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かたつむりのペース

哲学カフェ・かたりのヴぁは、普段なら通り過ぎてしまう、つまずきの石を拾い上げて、たちどまり、集まったひとたちとともに、いつもとは別の仕方でとらえようとする営みだ。だから、それは「解決」をもって終わるのではなくて、時間で区切られて終わる。なぜなら、いつまでも立ちどまっていたら生活は立ち行かないからだ。このレポートはそれに倣って、いまから30分のあいだ、書かれて終わる(ここまでですでに5分が経った)。

2023年9月2日の「かたりのヴぁ」は、感染症の予防のために、オンラインに変更して行われた。同じ空間をともにすることでからだが発していることを感じあうような体験は難しかったかもしれない。ただ、ある人はカメラをオフにして、マイクが拾う声や息遣いを届けた。そのためだろうか、おそらくは普段も顔見知りであるのだろうひとに対して、「〇〇さんって、山下達郎みたいな声だなって初めて思いました」というひとがいたのが印象に残る。

テーマは「かたつむりのペース」。ひどく遅いことを意味する英語の慣用句を話しのきっかけにして、遅さについて考えてみたかった。語られたことのなかから、いくつか心にとまったことを箇条書きにする。

・歩幅と早生みかん
歩幅が狭いから他人と歩くときに遅れないように早く歩く。けれど、そのせいで「あなたって歩くのが早いですね」と言われるのだという。早生みかんのはやさ。

・機械の時間と手仕事の時間
なぜ早いことがよいこととされるのか? 決められた時間でより多くのことをする=機械がその規範になっているからじゃない?

・ペースは調整できる?
場面によって、自分のペースを調整している。仕事でタスクを片付ける自分と、湖畔でぼんやり雲の流れを追うことのできる自分がいる。ただし、調整できるということはひとつの能力で、特権でもあるのかもしれない?

・道具が作る時間(道具によって変わるペース)
例えば、SNSのチャットと手紙のコミュニケーションがつくる時間の違い。前者は急き立てられるようで、後者は待つことがやりとりのうちに含まれている。

・遅さの粘性=ぬめぬめ
ぬめぬめキラキラした軌跡として遅さをイメージしてみたら。

・無理しないで、寝かせることをしてみた
・緊張に遅れて自分が気づいた
・早くて雑と遅くて丁寧

(了)

かいたひと=ササキユーイチ

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