自分の『好き』に向き合う覚悟

先日、パートナー・ボンさんの美容室に、
ボク達家族と交流のある画家が髪を切りに来た。

彼は、かつて東京のある画廊で売れっ子だったのだけれど、
描かされる事に嫌気がさし、
地元に戻り、市の施設で美術指導員の職に就いたという経歴の持ち主で、その後も精力的に制作を続け、
コンスタントに作品を発表している。


たまたま時間の空いていたボクは、
酒好きの彼に自家製鹿ジャーキーをプレゼントすべく
顔を出した。

色々な話をする中で、
ボクは彼に聞いてみた。

ボクは、その瞬間に命を燃やし尽くしてしまう程の情熱で、
創作に向き合わないと気が済まない。
バンドからベーシストが抜けて以来、
ギターが触れなくなってしまったが、
本当はずっと音楽がやりたいと思っている。
思っているのにできない事に苦しんでいる。

あなたはどうして職に就きながらも
制作を続けられるのか?
どの様に向き合っておられるのか?
と。

すると彼は、
ボクの音楽に対する気持ちに
ビックリした後、
こう語り始めた。

恋愛で負った傷は、
恋愛でしか癒せないでしょう?

音楽や絵で追った傷もやはり、
それでしか癒せないんだと思うんですよ。

だからまず、自分は音楽が好きなんだ、
愛しているんだとという事を認めて下さい。

その上で、瞬間的ではなく、一生をかけて愛し続けて下さい。

今のあなたの音楽への向き合い方は、
好きだ好きだと言いながら、
いつまで経っても結婚してくれない不誠実な男みたいなものです。

もう諦めて下さい。
あなたは音楽を愛しているんですから、
諦めて結婚してして下さい。

結婚してしまえば、
一生かけて愛さなければいけなくなるでしょう?
その覚悟を決めて下さい。

一生そばにいると分かっていれば、
1日2日顔を合わせなくても気持ちが変わることはないでしょう?
つまり、1日2日ギターに触れられなくても、自分を責める必要はなくなります。

瞬間的な爆発力に魅力を感じるのはよくわかりますが、
時間軸をもっと長く捉えるんです。

向き合えている時は充実しているけど、
向き合えてない時期も長い。
向き合う事に浮き沈みがあるという形ではなく、
毎日少しずつでもいいから、音楽に触れ、
死ぬまで続ける。

それが自分に対して、
自分の好きなものに対しての
誠実な向き合い方ではないでしょうか?

それに、
制作を始める時、
結果を先に決め、それを目指していくのは
とても苦しいです。

次回作が前作を超えなくてもいいんです。
その時の自分はその時の自分でしかないでから。
比べる必要もありません。
その時の自分を大切にした方が健康的です。
と。


結局、自分を追い込み、
音楽から自分を遠ざけていたのは自分だったし、
自信の無さを認めるのが怖くて、
音楽と向き合う事を避けてきたのは自分だった。

好きなものを健全に愛し続ける。
これができなければ、ずっとモヤモヤを抱えたまま生き、
何もできずに死んでいく事になる。

ボクにとって、
音楽と向き合う事は、
自分と向き合う事なのかもしれない。

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