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天地神名(Unique ancient Japanese Gods) 甲斐湖ノ白姫 制作雑記

こんにちは!はじめましての方ははじめまして。カワバタロウです。

(結構長いのでお時間がかかると思います。(4000文字くらい)もし読んでいただけたらうれしいです。)

天地神名シリーズ4番目の創作神様は
蚕神さまを描きました!!

名前の「甲斐湖」は、かいのみずうみ、つまり「かいこ」、
お蚕様のことで、
古代にあったとされる
甲斐の湖に土着したという設定になります。

お蚕様はオシラサマ、「お白様」として
白色を基調としてちょっと儚く描かせていただきました。

詳しいデザインについてのお話はまた後程しようとおもうのですが、
まず最初に私がお蚕様を描こうと思ったきっかけを
思い出せるうちにnoteに書き残しておこうと思います!

<創作のきっかけ>


山梨県、
富士五湖の一つに数えられる西湖。

クニマスが泳ぐ、透き通った水をたたえた湖を抜けて
少し北西に進むと、
「西湖いやしの里根場」という
茅葺屋根の美しい集落があります。

2021年夏ごろ撮影

その集落は、すでに武田氏の頃からあったとされていて
独自の文化を形成されたと言われていましたが、
ほんの数十年前に、大雨等による災害で
集落のほとんどが消滅してしまいました……。

2006年には、失われた当時の風景が再生されるまでになり、
今はとても静かで穏やかな空気が流れていて心癒される
美しい観光地域になっています。

里では様々な体験ができるようで、
特産品や、加工品、ギャラリーなどのお店が立ち並んでいて、
その一つにシルクを取り扱うお店があります。

<シルクとおじいさんの話>


当時私は、特に下調べもせず、
「あ、ここなんかいい感じ、行ってみたいかも」
程度の軽い感じでふらっと、立ち寄っただけだったのですが、

シルクのお店に入って、綺麗に並べられた絹製品を見ていた時、
レジの奥に座っていたおじいさんが
私に話しかけてきてくださって
蚕糸業(さんしぎょう)や絹業についてのお話を
色々と聞かせてくれました。

ここは昔から養蚕が盛んに行われてきた地域だったらしく

「国内の蚕糸業は年々衰退していて、とても厳しい状況だ」

「国の補助があっても厳しい」

「最近の子供は虫が苦手な子が増えて、蚕を見ただけで気味悪がってしまう」

「虫を触れない子も増えてきている」

「群馬や茨城などで、蚕糸業を盛り上げるため、取り組みが多く行われている」
(富岡製糸場や農研機構だったかと思います、うろ覚えですみません…)

「蚕に興味を持った子がいれば、小さいうちにトップレベルの研究者の話や考え方に触れた方がいい」

など、他にも、

学校の授業などで子供が小さいころから、そういった環境を体験できる機会を作った方がいい

などと、他にも色々熱心に話をしてくださいました。
(おじいさんが話されていたことを覚えてるだけ箇条書きにしましたがもろもろ記憶違いがあったらすみません)

私はその話を聞いて、少しだけ蚕に興味を持つようになり、
蚕繭や、お店で販売されているシルクのスカーフを購入しました。

パステルカラーで染色してあってめちゃくちゃかわいいです。
(お値段もとってもリーズナブル!)

おじいさんの話を聞いて何か少しでも力になれないかな、
真剣に熱く語ってくださったそういう思いに触発されたのかもしれません。

そして引き続き、いやしの里根場をあちこち歩き回りました。

来た道を戻ったりして、まだ見て回っていない家々をずんずん探索していると、
里の奥にある、一軒の家が目に入り、
気になって中に入ってみることにしました。

するとそこには、たくさんの絵が飾られていて、
見た途端
どこかとても、懐かしい感覚を覚えました。

どこかで見たことがある絵…
しばらく見まわしていると、それが何の絵なのか、
私はようやく気付くことができました。

「まんが日本昔ばなし」


おそらく日本中の多くの人が知っているであろう名作アニメ。

そこは、かつて日本昔ばなしのアニメ制作に長年携わられていた
前田康成 さん の工房兼原画展示場でした。

前田さんは虫プロで手塚治虫先生のお仕事などに関わっておられたそうで、
今は齢70にしてなお、精力的に自主制作活動をされているという、
クリエイターとして尊敬できる、とても凄いお方だと思いました。

しかもその工房では実際に前田さんご本人がすぐそばの工房で、
めっちゃ絵をガシガシ描いておられる…!!かっこいい!!!

思いがけない巡り合わせに私は、
テンションが上がってしまい、
すぐさま、前田さんが執筆された絵本を手に取り
購入していました。

タイトルは「母」

買わせていただいた絵本


サインまでいただき、とてもうれしかったです。

前田康成さんのサイン

色々とお聞ききしたいことがたくさんあったのですが、
ご本人を前に緊張しすぎてコミュ障を存分に発揮して結局何も聞くことができませんでした。

そして、購入した絵本を帰ってからしっかり読んでみると
とてもほっこりする内容で、
あの頃見た「まんが日本むかし話」がそこにはありました。

そして、なんと
この漫画にも蚕の描写が…!

かいこ~シルク~かいこ~~~…

その日は蚕についての情報や
思いがけない巡り合わせが重なりすぎて、
気づいたら私も

「蚕ちゃんを描いて何かできたらな~」

という気持ちになっていました。

<甲斐の湖>


創作にあたる際、どこから手を付ければいいのか、
まず私はざっくりと、
神様のお名前について考えることにしました。

蚕様の神名を考える足掛かりとして、何か良い材料はないものかと
色々と調べていたところ、その昔、甲斐の国(山梨県)には、
湖があったとされる伝説があって、

甲斐の湖=甲斐湖、
「かいこ」「蚕」の読みが奇跡的に合致して、
「これしかねえ!」と即断しました。

むしろ奇跡ではなく、甲斐と蚕の読み方に何か必然的なつながりでも
あるのだろうか…
などと妄想を捗らせながらデザインを煮詰めていきました。

そして古代、
甲斐の湖水を抜き、甲斐の国を開かれた方々に連なる御方として、
藤巻姫という姫神様がいらっしゃったようで。

諸説ありますが、
甲斐に養蚕を伝えた方ともされているそうです。
(養蚕のルーツは様々な説があるそうです)

蚕神様のデザインは藤巻姫の「藤」のイメージを取り入れています。
藤の花ことばは、「決して離れない」、「忠実な」という意味もあり、
蚕の性質と合っているとも思いました。

山梨県の佐久神社にも足を運びました。(下向山町)


甲斐の国造りに関係している神社だと知り、
その場所の雰囲気を実際に感じてみたかったのです。

2021年11月頃撮影

神社には由来を記した看板があり、確かにそこには
「甲斐の中央部は一面の湖で」という記述がありました。
もちろんテンションばくあげです。

佐久神社の木々の間から漏れ見える景色が
かつては湖だったかもしれないと想像すると、
とても感慨深いものがありました。

湖を見ているような気がしたので思わず撮影


<デザインについて>


白姫の長い髪は生糸を表現しています。

そして白姫さまの膝の上に座っているのはネコ!
Catです!

イラストのネコ、めちゃくちゃ怒ってます。

アゴがうめぼしになるくらい
めちゃくちゃ威嚇してます。

全方位警戒です。

「猫は蚕を守るボディーガード」

蚕の天敵は主にネズミだったそうで、
ネズミから蚕を守るために、
猫を飼っていた方が多かったそうです。

そして養蚕農家さん達に重宝されたお猫さんは、
地域によっては神格化されていることもあるとか。

猫神様…描きたいですね。

<蚕と現在の養蚕についてまとめ>


蚕は桑の葉の上に置いてあげなければ
自分で餌を取りに行くこともできないほど弱々しい生き物ですが、

そんな儚い存在であっても、
古くは日本書紀や古事記より以前の
神代から現代にいたるまで、

数千年もの間、人々と密接に過ごしてきた歴史があり、

そうした長い積み重ねの上、こんな丁重にお世話をしないと生きていけない生物であっても
今の世にこうして生き残っているのは、

ひとえに

蚕糸業を守ろうとする、多くの方たちの思いや、
尽力されてきた結果であることは
言うに及ばずですが、

他にも何か、上手い表現方法がみつからないのですが神秘的な、
神性のようなものを感じずにはいられませんでした。

古くは糸や、衣服であったり、税に用いられたり、
外貨を稼ぐ一大産業であったり、

現代においては、医薬品や、化粧品など、
時代の移り変わりによって蚕と人との関わり方も、
変化し続けています。

でもそんな連綿とした日本独自の文化の一端を担ってきた蚕が、
とりわけ国内での養蚕業は
高齢化や後継者不足のため、養蚕農家数は
年を重ねるごとにどんどん減ってきているようです。

平成22年度と令和2年度を比べると、
およそ三分の一以下になっているとのことでした。

「私は日本の養蚕業を守るために立ち上がった!」

こんなヒーローみたいなセリフぜひ一度は言ってみたいですが、
残念ながら私にはそんな高尚な動機は持ち合わせてません。

だって私は絵を描くことしか、できないからです。

あとは、少ない持ち合わせで
絹製品を買って応援することぐらいでしょうか。

だから私は自分にできることで発信しようと思いました。

自分が心を動かされたことがらを絵にして、それを見てくれた人たちが
なんでも構わないので何かを感じ取ってくれて、

例えば気になって何かを調べるきっかけになったり、
前向きな何かをする一助になってくれたりするのであれば、
絵描き冥利につきます。

私のようないち無名イラストレーターが何を描いたところで、
何も影響を与えることはなく、
ただ、データの海に埋没するだけの
結果になることは目に見えているのですが、

それでも私は描きたいと思ったことを描いて、発信しました。
自己満足でしょうが、
それだけでも私は案外幸せです。

そして、それに呼応してくれる方がいらしたら、
なおのことうれしいのです。

素人の付焼刃的な知識なので、もしかしたら
どこかで勘違いや、
間違っているところがありましたらすみません。

ここまで、このような散らかった長文を読んでくださって
ありがとうございました。

最後に、甲斐湖ノ白姫と一緒に、
実物の蚕蛾ちゃんの映像も見て、
そのかわいさに気づいて、癒されてくれたらうれしいです。

ほんとにすごく可愛いので。

では!



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