの不思議な
乖離を生み出しているのは
とても興味深いことですね。


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