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古書店街の橋姫が面白すぎる

※このnoteは成人向けBLゲームの内容について言及しています。

年の瀬に人生で初めてBLゲームをやりました。タイトルは「古書店街の橋姫」。

大正十一年六月 梅雨の神保町

会津から上京してきた玉森は、帝大合を目指す浪人生。
しかし底知れない空想癖とだらしない性格が災いし、たった二年で下宿先に見限られてしまう。
とある縁で古書店・梅鉢堂に住み込みで働くことになった玉森は、
同郷の親友らに甘えながらも浪人生という猶予期間を謳歌していた。

そんな中、頼りにしていた親友の相次ぐ自殺と怪死。
雨の降る三日間をなぜか繰り返していることに気づいた玉森は、
彼らを掬うため神保町を奔走する。


何が現実で、
何が幻覚なのか。

友人の死の謎を追う、ポップオカルトな大正ミステリー

https://adeltaz1.wixsite.com/hashihime/concept

大正時代の神保町が舞台で友人の死の謎を追うループもののミステリーで幼なじみがいて主人公と攻略対象が全員童貞、と聞いた時には私の好きな要素しかなさすぎて流石に嘘だと思っていたんですが本当でした。
その上登場人物が有り体に言えばクズというかエゴイスト揃いで、自分は素直で純粋ないい子よりも悪役の方に肩入れしがちなのでそこが逆に良かったです。さらにループ物として出来が良くシンプルに面白すぎる!!!!!オタクの大好きな伏線回収と叙述トリックとメタフィクションが全部あるので助かりました。
あと振り返ってみれば軒並み共犯カプだったなと思うのでそこも最高でした。
こんなに自分に都合のいいことって本当にあるんだと思った。ADVのボイス全部聴く派なので一周50時間くらいかかっているんですが、恐ろしいことに一月で全ルート二周しました。怖い。

中高あたりで文学作品にかぶれて文学少女を気取っていた(と言っても大して読んでいるわけではない)過去があるので、吉屋信子とか泉鏡花とか夢野久作とか江戸川乱歩とか、知ってる文学作品の名前が出てくるのも楽しかったですね。吉屋信子の屋根裏の二処女なんか、自分も主人公の章子と同じく周囲に馴染めない劣等生の自覚があったので、初めて読んだ時に心打たれたのを思い出しこれを機に再読しました。
(なお、ここで大正11年に久作や乱歩?と思った方、その辺もちゃんと回収されます。)

全ルート好きでキャラクターは何だかんだ全員好きなのですが、一番狂わされたのは川瀬です。というかBL好きで川瀬に抗える奴おらんやろ……!と思ってTwitter (X)やらpixivやらで感想を漁ったら似たようなこと仰っている方が散見されたので静かに頷きました。

物語の冒頭(共通ルート)は主人公がカフェで自作の小説を幼なじみの一人である川瀬に読ませるところから始まるのですが、川瀬が主人公の小説をボロクソに貶しており、こいつは主人公のこと好きなんだな……とにやにやしながら見ていました。

ぼんやりと話を進めていると、川瀬がカフェの女給さんに頭からコーヒーをぶっかける事件が発生。Rejetをそこそこ履修していたせいか、このコーヒーぶっかけスチルを見た瞬間「推し!!!!!」となってしまい敗北(ここまでプレイ開始から5分)。
その後川瀬が毎日主人公に会いに来ていることが分かり、その上潔癖症で他人に触れないものの主人公にだけは触れられると明かされ、頭が爆発し、そこから川瀬のことしか考えられなくなりました(ここもまだエピローグ)。

自分もその気があるから言えるんですが、他人に触れない人間が唯一触れる相手というのは相当気を許していないと無理ですし、言い換えれば他人に対して恐怖感をうっすら抱いているけれども唯一その人だけは例外として怖くない相手、と言えるのではないかと思います。
他の人には触れないけどこいつには触ったり触られたりしても怖くないし平気だな…と川瀬が主人公に思った瞬間があるのかと思うと普通に泣きました(繰り返し言いますがここはまだ共通ルートどころかエピローグで序盤もいいところです)。
この時、自分は不潔でお前はその不潔な奴が書いた原稿を今まで読んでいたんだぞ、と主張する主人公に対し川瀬は「君は特別だ」と返すんですが、その短い返しの声色にあまりにも切実な想いが込められており頭をかきむしりました。

ちなみに古書店街の橋姫は攻略順が固定です。なので初回はこの川瀬ではなく水上という別の幼なじみのルートなのですが、あんまりにも水上ルートの完成度が高く、水上ルートを走りきった後には川瀬にもうお前船下りろと思いましたが、川瀬ルートではちゃんと川瀬が幸せになったので本当に良かったです。川瀬〜〜〜〜〜!!!!!!!幸せになれ!!!!!!!!!!!!!

良かったところ/オススメできるところ

・PCなくてもOK
PC版以外にもスマホブラウザ版(R18)、Vita版、Switch版があります。正直パソコンが古くて引っ張り出してくるの面倒なので本当にありがたかった。というかPCオンリーだったら多分プレイしなかった。Vita版とSwitch版はエロいシーンがばっさりカットされてると聞いたのでスマホブラウザ版を購入しましたが、何だかんだSwitch版も買ってしまい操作が快適なので主にSwitch版を触っています。
ちなみにエロいシーンはあまりのありがたさに手を合わせたほどには長尺(特に水上ルート)なのでPC版かスマホブラウザ版を推奨しておきます。メインがミステリなのもあってそんなにBLBLしてるわけでもないので…。

・エログロがキツい作品じゃない
これは個人的な先入観で18禁BLゲーって性癖博覧会イメージがあるというか描写が過激な印象があったんですが、これに関しては特にそんなことはなかったです。本屋さんで普通に売られている年齢制限かかってない商業BLと同程度だなという印象でした。
エロいシーンも各々のルートで1回ずつなので逆に濃いエロスを求めていたら物足りないかも。

・安い
スマホブラウザ版が2,200円。SwitchもDL版がちょくちょくセールしてるようでしたが、小冊子欲しさにフルプライスで購入しました。

・音楽がいい
これは本当に好みの話なんですが、主題歌や作中のBGMがかなり好きです。サブスクにあったのでありがたく聴き込んでいるんですが、普段あんまりサントラとか聴かないので本当に気に入ってるんだと思います。「eyes only」と「橋桁のてるてる坊主」が特に好き。Switch版のOPだけ貼っておきます。
あと川瀬のキャラソンは絶対聴いてくださいサブスクにあるので。

悪かったところ/オススメできなさそうなところ(人によっては)

・登場人物がクズ
もれなくろくな奴がいない。主人公がこれやって許されるんだ(ドン引き)……と思ったシーンがありました。良くないところは良くないところとして描いており正当化しているわけではないので個人的には好きでしたが、主人公はいい子であって欲しい/悪い子が救われるのは嫌みたいなタイプだと向かないと思います。脇キャラの子供たちが一番まとも。

・ゲーム性はない
ゲーム性はないです。攻略順固定で選択肢もほとんどなし、エンディングは各ルート一種類のみ、中途BADなし、なので動画感覚で流してました。私は「ゲーム」がやりたいなら別にどうぶつの森とかゼルダとか桃鉄とかやるんで……と思ってるノベルゲーにゲーム性いらない派なので、攻略が簡単なのは文章に集中できてありがたかったです。


各ルートの所感(以下ネタバレあり)

・水上ルート
死ぬなっつってんだろ!!!!!と何度も叫びましたがそのおかげでラストでは水上が生きている喜びを存分に味わえました。まあ最後の寺でも殺してくれとか言い出すのでキレましたけど。
正直目を見開いた時の水上の顔が作中一好きなので玖の花澤・博士との対決シーンのスチルで大騒ぎしました。あんなの卑怯だろ。普段のほほんとしてるくせにやる時はやる500000000年前から愛していた運命の相手に誰も敵うわけない。
それはそれとして恋人になった途端に結構ぐいぐいくるので何だこいつは……!と毎回キレていました。拾の帰省の電車でのやりとりが本当に好き。
だいたい雨の日ルールのせいなんですが、全カプ中水上×玉森が一番恋人色が強くて一番エロいと思います。

・川瀬ルート
玉森くんが川瀬のこと恋人じゃなくて親友!って言い張ってるの可愛いと思うんですが、肉体関係あってもどこかブロマンス的というか、友人・恋人・配偶者・家族みたいな関係性がシームレスに繋がっている印象があってそこがいいなーと思うカプです。川瀬も玉森くんには全ての感情を抱いているらしいのでさもありなんという感じですが。
Switchの人物紹介の「玉森と毎晩一緒に寝ている」の箇所で無限ににやにやできる。
二人で色んな事件解決して欲しいし川瀬は玉森くんのご飯食べて早く健康になって欲しい。
川瀬には関係ないですが、川瀬ルートで東洋キネマに水上が死なずに来てくれたのが作中一嬉しかった覚えがあります。
それはそれとして幼なじみと死体埋めと首絞めを同じルートでやるな(ありがとうございます)。

・花澤ルート
ある意味心中みたいなメリバエンドなので好き嫌いは別れそうですが私はかなり好きでした。花澤ルートでは水上と川瀬が死亡したままなのでそこは辛いんですけど、二人を救わなかったのは二人を諦めたんじゃなくて時間跳躍したところでこの世界線の二人を救うことはできないと悟ったからで、だったら最後に一人残った花澤だけでも彼の罪ごと掬おうとしたのが花澤ルートなんだろうなと思いました。
花澤は子供時代をちゃんとやり直して欲しいし、そのためには子供みたいな玉森くんが必要なんだと思います。
後日談は実は花澤のが一番好きだったりします。スチルも相まっての背徳と花澤の寂しさが感じられてツボでした。あと幼少期の川瀬があまりにも可愛くてひっくり返った。

・博士ルート
笑いあり涙ありなんでもアリで面白くて、おもちゃ箱をひっくり返したみたいに終始楽しいルートでした。プラシーボ媚薬とか受より喘ぐ攻とか舞踏会の夜に二人だけ抜け出して踊るワルツとか、何故か局所的なツボを的確に突いてくるルートだったので何なんだと思いながら大喜びしていました。攻への乳首攻めがあります!!!!!!!
博士、作中でも気持ち悪いと言われていますし、実際気持ち悪いのはまあそれはそうなんですけど、幼なじみ3人と違って素直でストレートに好意を示してくれるところは手放しでいいなと思います。聞いてんのかお前ら。
「お慕いしてます」「君を…僕だけのものにしたい」のあたりで普通にめちゃくちゃときめきました。まあその後すぐに水上や川瀬はただの知人の分際で〜みたいなこと言うので笑ったんですけど。
博士ルートは震災も戦争も起こらない一番平和なルートですが、川瀬がずっと哀れなので何とかしてやってよ〜!!とは思いました。好きな子の眼球を別の男に移植させんな。

・カオルルート
店主が16年前に戻って水上の頼み通り幼なじみ3人を殺害できてしまったルートでさらに博士もいないのでそこはかなり寂しいんですが、そう来たかと思いました。
個人的に玉森くんって怠け癖があって甘えられる人がいたら甘えてしまうので他のルートではあの仕上がりだっただけで、興味のあることには優秀で物覚えがよくて集中力があったり、時間跳躍への理解や久作の前期か後期か〜みたいな発言があるあたり地頭がそこまで悪いわけじゃないんだろうなと思っているので、頼れる人がいないルートでああなってたのは割と納得でした。カオルも可愛いし文士になるルートも欲しかったので嬉しかったです。
それはそれとしてあくまでも一番メインのルートはやっぱり水上かなと思います。

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