代数的整数が環をなすことの証明

代数的整数とは、最高次係数が
1である整数係数多項式の根と
なるような数のことです。
言い換えると、次のような形の
多項式の根です。

① x^n+a1・x^(n-1)+
   a2・x^(n-2)+・・・+an
(ai∈Z,1≦ i ≦n)

たとえば√2はx^2-2の根なので
代数的整数です。
1+√3もx^2-2x-2の根なので
代数的整数ですが、1/2は
代数的整数ではありません。

代数的整数の全体は環をなすことが
知られています。
すなわち、α,βが代数的整数なら
α+β,αβ,-α,α-β
も代数的整数となります。
今回はその証明について
見ていきましょう。

α,βが代数的整数であるとします。
αを根とする多項式を上記の①,
またβを根とする多項式を②と
しましょう。

② x^m+b1・x^(m-1)+
  b2・x^(m-2)+・・・+bm
(bj∈Z,1≦j≦ m)

①の根を
α1(=α),α2,・・・,αn,
また②の根を
β1(=β),β2,・・・,βm
とおきます。
まず、α+βは次の多項式F1の
根となります。

③ F1(x)=Π(x-αi-βj)
(1≦ i ≦n,1≦j≦mについての積)

これは α+β=α1+β1である
ことから明らかですね。
またF1の各次数、たとえばx^rの
係数crは各αi,βjについての
整数係数対称式です。
さらにcrにおける αiの各次数、
たとえばΠαi^diの係数
c(r,{di})
は次数型{di}をそのままにして
αiの順序を入れ替えても対称な条件で
決まる式なので。順序に関わらず
同じ式になります。
しかも各βjに関する整数係数対称式
なので、前記事定理2により各bqに
ついての整数係数多項式
c(r,{di})
とおけます。
すなわち、Παi^diの形の項を
まとめると

c(r,d)・Σ(Παk^di)
(Σはiの各順序i についての和)

Σ(Παk^di)も
前記事定理2により、各apの
整数係数多項式になります。
よってcrは各ap,bqによる
整数係数多項式であり、しかも
各ap,jqは整数だったので、
crもまた整数になります。
各rについて同じことが言えるので、
F1は最高次係数1の
整数係数多項式です。
α+βはその根なので、代数的整数と
なります。同様に考えて

④ F2(x)=Π(x-αi・βj)
 (1≦ i ≦n,1≦j≦m)

もまた最高次係数1の
整数係数多項式であり、
αβはその根となります。
よってαβもまた代数的整数です。
さらに、-1はx+1の根なので
代数的整数であり、従って
-α=(-1)αや-β=(-1)β
もまた代数的整数です。
従って
α-β=α+(-β)
も代数的整数となります。
0,1もそれぞれx,x-1の
根なので、以上により代数的整数の
全体は環をなすことが示されました。

次に、代数的数について考えましょう。
代数的数とは、有理数係数多項式の
根となるような数のことです。
すなわち

⑤ a0・x^n+a1・x^(n-1)
 +a2・x^(n-2)+・・・+an
(ai∈Q,0≦ i ≦n,a0≠0)

の根となるような数です。
式全体をa0で割っても条件は
変わらないので、a0=1としても
いいですね。
すなわち上記①式を有理数係数とした式

①´ x^n+a1・x^(n-1)+
 a2・x^(n-2)+・・・+an
(ai∈Q,1≦ i ≦n)

の根となるような数です。
代数的数αを根とする多項式を
①´とし、その根を
α1(=α),α2,・・・,αn
また代数的数βを根とする多項式を

②´ x^m+b1・x^(m-1)+
 b2・x^(m-2)+・・・+bm
(bj∈Q,1≦j≦m)

その根を
β1(=β),β2,・・・,βm
とおきます。
すると代数的整数の場合と同様に
代数的数α,βに関して
③,④のF1,F2、すなわち

③ F1(x)=Π(x-αi-βj)
④ F2(x)=Π(x-αiβj)

を考えることにより
α+β,αβ,-α,α-β,0,±1
はすべて代数的数となります。
またα≠0のとき、αを根とする
多項式①´ は an≠0であると
仮定できます。
もしそうでないならばxの適当な
べき乗によって割ることにより
定数項≠0とできるからです。
すると、αは①´の根なので

α^n+a1・α^(n-1)+
a2・α^(n-2)+・・・+an=0

両辺をα^nで割って項の順序を
入れ替えると

an・(1/α)^n+
a(n-1)・(1/α)^(n-1)+
・・・+1=0

左辺は1/αについての
有理数係数多項式で、1/αは
その根となります。
よって1/αも代数的数となります。
従って β/α=(1/α)βもまた
代数的数となります。

代数的数は複素数なので、
零因子がないこと、すなわち
α,β≠0ならばαβ≠0
であることも明らかです。

以上により、代数的数の全体が
体をなすことが示されました。

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