司法試験で求められる思考について

第1  はじめに

お久しぶりです。
今回は、弁護士が事案を検討する際に、どのような頭の使い方をしているかを紹介しようと思います。これは、司法試験で求められる思考にも繋がっていると思われますので、司法試験の勉強の参考にしてみてください。

第2  結論

結論として、①事案に適用すべき法的な枠組みを検討した上で、その枠組みの中で、②個別的な事情を考慮し、対立利益を調整することになります。

第3  各論

例えば、建物の賃貸借で、賃借人が3ヶ月賃料を支払わず、現在、賃貸物件から出ていったという事案を想定してみましょう。

①法的な枠組みを検討する


まずは事案に適用する法律や判例を検討します。

通常、賃貸人は、賃貸借契約を解除した上で、新しい賃借人に建物を貸したいと思うでしょうから、債務不履行に基づく解除(民法541条、542条1項)を考えていくことになります。

ここで、債務不履行に基づく解除の要件は、a債務不履行、b催告、c催告後相当期間の経過、d解除の意思表示になります(民法541条)。

そして、賃貸借契約のような継続的契約においては、当事者間の信頼関係が特に重視されるため、e当事者間の信頼関係が破壊されている必要があります(判例法理)。

②個別的な事情を考慮し、対立利益を調整する

①で今回問題となる法律や判例をピックアップすることができたので、次は、そこに事案を当てはめていくことになります。
ここでは、誰と誰の利益が対立していて、どちらの利益を重視すべきか意識することが大切です。

本件では、賃貸人と賃借人の利益が対立しています。

まず、賃貸人は、賃料の支払を受けていないという不利益を被ってます。この不利益をこれ以上大きくしないために賃貸借契約を解除するわけです。

他方で、賃貸借契約を解除すると、賃借人は建物を利用することができなくなるという不利益を被ります。しかし、本件では、賃借人はすでに建物からいなくなっているため、解除によって賃借人が建物を利用できなくなるわけではありません。

このような状況下では、賃借人の利益よりも賃貸人の利益を重視すべきと考えるのが妥当ではないでしょうか。

以上のような利害関係を念頭に置きながら、上記①の法的枠組みに事案を当てはめていくわけです。

本件では、3ヶ月の賃料不払いが続いており、しかも、賃借人が住んでいないのですから、債務不履行があり、かつ、賃貸人・賃借人間の信頼関係は破壊されたといえそうです。そのため、他の要件を満たす限り、解除が認められるでしょう。

第4  終わりに

このように、司法試験では、①事案に対し、適切な法的枠組みを適用し、②利害調整を念頭に置いて、結論を導き出すことが要求されていると考えられます。

あくまで令和3年頃の司法試験についてですが、適切な法的枠組みを適用できるようになれば予備試験合格レベルで、利害調整を念頭に置いて結論を導き出せるようになれば司法試験合格レベルという感覚でした。

是非、受験勉強の参考にしてみてください。

それでは!

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