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カトー少年#3

自分の人生の出来事を思い出して再現した完全ノンフィクションストーリーとそれに対して“もしもこうだったら・・もしもこうしてたら・・こうなってただろうな” の完全妄想フィクションストーリー

今日は小学校3年生の時の出来事です。






《完全ノンフィクションストーリー》

【赤と黒】

「嫌だ!!赤は嫌だ!!」

そこには泣きながらだだをこねるカトー少年がいた

「何色でもいいでしょ!!」

「嫌だ!!」

小学校3年生のカトー少年は剣道を習い始めることになった

母からのススメで始めることになったのだが、初めての習い事に少し不安を抱いていた
母も学生時代剣道をやっており、二段を持っている
精神力、忍耐力などが鍛えられ、礼儀作法などの勉強にもなる事を母は知っていた

だが、剣道という武道の厳しさをカトー少年はまだ知らない

この先の自分が、勧めてくれた母と剣道に感謝し、やってて良かったと心から思える事も

まだ知らなかった

「赤は女のいろだ!!」

「色なんか関係ないの!!」

カトー少年が剣道を始める事を知り、母の知り合いの人が剣道で使うものを送ってくれた

面、小手などの防具全般と竹刀と道着。

その中でカトー少年が気になったのは胴だ

泣いて駄々こねてまで嫌がっていたのは送ってもらった胴の色が

赤だったからだ

色にこうでなければという決まりもルールはもちろんない

剣道を始めるにあたって見学に行った剣道教室で見たのは、男の子が黒の胴、女の子が赤の胴をつけていた

赤の胴は女の子

ただそのイメージがあって、カトー少年は赤の胴をつけるのが恥ずかしくて嫌だった

小学生が背負うランドセルも、なんとなくそれに似た印象があるからだろうか

そしてカトー少年は、剣道教室に通い始めた

胴の色より何より、稽古の辛さに嫌気がさした

精神的にも体力的にも

こんなに厳しくて辛い事が世の中にある事を

初めて知る事になった

毎週の稽古の日、朝から死にたくなる気持ちに襲われる

駄々をこねてもしょうがないことも分かっていて

逃げだす勇気もなく

ただひたすらに耐え続けた

胴が赤だろうがもうどうでもよくて

なんのために練習しているのか

なんの意味があって剣道を続けていくのか

ただただ憂鬱と向き合い

耐え続けた

ある日カトー少年は初めて剣道の大会に出る事になった

会場には他の道場の人達もたくさんいた

会場はざわついていて、活気と熱気が入り混じり

凄まじいほどの重圧がカトー少年を潰しにかかる

そもそもプレッシャーという言葉をもまだ知らないカトー少年

目には見えない憂鬱という悪魔がこの会場にも

ついてきてしまった

初の試合

5人で1チームで争う剣道の団体戦
先鋒、次鋒、中堅、副将、大将

カトー少年は最初に戦う先鋒に選ばれた
もちろん試合は一対一

試合への準備のため、無心で防具をつけるカトー少年に視線が突き刺さる

胴の色が赤だったからだ

やはり小学生の剣道少年の主流として男の子が黒の胴、女の子が赤の胴

周りの小学生達も
男子で赤の胴をつけているのは少し珍しかったのだろうか

その会場では男子の部での赤胴はカトー少年1人だった

ヒソヒソと聞こえる聞き取りきれない言葉の集まりが

カトー少年の心臓を握りつぶそうとしてくる

カトー少年はまだ試合も始まっていないのに汗だくになり

泣きそうだった

そんな弱い自分を背負ったまま

試合が始まった

そもそもが剣道は昔の剣術

当時は本物の刀で、切られたら間違いなく命を落としてただろう

負ける事は死ぬ事

気合いで負けたら終わり
声を出して気合いで勝つ

それが剣道だ

相手の声は凄まじかった

相手の威圧感、その気合いある声だけが耳に残り

試合は終わった

まさに瞬殺

カトー少年は

死んだ

死んだ後のカトー少年の身体は

まるで借り物のよう

脳みそと身体が分離して

別々に動き回る

死んだ瞬間の描写と

目の前にうつる現実が重なりあってはどちらかが消える

その繰り返し

そんな今を生きているカトー少年の心臓ははやい

荒れる息遣いは少しづつ弱くなり

目の前の景色のそれぞれの色が元に戻りはじめる

カトー少年の魂は

刀の刃を少しづつ見せはじめ

鞘を落とした

浮遊していた脳みそと身体がカトー少年の目の前で重なり合った瞬間

刃物はななめ下から上へと線を作った

カトー少年は

また死んだ

赤の胴を外すころにはすでに

カトー少年は心の中の

リセットボタンを押していた

自分は弱い自分は弱い自分は弱い

赤胴のあいつ弱い赤胴のあいつ弱い赤胴のあいつ弱い

そんなカトー少年の本心と

カトー少年自身で作り上げた偽りの言葉たちは

ついてきた憂鬱を連れ去り

会場の外へと出ていった

月日は経ち

カトー少年は剣道大会の会場にいた

トロフィーと賞状を母に預け

胴を外そうとした時に聞こえてきた言葉の集まりは

まだざわつく会場の中でもしっかりとカトー少年の耳に入り込み

心臓のスピードを速めた

「赤胴のあいつ強いな」

(END)





弱い自分を倒す事で強くなれる

それを教えてくれたのが剣道だったのかな
確実に忍耐力は鍛えられた

そんで赤胴ね

今思えば1人だけ赤胴?めちゃくちゃカッコいい

ちなみに濃いワインレッドみたいな赤だったんですよ
これ以来赤胴に誇りをもってました

でも、もし赤胴じゃなくて普通に黒の胴でわだかまり的なのがなかったとしたらまた変わってたのかな・・・






《妄想フィクションストーリー》

「かっけー!!」

「頑張って通うんだよ」

「うん」

カトー少年は母の勧めで剣道を習い始めた

カトー少年が剣道を始める事を知った母の知り合いが剣道で使うものを送ってくれた

家で試しに着た真っ黒の道着に真っ黒の防具はカトー少年を

侍にかえた

そして後日、剣道を始めるにあたって見学に行った剣道教室の活気に震えた

不安が混じった期待感は

カトー少年を強くなりたいと思わせた

しかし稽古は思った以上に厳しかった

毎回心を打ち砕かれる

カトー少年は強くなる事の難しさを痛感した

いつ折れてもおかしくない心を

ひたすらに信じ続け

カトー少年は初めての大会に出る事になった

会場は活気と熱気が入り混じっていて

感じたことのない重圧がカトー少年の心臓を握りつぶしてくる

もともと剣道は昔の剣術

真剣で切られたら間違いなく死ぬ

剣道は一瞬の勝負

テクニックはもちろんだが

集中力と気合い

これが一瞬でも下がったらおそらく負けてしまう

気合いと気合いのぶつかり合いは

会場の隅々まで溢れかえっていて

勝利と敗退の空気感がより不安を誘い

その不安が

憂鬱という化け物として

心の中で形を作る

初めての試合

カトー少年は団体戦の大将に選ばれた

5人1チームで
先鋒、次鋒、中堅、副将、大将
の順で戦い
勝った数で勝敗が決まる

必死に厳しい稽古と向き合って得た実力を認められ

カトー少年は大将という位置を取る事ができた

基本的に大将は簡単に言えばチームで1番強い人やリーダー的な人が選ばれる

カトー少年はなんとなくその事を知っていて

試合の時が近づくにつれ

心の中で作られていく憂鬱を大きく不気味なものに変えていった

試合はほぼ互角の戦い

副将まで終わりポイントは2対2

まさに大将戦でチームの勝敗が決まる

プレッシャーという重圧

プレッシャーという言葉すら曖昧な認識で

カトー少年は初めてのそれと既に戦っていた

ただ自信はあった

まさにここで勝てばヒーローになれる

人生で初めて訪れた逃げられないし逃げたくない瞬間

今まさにそこにある

戦うという勇気

そしてそれを信じてみえるその先の

勝利という喜び

始まりの合図とともに

その全てが弾け飛んだ

時は一瞬

この時をめがけてかけた辛く厳しい長い時間は

一瞬で全てを明らかにする

覆いかぶさっていた憂鬱という不安の塊も

一瞬で消え去り現実を見せつけてくる

カトー少年は

負けた

周りの声は無になり

身体は場外へと動き

教わった試合終わりの一連の動きは

まるで工場の流れ作業の機械に乗せられた商品のよう

からっぽになったカトー少年は

面を外し

誰のか分からない手の感覚を背中で感じ取る

カトー少年の顔に流れる水分は

時より口に入り

全てがしょっぱかった

強烈に胸を締め付ける悔しさで

ボヤけてうつる目の前の景色の中で

カトー少年が見つめていたのは

さっきの相手

カトー少年の心の中で

試合中にも実はなかった闘争心が生まれ

初めて味わう胸の熱さを感じた

目の中の中央にうつる相手の姿

ボヤけて広がる赤色は

相手の胴の色だった

(END)





なんだか自分が思ったのはやっぱり自分の中の芯はおそらくどっちも変わらない気はするなぁ

ただ何かを始める事に対して入り方とかきっかけで色んな経験の感じ方は変わってくるのかなと思いました

妄想フィクションの方は完全にノンフィクションの自分を重ね合わせちゃったなぁ

結局何かに挑む時は

自分との戦いですわ

最後まで読んでくれてありがとうございました

では!

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