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1987年東西ベルリン 4・終

 聖マリア教会(多分)とテレビ塔。

『共和国宮殿』と呼ばれる建物に映るベルリン大聖堂。

※この『宮殿』は現在とり壊されており、存在してないそうです。

 コーミッシェ・オーパーについている、『カフェ・エスプレッソ』という店に入る。

 コーヒーといっしょにケーキが食べたいね、ということでメニューを探し、
『さくらんぼ kirsch』という表記をKFがみつけてくれたので、よっしゃ、これや! とそのへんのところから二つ、注文する。
 そしたら、運ばれてきたのはなんとリキュールだった。
 しかも、リキュールグラスにそのまんま、ストレートのやつ。
 二人して大喜び(?)しながら、リキュール片手にコーヒーを飲む。
 甘くて、なかなかおいしい。それにあたたまるし、と二人で負け惜しみを言いながらチビチビやっていると、隣の席のおじさんが
「ヤーパンか?」
 と話し掛けてきた。で、色んな話をする。

 東ベルリンに1915年から住んでいる。
 東にはちょっと(かな)うんざりしている。週末には郊外に出かけるらしい。
 オペラはコーミッシェの方が好きで、ワーグナーとかの重いヤツはあまり好みではない。
 ベートーヴェン、シベリウス、ベルリオーズ、モーツァルト、バッハなどをよく聴く。
 孫がいるけど、別々に暮らしている。
(今気がついたけど、おじさんの名前を聞いてなかった!!)

 他にも教えてもらったのが
・東ではロシア語が必修授業である。
・近くにホテルが建設中だが、日本のカジマが作っているため、日本人が多く働いている。

(そう言えば、ヘルメットに「安藤」とか「辻」とかついた人を見かけた)
・次の日曜は世界婦人デーで、男性は女性に、花などをプレゼントするそうな。
 おじさんは、奥さんにワインを買ってあるんだって。

 今日は、奥さんが映画を観に行っていて、それを待ちながら時間をつぶしていたら、目の前で、コーヒー飲みながら酒をちびちびやっている東洋人がいたので、つい、不思議なこともあるものだ、と声をかけてしまったらしい。
 変わったこともしてみるもんだ。

 他のテーブルにいた、パンク風兄ちゃんがこちらのテーブルに来た。
 鼻に安全ピンがささっている。
 おじさんの通訳(?)によると、日本人とお友だちになりたがっている、というのか、結婚したがっているらしい。性急な話やね。
 本人は、しごくまじめの様子で、特に、ドイツ語が話せるKFに興味しんしんのようだった。
 しばらく話をしていってから、パンク兄ちゃんの連れが帰るというので後ろ髪ひかれまくりながら、店から出て行った。
 その連れは、ロングコートの下に、店のグラスを二つ、かくし持って(ちらりとこちらに見せていった。手品じゃないっつーに。) 悠々とその場を去っていった。

 カフェで結局、5マルク払う。ボーイさんが「えっとお釣りは……」と もたもたしてたのだが、どうせ他に買うものもなさそうだし、と
「釣りはいらねーよ!」と。
 うーん、いつか一度は言って見たかったセリフ!
 ボーイさんは、とたんにサービスが格段によくなった。

 なごり惜しくおじさんとお別れして、再び検問所へ。
 手前で、土産にトランプを買う。3.9マルク。この小店は宝くじも売っている。

 東から出る時の検問は、もっとあっさりしている。
 あっという間に、西側に帰還できた。
 外は小雪が舞っていたが、二人とも寒さも忘れ、すっかり興奮状態で帰っていく。

 Uバーンにて、Friedrichst.の駅で降りると、なんと軍服のハンサムボーイが立っていた。
 よく見ると、ここのUバーンも国境らしく、検問があった。

 スーパーにて、スパークリングワイン0.2l、リンゴジュース、
 ベリーたっぷりのクーヒェン、マカダミアナッツの載ったチョコクッキー、imbissにて、ゆでソーセージを買って、ホテルにて小宴会を催す。
 東で食べられなかったケーキの仇をようやく討つ。

(おしまい)

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