ダンダダンのOP『オトノケ』が『ヤマノケ』も逃げ出す恐怖のクオリティだった
アニソンは今やJPOPのトレンドになった。今までは電波ソングなどいわゆる「痛い」曲というものが主流で日影者だった文化。アーティスト側も主題歌を担当するだけでオタク曲を歌ったアーティストとしてそっちの路線で売るしかなくなってしまう。
しかし、昨今は人気アニメの主題歌を担当する事が一種のステータスになるほどにまでなった。YOASOBIやAdoなど錚々たるメンバーが名を連ねるこのアニソン界隈。Creepy Nutsもそのアーティスト達のひとつとして名を馳せている。
今期から始まった『ダンダダン』のOP主題歌も彼らが担当している。昨今のアニソンには大きく分けて二つのパターンに分かれる。原作のイメージに忠実に寄り添う曲とそうでない曲だ。まず前提として後述した曲が悪いというわけではない、アーティスト側もたくさんの人に曲を聞いてほしいアニメが流行れば御の字だが、そうでなかった場合のダメージは大きいしそのアニメが終わればそれまでになってしまうからだ。それを念頭に置いて話をする。
・原作ありきの楽曲の難しさ
原作に寄り添う曲というのは、とても難しい。それは楽曲としてもそうだが原作ファン達も納得できるほどの理解がないとまず認められないからだ。
そこにプラスして自分達のオリジナリティも出さなくてはならない。
さらに難易度を上げている原因は、ダンダダンという原作がそもそもジャンルとしてニッチだということだ。原作のオカルト・ホラーに対する描写は、他の作品と比べても圧倒的に濃く取り上げ方も斬新で、それ故に人気が出ている。
ここまで読んでいただいた段階でアニソンの主題歌を担当するというのは一種の諸刃の剣というのは理解してもらえただろう。それを踏まえて今回のオトノケがとてつもないクオリティなのだ。ここからは、オカルト・ホラーをこよなく愛し公開処刑と8マイルで育った私がこの楽曲について解説して
いこうと思う。少しでも両作品に対して興味を持ってもらえれば幸いだ。
・オトノケというタイトル
まずはこのタイトルを見てピンと来た人はどれぐらいいるだろうか。これだけで何か分かった人は、相当なスレ民である。シンプルに物の怪(モノノケ)ともかかっているが、やはりヤマノケに掛かっていると考えるのが自然だろう。このヤマノケ、洒落怖という2chのホラーや怪談を語るスレッドで人気だった妖怪の名前なのだ。ヤマノケの話とは、要約するとこんな話だ。
娘とドライブに出た親。娘を怖がらせるため、どんどん山奥に入っていったが車が故障してしまい車中泊する羽目になってしまった。すると周りから変な音が聞こえ始め眠っていたはずの娘が突然目を覚まし、はいれたはいれたはいれたとつぶやきはじめたのである。慌てて親は娘をお寺に連れて行った。
おわかりいただけただろうか?
サビのパート、ハイレタハイレタハイレタとはヤマノケの事なのだ。
・他の妖たち
当然ながら、出てくる妖怪はこれだけではない。
『貞ちゃん伽耶ちゃんわんさか』
ホラー映画好きなら反応してしまう二人の名前、そう日本のホラーアイコンだった貞子と呪怨にでてくる伽耶子だ。
『四尺四寸四分様が』
これもスレッドに出てくる八尺様という妖怪からとってきている。さらにこのサイズはR指定の身長とほぼ同じ。
『デコとボコがうまく噛み合ったら』
同じくスレッドに出てくる有名話、コトリバコから来ているであろうと推測できる。
・他のジャンプ作品へのリスペクト
オトノケの凄い所はこれだけではない、二番に入ると明らかに他のジャンプ作品へのリスペクトが顔を出してくる。
鬼とチャンバラ、chainsaw massacre、渡る大海原、祓いたいのならば末代までと続く。
おわかりいただけただろうか?
鬼滅の刃、チェーンソーマン、ワンピース、呪術廻戦。もう一種のホラーである。
・ダンダダン(Dan Da Daan)のリズムと韻
ここからはラップの曲としての凄さを説明したい。
ラッパーは韻を踏むというのはある程度知識としてあると思う。言葉の母音と母音を重ねる事で、相手に歌詞を浸透させる。ラップに限らず色んな広告のキャッチコピーなんかもよく使う手法だ。
例えば『セブン、イレブン、いい気分』などが分かりやすいだろう。このフレーズだけでも十分な宣伝効果になり相手の記憶に残る。いわゆるパンチラインと言われるものだ。
冒頭のダンダダン(Dan Da Daan)という、リズムと歌詞でまず聞く人間にこの曲のリズムを覚えさせる。
そこから束になっても構わん(ka ma waan)、止まらん(to ma raan )、wonderland(wan da laan)と続く。
このリズムと母音について注目してもらうとこの曲の恐ろしさが理解できる。
さらに、私程度のにわかラップ好き人間でもこのリズム帯には聞き覚えがある。そうEMINEMのGODZILLAだ。
おわかりいただけただろうか?
原作者が特撮大好きな所からも引っ張っているのである。
こーゆーことかよ・・・・シャマラン(シックスセンスの監督)・・・
・まとめ
まだまだ私が気づいていないパートのすばらしさがまだあるとは思うが、この曲の浸透率は上がってもらえただろう。そもそもR指定自身も言っているが自分達の曲が聞く人間に少しでも『浸透』してほしいという熱量がこの曲には感じられる。そう一種の呪いと似ている部分もある。ラップとは韻を踏むだけという軽いものではない事がこの曲を聴いてもらえばわかるだろう。
これをきっかけに色んなラッパー達の努力の結晶が見えてもらえば幸いである。
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