高田馬場本という男との関わりを詳らかに書く記事
高田馬場本容平
僕が大学時代に出会ったかけがえのない石川県民である。
彼との出会いは大学1回生。同じ外国語学部、同じ中国語専攻、同じAクラス。クラスメイトは22名、内男子8名、内「この勉強がしたくてこの学部に入ってきたんです」系男子2名、内1名がこの高田馬場本容平で、もう1名の鳥羽という男と常にコンビで1番前の長机に着席していた石川県民である。
初めの授業の時から異様に中国語の発音がよくて「なんじゃあいつどんだけ練習して来たんや、あるいは何者や」と思ったのをよく覚えている。未だにそれが練習の賜物なのか天才的センス由来なのか確認できていないが後者の可能性も存分にあり得ると思わせる、あらゆる意味で天才的センスを持つ石川県民である。
彼と懇意になるきっかけは2回生の夏、北京での1ヶ月間の語学研修に行った時だった。それまでは心の通ったコミュニケーションを取ったことがほぼなく、「あの林という体育会系アホ人種と自分は相容れない」と言った目で見られている気がするまでに高田馬場本側の心のシャッターが閉じていると感じていた。その日、北京オリンピックのメインスタジアムだった国家スタジアムに福本という大阪府民含む3人で出かけた。福本×高田馬場本、福本×僕、は当時の段階でそれぞれ2人きりで遊んだりすることがあるセットで、結果的に福本が僕らの間を取り持ってくれた形であった。高田馬場本が持つCanonの一眼レフカメラでふざけた写真を撮りまくるという形で我々の意気が投合した。
意気投合当日の写真
その日を境にまともにコミュニケーションを取るようになり、互いのツボが意外にも似ていたことや、互いの酒癖が似通っていたことで、一気に距離が近くなり、日本に帰って以降も、暇さえあれば千里中央の高田馬場本宅に原付を走らせ、2人で酒を飲みながらTSUTAYAで借りた古畑任三郎を嗜んだり、千中のダイエーで買った謎の魚介類を捌いてみたり、金本という京都府民と3人で、振り返り見るに耐えない超低クオリティの即興コントを撮ったり、空き時間の多くを共有した。
彼は3回生の折に北京へ10ヶ月ほど留学をし、帰国後は庄内という地に住んだ。
この庄内へも、兎角よく足を運んだ。すきあらば彼のいる街に行きたくなった。彼がいるという理由で街ごとその場所を好きになる。市町村長にしたい男No. 1の魔力を持つ男だった。
彼が真冬難波の夜の街で泥酔し、携帯や財布、コート、友人2名、などの持ち物を全て店に置いたままTシャツ一枚で店から走り飛び出した挙句、店に戻れなくなり、警察にも取り合ってもらえず、よりによって大阪では珍しく雪の降る未明に無一文で難波から庄内宅までの10㎞強の道のりを、凍え吐き散らかしながら猫背で歩き帰ったという話で、3時間笑いが止まらなかったこともあった。彼が生きていることに感謝した。
彼は、彼にしか生み出せない独特の間から繰り出す圧倒的なユーモアと、その穏やかな性格、落ち着いた声色、安定した歌唱力、知的好奇心の高さ、酒に酔った時の爆発力、etc.で人を惹きつける。勉強熱心な性質も相まって大学の先生にも好かれる。生粋の文学少年で、趣味は古書店巡り、家には千を優に超えるであろう文学作品が山積みになっており、今は知らぬが当時はヘヴィスモーカーで部屋は基本的にタバコのフレーヴァーに包まれており純朴な見た目とのギャップがまた良い、そんな男である。
彼は就職活動を経て志望していたマスコミ関係の職につき、初期配属は名古屋。僕も愛知の企業に就職したため、こりゃあラッキー、予定が合えば彼の住む久屋大通の社員寮に忍び込み、談笑の末、名古屋飯を散策した。これまたやはり久屋大通という街を僕は好きになった。
彼は同期入社の女性に一目惚れに近い形で恋をし、「たまらなく好き。本当にたまらん。」という思いを成就させ、出会いから約2年ほど経った秋口にその彼女との結婚を果たす。彼らの結婚式に参列させていただき、その余りの素敵さに感銘を受け、胸が熱くなった。
配属場所の違いによるしばしの別居婚生活を送った末、異動志望が叶い、自分の生まれた石川県の支社に夫婦揃って異動し、現在は同期夫婦で同じ金沢の支社で正真正銘の石川県民として働いているというこれまた素敵な現状の持ち主である。
本日用事で来阪し、彼のいた庄内の街を訪れ、彼のことを強烈に思い出した。コロナ禍も重なり、物理的に距離が遠のいたことで彼と会う頻度は少なくなったが、自分の人格形成にも少なからぬ影響を及ぼしたであろう彼との縁は今後も大切にしたい。薄めたくない。現時点の記憶を保存しよう。そんな思いでこの記事を書き始めたは良いが、特段起承転結もなくどのようにこの文章を閉じれば良いか分からないので、北京研修中に現地でのヘアカットに成功した時の彼の写真にてアディオスします。
FRONT
SIDE
UMATOBIDODAI
アディオス
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