死を感じながら童貞を捨てた時のお話
あれは忘れもしない2017年の4月か5月か6月、当時童貞だった俺は、某サイトで毎日乳をまさぐる赤子のように出会いを探していた。当時俺は高校3年生。周りが着々と卒業を果たしていく中、取り残される不安に苛まれていた。1年の頃に俺は中3で童貞を捨てたという嘘を吹聴してしまったこともあり、罪悪感もあったのだろう。
ある日、40代の女性から、童貞を貰ってもいいという旨のメッセージがあった。もちろん犯罪だが、凶悪犯以外は何年かで時効が成立するという話を亡くなる間際の曽祖父がしていたので、おそらくもう問題ないはずだ。そのメッセージが来たとき、心踊るとはこの事だと言わんばかりに胸が高鳴った。召集令が届いた兵士のような武者震いと、合格通知を貰ったときのような多好感。その半年後、第一志望の大学には落ちるのだが。
待ち合わせ場所は大阪、梅田駅から徒歩15分ほどの住宅街に近いホテルだった。住宅地に近いという事もあり、色々な人が日々の生活を営んでいるくらしのすぐ側で、高校生が年上のおばs、お姉さんと情事に至る。住宅地の側という環境は、イリーガルな淫行をより際立たせるエッセンスとなった。なんだこの表現キショ。
さあ、ついにXデーは明日。何の服を来ていこうか、ホテルの料金システムの復習をしようかとせわしなく待ち焦がれていたところ、テレビから一報が。「明日、北朝鮮がミサイルを打つかもしれません。」その時点では、物騒な世の中だと少し世を憂う気持ちを抱いただけだった。
明日の卒業で頭がいっぱいだったが、一応ミサイルの事も気になる。Twitterで情報収集をしてみるかと検索にかけてみると、衝撃のツイートが。「ミサイルは大阪に落ちるらしい」「梅田が最有力」頭と股間から血の気が引いた。確認してはいないが、そのときの俺のチ◯コは青いライトセーバーくらい真っ青だったと思う。確認してはいないが。
どうやら、東京に落とすと首都機能及び国家中枢機能が停止してしまう為、アメリカなどの報復や国際的な立場を考えて、東京には落とせない。京都には原爆投下と同じ理由、世界的にも歴史的価値のある建造物が多いので、これまた国際的な批判が大きすぎるためNG。となると、人口の多い大阪、梅田が最有力候補というわけである。
今考えれば何の根拠もない邪推に過ぎないのだが、当時高校生だったということもあり、まんまと信じてしまった。当日、玄関の前で思い悩む。少しドアノブを捻れば開くドア。毎日開けているドアが重い。手首にぶら下がる性欲と生存の葛藤が重すぎて、ドアを開けられない。しかしそこの君、10代の性欲をなめてもらったら困る。葛藤を振り切って俺は梅田に向かった。
梅田駅から階段をのぼってホームから出た途端。衝撃の光景を目にする。「ミサイルが、落ちてきてる………………」いや、飛行機雲だ。ガチびびった。この時のビビり具合だけはめちゃめちゃ鮮明に覚えている。そこからホテルに着くまで、少し大きい音がする度に寿命をすりおろしながら歩いた。軽自動車の癖にバカみたいな騒音で走る車の排気音。自動ドアが開く度に騒音が溢れでるパチ屋の入り口。難所をいくつかくぐり抜けてホテルについたとき、俺は少し大人になっていた。これから、もっと大人になるのだ。
ホテルに着き、相手が来るまでの間、空を見上げた。めっちゃ青い空。村上春樹とかなら、なんかもう凄い表現でそれはオシャンに青空を形容するのだろうが、俺にはめっちゃ青い空という感想が限界だ。悲しい。数分後、名前を呼ばれて振り返った。40代だが、見ようによっては20代後半、いやそれは無理がある、30代前半と言われても違和感がない。小綺麗なタイトスカートに派手なメイク。年上ギャル好きの俺にドストライクだ。この手の話では写真と別人が来るというのが定石のストーリーだが、見事に写真以上の美女が来た。ホテルに入り、先払いでお金を払ってシャワーから出るまでの記憶は全くない。
お互いシャワーを浴び終わると、お姉さんがベッドにうつ伏せになるよう指示してきた。降伏する捕虜のようにうつ伏せになると、お姉さんが背中をハチャメチャに舐めてきた。背中にハチミツとか塗ったっけな俺。そして、舐められながら思った。いやエロすぎですやん。大人って毎晩こんなことしてますのん。これが大人の世界ですのん。無論、その後現在に至るまでそこそこの数経験を積んだが、背中を舐められたことなどこの一度キリだった。
背中を舐められ終わった後、信じられないくらい興奮していた。人間は生命の危機に晒されると子孫を残そうという本能で性欲が強くなると聞いたことがあるが、ミサイルで死ぬかもしれないという恐怖の中、まさに俺はその状態になっていた。スポーツでいうところのゾーンとはこんな感じなのかもしれない。そこから、俺たちの熱い時間が始まった!次号にご期待!といかず、挿れてから30秒(見栄を張らずに言ったら15秒)ほどで儚く卒業式は幕を閉じた。ホテルから出た後、ミサイルとか争いとか暴力とか、どうでもよくなっていた。人類で同時にセックスすれば、戦争はなくなるに違いない。「またね」と、またなんて無い事がわかりきっている挨拶を交わし、家路についた。またなんてなかった。こうして、俺の股間のミサイルの初弾道飛行は60点くらいの出来で飛行を成功させた。
皆さんは、好きな人と初めてを経験してね。マジで。
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