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京葉線快速縮小問題を考える㉓「京葉線ダイヤ改正の影響等に関するアンケート」速報版をざっと見する

「京葉線ダイヤ改正の影響等に関するアンケート」の公表

千葉市をはじめとする沿線自治体が実施していた「京葉線ダイヤ改正の影響等に関するアンケート」速報版が公表された。

参考までに同市記者発表資料から速報版と市長コメントのpdfリンクも掲載しておく。

・速報版https://www.city.chiba.jp/sogoseisaku/shichokoshitsu/hisho/hodo/documents/240522-1-1.pdf

・市長コメント
https://www.city.chiba.jp/sogoseisaku/shichokoshitsu/hisho/hodo/documents/240522-1-3.pdf

少なくとも都市圏でこうしたアンケートが公的団体により実施されるのはあまり記憶になく、沿線民かつ趣味人の読み物として興味深いものがあった。このアンケートを持ってダイヤ改正の結果が左右されるとは思わないが、「速報版」及び市長コメントで気になった点をピックアップしてみたい。

「市長コメント」をざっと見する

このアンケートでは、千葉市や内房・外房地域を中心に、千葉市以西の方にも回答いただいており、ご協力いただいた方々には御礼を申し上げます

「市長コメント」より

このアンケートの実施にあたり、千葉市以西の利用者意見は反映されない等の批判も多くあり、実施側としても千葉市及び(旧)通勤快速運行エリアの内房・外房地域からの回答を想定していたところ、各停化で恩恵を受けたであろう千葉市以西からも回答があった点を滲ませるコメントとなっている。

ダイヤ改正による影響に対して、乗車時間の増大を上げる声が最も多かったほか、ダイヤ改正後の望ましい変化では「通勤・退勤時間帯の快速の増便」を求める声が最も多くあがるなど、これまで本市がJR東日本へ要望してきたことが利用者の求めている内容であったと分かる結果になっていると考えております。

「市長コメント」より

前段は「速報版」で確認するとして、後段は沿線自治体としての千葉市の要望と利用者が求める内容が一致していたことの確認、言わば沿線自治体としてエビデンスを得ることができたとの見解になる。

SNSなどでは全駅全利用者へのアンケートすべきとの極端な意見や偏った結果になるとの意見も散見されたが、沿線自治体の立場からすればダイヤ改正で被害を受けた利用者の声や、運行主体でしか把握が難しい利用実態の傾向を可視化出来れば十分であり、地元研究機関との協働により回答期日から半月程度での速報版公表を行ったスピード感は評価に値するものと理解している。

「速報版」をざっと見する

速報版とはいえボリュームはあり、特に気になった点を記載する。アンケートの定量的集計のほか、利用者コメント等定性的なデータもあるが後者はSNSと大差ないユーザ意見のため割愛する。

最寄り駅

「速報版」より

実際の利用者数ではなく、あくまで回答者の属性であることに留意が必要だが、言い替えればアンケートに回答ほど関心が高い層(の利用者がいる駅)となる。
1位の蘇我や2位の海浜幕張は利用者数や受ける影響から理解しやすいが、3位が外房線鎌取である点は注目に値する。また、4位稲毛海岸、5位検見川浜と続いており、快速停車駅利用者の回答が多い点が見て取れる。千葉市外では、6位の五井(市原市)、9位の新浦安(浦安市)が入っており、五井は鎌取と同傾向、新浦安は利用絶対数の多さが伺える。

通勤・通学先(都県別)

東京都が74.5%、千葉県が22.9%となっている。千葉市は県庁所在地であり東京へのベッドタウンのイメージと異なり市内への通勤が多い点、沿線民としての感覚と蘇我駅の流動を見ていても把握できるが、上記の割合から受ける印象とは異なる。例えば鎌取・五井あたりから千葉市中央区に勤務するのであれば京葉線を利用しない可能性はあり、「京葉線アンケート」に回答しない層なのかもしれない。

通勤・通学先(東京都)

おそらく東京・八丁堀駅利用であろう千代田区・中央区と、新木場で乗り換え有楽町線、りんかい線利用であろう港区、江東区で大半を占める。京葉線東京駅の立地の悪さもあり、それ以外は大きく数値が下がるのは特徴的なところ。

なお、これが武蔵野線(西船橋方面)から同様のアンケートを行うとすると、京葉線でないと到達が難しい港区・江東区(有楽町線・りんかい線沿線)の割合が大きく上がると推察する。

通勤・通学先(千葉県)

県内通勤通学先は1位の千葉市美浜区への通勤・通学が際立って高く、幕張新都心の存在感の大きさを伺わせる。市町村別にみると、千葉市以西からの比率が高い点も興味深い。

2位が浦安市とは意外な印象で、浦安市の産業集積を再認識した。3位の千葉市中央区への通勤・通学利用については、絶対数としては多いはずだが京葉線を介しては少ないものと考えられる。一方で千葉市以西からの比率は16.1%とやや高く千葉市以西の京葉線沿線からのラッシュ逆方向の利用を伺わせる。

ダイヤ改正後の「快速」の利用状況変化

この項目の質問意図が良く分からないが、最も多い「使っていた→使わなくなった」は主に通勤・通学利用と推察でき、「使っていた→使っている」は快速が残存する朝6時台か日中の利用者とわかる。「使っていない→使うようになった」は僅少とはいえ理解が難しいところで、回答者自身の環境の変化か愉快犯の可能性もある。

ダイヤ改正による実施・検討内容

ここでは市町村別の記載が興味深いので属性別に見ていく。

「京葉線の利用停止(別路線変更)」は千葉市内で23.7%、内房・外房で36%にも及ぶ。想像しやすいのは蘇我以南(蘇我・鎌取・五井)の利用者が京葉線通勤快速から総武線快速に切り替えた等であろうか。

「京葉線沿線以外の転居」は全体で9.8%と、センセーショナルに取り上げられたところだが、千葉市内に限ると12.8%にも及ぶ。愉快犯も居そうだが、さすがに看過できない数値ではないだろうか。素朴な疑問として、一定のコストがかかる「転居」が容易に出来るとはどのような環境なのか、不思議に感じるところではある。

「通勤手段の鉄道以外への変更」も内房・外房では10.7%と高く、地域柄から推測すると自家用車への移行、内房エリアだとアクアラインバス利用も考えられる。

ダイヤ改正前後の通勤時間の変化

まず気になるのは全ての項目で所要時間が増えており、「千葉市以西」でも通勤時間が伸びている点。各停利用のみならば増減はない(快速待避がなくなり時短すらあり得る)ところだが、新浦安あたりから海浜幕張への通勤利用者が快速廃止により各駅停車利用となった影響が考えられ、幕張新都心への速達性確保が求められるエビデンスの一つとなろう。

内房・外房の所要時間20分増は衝撃的な値で、通勤快速の各停化に伴う所要増すら上回っている。乗り換えを含む接続を加味した増と思われるが、片道で20分、往復ならば40分増の影響は大きく、子育て世代の筆者からすると生活が成り立たないとする指摘も理解できる。

千葉市6区の所要増は両者の中間であるが、同じ「千葉市6区」でも利用駅の差異(例えば蘇我と稲毛海岸)がありそうで、詳細分析が待たれるところ。

改正後のダイヤに対する望ましい変化

これも属性別(市町村別)にみてみたい。

まず目を引くのが「通勤・退勤時間帯の快速の増便」で、千葉市6区で78.9%、内房・外房で74.8%、影響が小さそうな千葉市以西でさえ52.7%と過半数に及ぶ。

一方、「通勤快速の復活」は大きく見解が分かれ、内房・外房が77.3%と快速増便を超えるのに対し、千葉市内では51.5%(おそらく蘇我駅とそれ以外で傾向が異なる)、千葉市以西では25.7%になる。メディアでは通勤快速廃止がセンセーショナルに取り上げられているが、実際には同時廃止された快速(京葉快速)の影響が大きく、内房・外房線を含む沿線全線に渡って復元が求められていることが読み取れる。

「新たな快速等の運行」は3割程度あるが、停車駅が示されていない以上は回答者にとって都合の良い停車駅が想定されており、集計結果としては参考値になろう。

また何故か「特急自由席の復活」なる項目もあるが、割合としては低く、確実な着席ニーズがあるか、そもそも回答先として考慮されていないかで、特急の全席指定化にお墨付きを与える結果と言えるかもしれない。

まとめ

筆者は京葉線沿線民かつ鉄ヲタであると公言しているが、その肌感覚が概ね一致している点がこのアンケートから再確認することができた。

先の一部報道では調整は大詰めを迎えており、通勤快速の復元は難航・快速復元の可能性は高いとされている。今回のアンケートにおいても、通勤快速は見解が割れるものの、快速(京葉快速)復元のニーズは極めて高い結果となっており、落としどころは見えつつある。

早朝2本の快速復元時の流れを踏まえると、JR側で一定の素案が出来た段階で自治体協議が行われると考えられ、JRプレスリリース前に快速復元ダイヤ素案の報道が先行するものと予想できる。続報を待ちたい。

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