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【自然環境部会コラム】自然を訪ねて(6)自然の宝庫「坂戸城山」の一喜一憂!?

 坂戸城山の「一喜」は、2018年1月10日に「埼玉県希少野生動植物の種の保護に関する条例」で保護されているコクランの群生地が発見され、太陽光発電建設が中止になったことです。そして予定地17,000m2とコクラン、ミヤマウズラ、ヌマガヤ等の希少種の生育地の19,000m2の合計36,000m2が地主により坂戸市に寄付されたことです。坂戸城山の湧水地の山林を伐採して太陽光発電が設置されると、32年間「サワギキョウの会」によって守られて来た埼玉県では唯一になってしまった氷河期の植物、サワギキョウが絶滅に瀕する大ピンチでした。まずはすばらしい結果になりました。「埼玉県希少野生動植物の種の保護に関する条例」のおかげもありますが、なんと言っても地主さんの暖かい気持ちによる結果でした。

 次に「一憂」ですが、太陽光発電による自然破壊は食い止めることはできました。それは地域住民、地域保護団体、そして、我々埼玉県生態系保護協会川越・坂戸・鶴ヶ島支部との連携による活動で乗り切ることはできました。しかしながら、5年近くの歳月が経過する中で、気候温暖化や湧水の自然減少により、本年9月10日の「サワギキョウ観察会」では、最盛期13本あったサワギキョウが1本も確認することができませんでした。今年の5月までは、茎は曲がっていましたが、一本だけはかろうじて生きながらえていたのに残念でなりません。

 坂戸城山は、絶滅危惧種・準絶滅危惧種(RD種)の動物60種、植物41種が確認され、狭い範囲で合計101種にもなるすばらしい自然が残された場所です。また城山から100m幅の谷戸田んぼを挟んで毛呂山町の文人・武者小路実篤が、宮崎県から移り住んだ「新しき村」も自然豊かなエリアです。ここにもRD種が多くあり、動物16種、植物4種の合計20種になります。城山から直線で2kmぐらいの高麗川近くの滝不動では、動物は14種、植物は10種の計24種になります。城山近辺の高麗川での動物は9種になります。坂戸のこの付近合計では、動物99種、植物55種で計154種(2019年現在)とすばらしい地域です。

 坂戸エリアには、この7,8年3か所の太陽光発電計画がありました。最初はすでに書きました「坂戸城山」です。次の「西坂戸二丁目」は8年ぐらい前に雑木林を伐採、整地し、行政からの4点の勧告に対して対処したと、住民説明会で口頭で済ませるところでした。我々が関連質問と「新しい状況」に関する質問を入れた27項目に対し、行政にも我々住民にも文章で回答し、合意に至らなければ計画は中止するよう申し入れしました。半年過ぎても連絡がないので確認してみると、土地は売却して撤退したとの返事でした。ここでのキーポイントは太陽光発電予定地の坂戸市道を挟んだ雑木林は、オオタカが営巣している森だという点です。最後は、『坂戸市多和目北曽根太陽光発電』ですが、ここもオオタカの森があり、住民の反対運動で撤退しました。埼玉県でもまだまだ自然破壊を伴ったメガソーラー建設が多数あることを憂慮します。

(埼玉県生態系保護協会 川越・坂戸・鶴ヶ島支部長 福原時夫)


コクラン(絶滅危惧IB類)
ヌマガヤ(絶滅危惧IB類)

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