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アイドルマスターシンデレラガールズ『燿城夜祭』に見たコンテンツ継続性への希望(と継続する問題点)

 2023年6月10日(土)・11日(日)に開催された標記のライブに現地参加してきました。会場は大阪城ホール、アイドルマスターシンデレラガールズとしては2020年2月の京セラドーム以来の大阪開催。あの時は新型コロナウイルスが日本で感染拡大を開始する前夜(奇しくも、同じ日に大阪のライブハウスで日本初とされるクラスターが発生)。マスクをしながらも声援を送っていたのを今でも覚えています。
 そして今回。3年振りの大阪、そして(アイマス5ブランド合同ライブを除き)シンデレラガールズとしてはコール解禁後の初ライブ。この2つの公演に運命的なものを感じます。また、この2つの間にもライブは開催されており、大変印象に残る公演も何度もありました。
 そこで、まず今回の『燿城夜祭』に関して感動した・期待を上回った・今後に期待が持てるような点など全体的な感想を述べつつ、必ずしも手放しで褒められるわけではなかった部分についても過去の公演も含めて敢えて記したいと思います。お気持ち表明と取られるのも致し方ありませんが、明らかに問題であろうと思われる点がアンケートで送るだけでは根本的に改善されていない状況を見るに、別の形で公開した方がよいのではないかと考えた次第です。

1.本公演のここが素晴らしい

1-1.出演者のパフォーマンス

 本公演開演までの大きなトピックとして、大槻唯役の山下七海さん、藤原肇役の鈴木みのりさんが体調などの理由で出演できなくなるという発表がありました。お二人とも大変にステージ映えする魅力と実力を持っておられ、アイマス以外でも活躍されている人気声優。仕方がないとはいえ、残念だというのが嘘偽りない感情でした。と同時に、割と直前での発表でもあったのでセットリストをどうするのか、披露されると思っていた『Sunshine See May』などはどうするのかなど、観客側ながら勝手に心配していました。
 それをあのような形で再構成して披露するとは。個別の楽曲については次のセットリストの項で記載しますが、キャストの演技・表現力、照明・音響の演出など、「いるはずだったキャストがいない」ことを最大限利用してプラスに転じようとした、別の意味を持たせる形に構成してきたのは驚きと共に感動せずにはいられませんでした。
 他にも、初披露曲、コール有としては初披露の曲など、どのキャストも期待を上回るパフォーマンスを見せてくれたと思っています。

1-2.セットリスト

 端的に言って、全部良かった。その中でも、特に印象に残った曲に絞って手短に感想を述べたいと思います。

『不埒なCANVAS』(両日):オリメンの塩見周子、そこに速水奏・八神マキノの加わったトリオ編成。正直、この曲は原曲を初めて聞いたとき少々意外なオリメンだと思っていました。もちろん悪いということは全くありませんが、むしろ今回の編成の方が個人的にはイメージ通り。それを聞けたというのはやはりライブならでは。ぜひ音源が欲しい。

『サイン・オブ・ホープ』(Day1):リリース直後ということもあり未聴でしたが、こんなに熱い曲だとは。JAMProjectの『SKILL』に通ずる熱さ。最後の「もっともっと」の煽りとコールがどんどんボルテージを上げていく瞬間はおそらく今回の初披露でしか生まれない奇跡でしょう。現地参加できて本当に良かった。

『Nightwear』(両日):オリメンが全員揃っているため間違いなく披露されると思われていた曲。その期待を上回るパフォーマンスでした。普段からユニットで活動しているわけでもないのに、ユニットとしてのあの一体感、あの完成度。ユニット活動を基本とするシャニマスなどのパフォーマンスと比べても遜色ない、いや、より個々の力強さを感じるというか、ソロや別の組み合わせで色々な曲をやってきて磨かれた能力と経験が集結してシナジーを生んでいたと言うべきでしょうか。とにかく素晴らしかった。

『Wish you Happiness!!』(両日):個人的にやって欲しい、やる可能性は十分あると思っていた曲。もともと新年のタイミングで披露された曲ですが、「新しい時代の幕開け」という歌詞とコロナ開けが重なり、今の状況に見事に適合します。初披露では無観客だったこの曲をコール有りで迎えられたのも非常に感慨深いものがありました。

『Sunshine See May』(Day2):前述のとおり藤原肇役の鈴木みのりさんが急遽出演不可に。今まで必ずオリメン2人で披露してきたこの曲、一体どうするのか……と思っていましたが、高田憂希さんが1人で出てきて歌い始めたときには驚きと共に最後まで見守る、見届けるぞという想いを抱きました。1人で歌い続ける姿に感動を覚えながら緑や藤色のペンラを持ち応援していましたが、最後の最後で音源で藤原肇の歌が聞こえたとき、そしてその時の高田憂希さんの笑顔が映し出されたとき、ステージにはいなくとも心は1つ、寄り添っていてくれているのだと涙を禁じ得ませんでした。あんなもん誰だって泣く。

『Isosceles』(Day2):こちらは『Sunshine See May』とは違い、歌割りは変えずに音源を使い、振り付けやフォーメーション、照明も2人いる状態での構成のまま。つまり、鈴木みのりさんがいない事実は変えられないが「藤原肇はステージにいる」ことを表現したステージにしていたのではないかと考えます。津田美波さんの悲痛にも見える覚悟の表情に、この曲、このユニットへの想いの強さを感じてまた涙を禁じ得ませんでした。

1-3.公演関連施策の展開

 まず、公演テーマに連動したグッズ展開。特に新作の法被。今回、以前までの公演と比べても特に法被着用者が多かった。やはり夏祭り的な公演テーマに合っていたため、今回初めて着たという人も多かったのではないでしょうか。私もそうです。
 フラスタ展示。梅雨時期ということもあり、屋内展示になっていたのは贈る側・贈られる側・見る側の三方良し。順路もしっかり設定されていたので割とスムーズに流れていたのにも不満がありませんでした。
 プレゼントボックス設置の再開。どのキャストさんだったか、公演直前やDay1観賞後に書いた手紙などを読めるのは楽しいというようなことを仰っていました。書いた手紙がすぐにキャストさんの目に入るとは限りませんが、贈る側としてはその機会が与えられるだけでもありがたいものです。内容に問題があればチェックで弾かれるでしょうし、贈って悪いことはありません。私も手紙を入れさせていただきました。


 以上、本公演に関して特に素晴らしいと感じた点になります。そして、全体を通し、今までの公演などを踏まえ、シンデレラガールズというコンテンツが持つ特異性は「世代交代を含んだ継続性」であるということを改めて認識しました。
 今回、CVを付け始めた初期からのキャストも活躍されていましたが、比較的最近CVを担当されるようになった若手キャストも多く、出番も多くあってかなり前面に出ていたような印象があります。それでも十分に成立するアイドルの人気とキャストの能力、そして今後も新しくCVが付いていくであろう余地が残されているというシンデレラガールズの懐の深さ。曲に関しても、10年前の曲から最新の曲まで多数使うことができ、オリメンに限らず色々な組み合わせで違った味を出せるという大所帯ならではの強みがあります。
 年齢の面だけではなく、人気声優となればなかなかライブに参加することも難しくなってくるでしょう。結婚・妊娠・出産などで芸能活動を控えていく可能性も十分にあります。それでも、能力あるキャストが新しく参加したり、何なら親子で同じステージに立つ将来も……ということまで期待できるような継続性を、井上ほの花さんを観ながら思いました。


2.本公演のここが不満

 一方で、本公演に対して不満を覚えた点もあります。キャストのパフォーマンスや選曲などには一切不満はありません。問題は、ステージの端に視線を遮る障害物があったことと、センターステージの形状にもかかわらず配信画面を優先してキャストを配置したことです。

2-1.ステージ端の障害物

 これを指摘するためには会場の様子を示す必要がありますので、以下に配置図を掲載します。細かい部分は異なりますが、概ねこのようなステージ形状でした。

ステージ形状図

 私の席はそれぞれ上図に示した場所です。Day1のアリーナ席はなかなか良い位置だと思われるかも知れませんが、必ずしもそうとは言えません。なぜなら、ステージの四隅に1m×1mくらいの巨大なモニターが設置してあったからです。
 このモニターにはカメラ映像が映るわけではなく、曲のイメージに合わせた画像、公演テーマに合わせた屋台風の画像が映るのみです。こんなデカいものがステージ上に置いてあったら、当然視線の通らない範囲が大いに生まれます。Day1の席位置からだと、ステージより低い位置から見上げる構造になっていることもあり、概ね下図の範囲は肉眼では見えません。

Day1席からの視界(グレーの部分は見えない)

 この席位置にもかかわらず、『義勇忍侠花吹雪』などセンターステージで3人横並びのフォーメーションだった場合は左側の1人は見えません。『Nightwear』など5人横並びだったら左側の1人は確実に見えず、場合によっては2人見えません。現地参加する理由の1つは肉眼でキャストを見ることにあると思っていますが、それが損なわれた形です。席位置によってはもっと悲惨だったことでしょう。
 それでも、この四隅モニターが演出上十分な意味があって必要だったというならまだ不満はありつつも理解はできますが、本公演においては少なくない数の客席からの視界を大いに狭めてもなお設置するほどの必要性があるようには思えませんでした。奥側と右側のサブステージ部分はともかく、これさえ無ければセンターステージの左半分も普通に見えたはずなのに……なんでこんなものを置いたのか、いまだに意味が分かりません。

2-2.配信を優先したパフォーマンス方向

 本公演は例によってオンライン配信での視聴も可能だったわけですが、今回はマルチアングル配信も実施されていました。マルチアングルは固定カメラの映像となりますが、そのカメラが設置されていたのが上図における下側(南側)のボックス席あたり(もう1台、スタンド最後列の斜めからのアングルのカメラもありましたがこの映像をメインで見る人はまずいないでしょう)。通常より割高なマルチアングル配信チケット購入者に対して、買った意味がある映像を見せようとしたためでしょうが、ステージ上のキャストは基本的に南側を正面としてパフォーマンスをしていました。MCが複数回ありましたが、全て南向きでした。
 もちろん、南以外はサブステージがありアリーナ席にかなり近いところまでキャストが来てくれるというメリットもありましたが、南側のカメラと客席をメインターゲットとしてパフォーマンスをしているという印象はぬぐい切れません。当然ながらこれはキャストの問題ではありません。ステージ構成や演出などを決定した制作側の問題です。南側以外、特に北側のスタンド席などはこの影響を大きく受けたのではないでしょうか。
 言葉は厳しくなりますが、そもそもセンターステージの形状に対して固定カメラを設置し、そのカメラの画作りを優先的に考えたらカメラの反対側にある席からの見え方はどうなるか想像できないのかと言いたいところです。

 上記2点に共通する問題点は明らかです。席によっては見えづらいとかいうレベルではなく、制作スタッフは現地席からの見え方を考えずにステージ作りをしている。そう思われても仕方ないのではないでしょうか。これは本公演に限った事ではありません。例えば昨年4月の10thファイナル。ステージ内に設置された巨大な柱によってキャストが見えないという状態が多発しました。例えば昨年11月のコンステ。ステージ形状はチケット販売時の案から少なくない変更があり、かつSS席のうち半分程度はステージの端に近いだけでS席やA席にも劣る見え方だった、というのは記憶にも新しいところ。
 このようなことが続けば、ワンチャン良い席を期待して現地に行くよりも配信で十分と考える人が増えてくるかも知れません。というか、既に増えてきているのかも知れません。

3.最後に

 いろいろと余計なことも書いてしまいましたが、各キャストが最高のパフォーマンスを見せてくれて、観客側もコロナ前に概ね戻った状態で観賞できて、非常に楽しく、感動し、今後の飛躍に期待も抱ける素晴らしい公演でした。それだけに、意味の分からない障害物があったせいでケチがついてしまったのは残念です。

 文句垂れるくらいなら現地行かずにおとなしく配信で見てろよ、と思う方もいらっしゃるかも知れませんが、私はまだ改善される可能性に期待を持っています。それに、10thファイナルでもコンステでも2日間のうち1日はかなりの当たり席を用意していただいた過去があるので、それに報いる形でも今のところは現地参加を志向しています。9月の名古屋公演も即申し込みました。また、キャストさんのパフォーマンスは毎回期待を越えて素晴らしいので、結局のところそれが現地に行きたくなる最大の要因であるのは間違いないでしょう。


 それはそれとして、3年振りに大阪に行って美味いものをたらふく食い若干観光などもして素晴らしい公演にも参加でき、大変楽しい遠征でした。2泊3日のチートによって一時的に体重が3kgほど増加しましたが、後悔はありません。

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