第1話「ひみつの部屋」
このお家にはひみつの部屋がある。
玄関からながーい廊下を歩いて角を2回右に曲がった一番奥。
そこにはいつも扉がしまっている部屋があった。
桂ママは言う。
「この部屋はモノがたーくさんあって危ないから入っちゃダメだよ」
ひみつの部屋にはいれるのは桂ママとばーちゃんだけ。
桂ママは一日に何回もそこをはいっては出てきて、そのたびに手に何かを持っている。
とっても楽しそうな桂ママ。
きっとあの部屋にはすごく面白いものがあるに違いない。
はいってみたい。すごくはいってみたい。
ある日ついにチャンスがやってきた。
桂ママが「フンフーン♡」と歌いながらまたひみつの部屋にはいっていった。
いつもガチャンと閉められちゃう扉だけど、今日はガチャンて音がしなかった。
·······ちょっとスキマがある!
ドキドキしてたらシャーッと音がしてチョロがやってきた。
ぼくはチョロの顔をみた。
目がドキドキしてるのがわかった。気持ちは同じだ。
このチャンスを逃すわけにはいかない。
力のあるぼくがまず扉に体当たり!
ギィ〜と音がして扉のスキマがちょっと広がったところに、切り込み隊長のチョロが体を押し込める。
ぐぐぐ〜!
ぼくはチョロのぷよぷよのおしりを押しこんだ。
ぐぐぐぐぐぐ〜!!
ギィィ〜!!!
扉が大きくうごいた!
やった!開いたぞ!!!!
ワァーーーッと大ハシャギでひみつの部屋のなかへ飛び込むぼくら。
なかにいた桂ママはぼくらに気づいて「しまった!」という顔をした。
ぼくとチョロは二手に分かれてひみつの部屋の奥へ!
見たこともないモノが部屋中にたくさん山積みで置かれている。まるで迷宮のダンジョンみたいだ。
ぼくらはドキドキしながら前足を必死に動かして奥へ奥へすすむ。
「こら〜!だめでしょ!」
桂ママの魔の手が伸びてくる。
「ぷみゃあぁぁぁぁぁッ」
チョロが捕まった。
必死に前足を振り回したチョロが部屋の外へ連行されていく。あわれチョロ。
しかし桂ママはすぐ戻ってきて次はぼくを捕まえようと手を出してきた。
近くの箱に必死に掴まるぼく。
ぼくは力が強いんだ。
「さんちゃーん、離しなさい」
ぼくの体を捕まえて持ち上げようとする桂ママ。
ぼくはギュッと前足に力をいれた。
絶対箱を離すもんか!!と思ったのに
「どっせーーい!」
ああーーーーっ!
桂ママの力にはかなわずぼくは持ち上げられてしまった。
そのまま部屋のそとへ出されちゃったぼくとチョロはしょんぼりして廊下に座り込んだ。
「モノがたくさんあって危ないからここは入っちゃだめなの。わかった?」
聞き飽きたセリフにチョロが「ブルルルルッ」と不満そうに鳴いた。
ぼくはしょんぼりしたまま。
そこに通りかかったばーちゃんが鋭い目つきで桂ママに言ってきた。
「危ないと思うならもっとちゃんと文具を片付けたらどうやねん。上にドンドン積み重ねよって!すっかり物置部屋やんか」
「はーーーん!聞こえまてーーーん」
今回は失敗したけど、ぼくはあきらめニャい。
いつかきっとこの部屋のひみつをあばいてやるんだ。
《おわり》
いただきましたサポートは保護猫ちゃんの支援に全額寄付させていただきます。幸せになる命が少しでも増えますように。