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第二の人生81

年末…丘野が不渡りを出すことが確実となって、丘野真一が、泰三と麗子に土下座して頭を下げてでも渋谷涼と紗奈美に、資金融資をお願いするしか手はないと、説得を試み、それでもこれまで散々自分たちの都合のいいように使って来た紗奈美に頭を下げることなんてプライドが許さないと言って、現実逃避のため、泰三と麗子が酒に溺れていた頃…。

涼は、最終手段として、そのプライドを捨てて、俺と紗奈美のところに金の無心に丘野泰三と真一が来るかもしれないと思い、それを回避するため、紗奈美を連れて、海外に渡航していた。
当然、そういった理由を紗奈美には伝えず、今年は海外で年末年始を過ごそうと言って連れ出した。

ついた先は、南の島だ。
紗奈美は、空港を出て、太陽の眩しさと南国の熱に目を細めた。

あっつっ💦と涼も思わず口にする。

真っ青な空が一面に広がる。
南の島って感じですね。10数時間前の日本の寒さが嘘みたいです…と紗奈美。
確かに…成田は0度だったもんな…と涼。
それがこの南半球の島では、36度もあった。
デニムにセーター、ダウンジャケットを羽織って乗った飛行機の中で、2人は上着替えて、今はデニムにTシャツだけの姿に変わっている。
空港に出迎えてくれたホテルのバスに乗って宿泊先のホテルに向かう。

時差ボケで眠たいはずだが、強い日差しと暑さのせいで眠気も吹っ飛んだ。
空港から20分ほどでホテルに到着。
ホテルは、真っ白なコンクリート製の2階建てのいかにも南国を思わせる作りだった。
その建物の1階フロントでチェックインして、ベルパーソンの案内で部屋へ案内してもらう。
幸いなことに涼は英語が全く話せないが、紗奈美は幼少期から英会話に通わされていたため、また本人も英語を得意科目としていたので、日常会話や海外旅行での英会話程度は何ら問題はない。
入管から空港、バス、ホテルへのチェックインを始め、旅行での通訳は全て紗奈美がいてくれたので何も問題はなかった。

客室は、このフロントのある建物内にはない。
ベルパーソンに着いて歩いて行くと真っ青な海が広がる海辺の桟橋に到着。そこから定員10名ほどのカヌーのような大きなボートに乗ると、海上に複数建っている海上コテージに案内された。
客室内の設備についての案内を受けて、ディナーの予約をお願いして、ベルパーソンは戻って行った。

紗奈美は、素敵❗️と感動している。
涼もエメラルドグリーンの海、純白を基調としたコテージ、床の一部が透明なガラスになっていて室内から海を望むことができる。
クィーンサイズほどのふかふかのベッド、海を見渡すことのできるバスルーム、まさしく高級リゾートのホテルだった。

海上コテージには、海底ケーブルを伝って水道や電気も通っているので、ちゃんとエアコンも効いているので快適だ。
あなた、こんな素敵な場所に連れて来てくださってありがとうございます❗️と紗奈美は目をキラキラさせて喜んでいる。

涼も満足そうに、ん。俺も一度は来てみたいところだったからなぁ…って言ってもひとりじゃ来ても意味ねーし(笑)惚れた女と一緒に来れて、俺も幸せだよ。俺に着いて来てくれてありがとな…と。
紗奈美は、涼の言葉に涙を浮かべて、涼に近寄るとその胸に顔を埋めて両腕を涼の背中に回すと、涼もそれに応えるように紗奈美を抱きしめた。

互いに安心したのか、そのままベッドに横になるといつのまにか二人は抱き合ったまま眠っていた。

紗奈美は、揺り動かされて目を覚ました。すると、涼から紗奈美、起きろ❗️最高の夕日だ❗️
生まれてこんなに綺麗な夕日を俺は見たことない‼️と言って、紗奈美は起こされた。
まだ少し寝ぼけて涼から手を引かれてコテージの外に連れ出されると、深い緑色の水面に浮かぶ燃えるような真っ赤な大きな太陽が水平線にゆっくり沈んで行くところだった。太陽から真っ直ぐ自分達に向かって太陽に照らされた金色の光の道が伸びている。

紗奈美も涼も、その美しさに言葉を発することも忘れてしばし見入っていた。
太陽は、ゆっくりと水平線に沈んで行った。
紗奈美は、この時、生まれた初めて自然の美しさで感動して涙を流した。
太陽が沈み徐々に辺りが暗くなって、周りのコテージに火が灯り始めた。
涼もベルパーソンから教えてもらったとおり、コテージの周囲にあるランタンに火を灯した。
室内は、電気の灯りで明るくなっている。
それからすぐに海辺の方からボートでディナーを運んでくれたので、二人はワインを飲みながらゆっくりとディナーを楽しんだ。
とても美味しいフランス料理だった。
この島がフランス領なため、食事は基本フランス料理だ。
どれも全て美味しかった。
ディナーが運ばれた際に明日の朝食の時間を一番遅い時間帯に指定した。

この時の日時は12月30日の午後8時、日本では同日の午後5時だった。 

食後のデザートとコーヒーを飲み、食器類を指定された場所に片付ける。食器は明日の朝食時に回収するとのことだった。

夜の海の音を聞きながら、涼と紗奈美は、バスタブに身体をゆだね、そのまま深く長く繋がり愛し合った。そして深い眠りに落ちた。


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