オカンの戦い
今のところウチではサンチョロの圧迫排尿ができるのは私だけだ。
だから腕が痛かろうと、熱が出て寝こもうと、仕事が〆切だろうと、なんだろうと絶対絞る。
今までは自分の健康管理を適当にしてきたが、サンチョロのためにこれからはしっかりしなくてはならない。
ただ、もし不慮の事故にあって腕を折ったら?
気候や交通機関のアクシデントで自宅に帰れなくなったら?
不安は尽きない。
私ひとりですべてを回避することは無理だ。
そんな不安を分かってくれたのか、私の右手の痛みを可哀想に思ったのか、ずっと圧迫排尿を怖がっていたオカンが最近、圧迫排尿の練習をすすんでやってくれるようになった。
圧迫排尿は、はじめはとても怖い。
内蔵を絞るなんて、想像すれば誰でも怖いだろう。
「潰してしまうのでは」と不安になる。
オカンは今、その気持ちと戦いながら練習をしてくれている。
手術したヒザはまだ完全ではないし、手の指はヘバーデンで曲がってて力があまり入らない。
でも頑張る、とこの数日、毎日練習してくれてる。
「三太は重いからまずチョロから」とチョロを抱きかかえ一生懸命おなかをまさぐり膀胱を探す。
分からない。分からない。
「これかな?」と思って必死に押してみるがオシッコは出ない。
極度の緊張と、普段とらない前傾姿勢、膀胱を探そうと腕に変に力が入って吊りそうになったり····3分もやってるとオカンはヘトヘトになる。
「ダメや····ごめん······」
私が引き継いでチョロのオシッコを出すと、それを見てオカンは落ち込む。
物凄くしょんぼりする。
私はそんなオカンの気持ちがよく分かる。
私も、圧迫排尿を習い始めた時は同じ気持ちだったから。
絞るどころか、膀胱すら見つけらず。
オシッコ全然出せなくて情けない。
自分にはできないのかも。
自分はダメなやつだ。
飼い猫への責任感から、そう思ってしまう。
結構落ち込むのだ。
だけど、これは圧迫排尿をする人は必ず通る道なのだ。
みんな、最初はできなくて落ち込む。
でも考えようによっては、誰もが必ず通る道だと思えば自分はちゃんと進んでいるということにならないか。
できなくて落ち込んで、そしてそこから、みんなできるようになっていった。
先人たちの行った道を自分は辿り歩き始めたのだ。
信じて進めば、きっと同じゴールにたどり着けるはず。
信じて諦めないことが何よりも大事じゃないだろうか。
圧迫排尿に必要なのは技術や才能じゃない。
前向きな気持ちと愛情が大事だと、この9ヶ月圧迫排尿をしてきた私は思う。
がんばれ、オカン。
きっと出来るようになるから。
だってオカンはサンチョロをとても大事に愛おしんでくれてるもの。
できないはずがないよ。
今回はここまで。ではまた。
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