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第二の人生71

海岸沿いのキャンプ場。

2人は、キャンプ場内の浴場施設で風呂に入って、キャンプスタイルに着替えた。

ゴールデンウィークと言うこともあって、多くのキャンピングカーが止まっている。

涼は、家が建ち上がったら、次はキャンピングカーの買い替えをしようと考えている。

次はどんなキャンピングカーにするつもりなの?と紗奈美か聞くと、涼は、ベンツのキャンピングカーを買おうと考えていると話した。

それだとダブルサイズのベッドがあって、キッチンとトイレ付きのシャワールームもあって、2人で十分、食事ができるテーブルも完備されている。ソラーパネルとバッテリーとエアコンもある。

涼は、そのサイズのキャンピングカーを十分停めることが出来る前提で車庫のサイズを設計させている。

2人は、ポールを立てて、車との間に日除用のテントを設置。リクライニングチェアーや焚き火台、コンロ、テーブル等も設置して、コーヒーを入れて、落ち着いた。

森に囲まれたキャンプ場とは異なり、海沿いのオートキャンプ場は、虫などがいなくて、目の前が海岸なため、開放感が素晴らしい。
だから、ある程度、軽装で過ごせる。
紗奈美は、黒のカップ付タンクトップにグレーのホットパンツといったラフな格好だ。
下着は、Tバックのショーツだけだ。

波の音を聞きながら、ゆったりと過ごす癒しの時間は最高だった。

あなた…。と紗奈美が涼に話しかける。

ん?と応える涼。

あなたと出会って、私は本当に幸せの連続。
あの辛く、惨めで、何もかもが残念で、自分の全てをほぼ諦めて、日々をとにかく、流すように生きていた30数年間がウソのように…。
今は、毎日が夢のように、アッという間に過ぎていって、もっともっとゆっくり時間が進めばいいのにと思えるぐらいに…。

涼さんからいただいた、この時間と場所、全ての環境を、これからもずっと大事にしていきたいです。
これからも、涼さんに私がいただいた幸せ以上の幸せを感じもらうために、あなたのために、あなただけのために、私は生きていきますので、これから先も、ずっとずっと、あなたの側に居させてください。お願いします。

紗奈美は、涼の傍らに座って、訴えるように瞳を潤ませながら話した。

涼は、優しく紗奈美の頭を撫でて、じゃあ俺からもお願いだ。
俺があの世に行くまで、こうして俺の側にずっと居てくれ。それだけだ。

はい。涼さんがいなくなったら、私もすぐに後を追いかけていきます(笑)

それはダメ!ちゃんと天寿を全うして、俺のことをちゃんと偲んでから来てくれ(笑)

あなた…愛してます。
そう言って、紗奈美は、涼に覆い被さるようにしてキスをした。

近くのキャンプスペースから、男女の楽しげな声や子供達のはしゃぐ声が聞こえてくる。

平和で穏やかな休日だった。

この日の夜は、スペアリブを焼いて、ベーコンときのこのトマトソースのパスタ、サラダを作った。
ビールで乾杯して、ゆっくりと食事を楽しむ。

すみません💦と、2人で食事をしているところに、大学生っぽい女子2人がやって来て、お願いがあるのですが…と。

紗奈美が立って行って、どうされたのですか?と話を聞いている。

涼さん…BBQ用のトングが壊れちゃったしく、もしよろしけば貸してくださいって。

あー。いいよぉ。使ってないのがあるから…と言って、調理器具の収納BOXから取り出して紗奈美に渡すと、紗奈美がそれを持って、女子大生に渡していた。
2人は、頭を下げて、ありがとうございます❗️と言って戻って行った。

大学生っぽいね。いいなぁ…若いって。

あぁぁ、あなた、おじさんみたいなこと言ってる(笑)

そりゃおじさんであることには、変わりないよ(苦笑)でも、毎日が大変だった頃は、学生を見て、もう一度若返って人生やり直したいって思ってたけど、こうして紗奈美と出会って、今が幸せだと、そうは思わなくなるって言うね。やっぱ苦しくても色々頑張ったら、その先にいいことが待っているかもしれない…でも、辛い時はそうは思えないからなぁ。

確かにそうかも…私の場合は、頑張ったって言うより、嫌なことに目を背けて、逃げた先にあなたが居て…そして幸せになれた。

うん…だから、キツい時、辛い時、しんどい時って言うのは、頑張って立ち向かおうとすることも大事だけど、それが出来ない人もいるし、でもそういう時は逃げてもいいってことだと思うよ。
自分を死に追いやる逃げって言うのは、ダメだけど、その環境から離れて、自分の身の置き場所を変えるってことは大事なことかもね。

ハイ。そうですね。今は逃げて良かったって思ってます。

しばらくして、さっきの女子2人と若い男子学生2人、計4人で、貸していたトングを返しに来た。
ありがとうございました!と丁寧にお礼を言って頭を下げる。
紗奈美が立って行って、どういたしましてと言って受け取っている。
すると、男子学生の1人が、すみませんが、もしお邪魔じゃなかったら、一緒に飲みませんか?と誘って来た。

紗奈美は、涼の方を見ると、涼が笑っていたので、じゃあ少しだけ…お邪魔しますね。と言うと、男子学生が飲み物と椅子を持って来ますので、こちらで飲ませてもらってもいいですか?と…涼は頷いてOKを出す。

学生風の4人は、キャッキャッと喜んで飲み物を取りに戻って行った。

4人は、やはり大学生だった。
2組のカップルかと思いきや、サークルで知り合った友達だそうた。
すみません💦なんか押しかけるように来てしまって…。

涼は気にしなくていいよ…てか、俺達の何かに興味があったんだろ?

あ…は…はい💧(苦笑)バレてました?

そりゃそうだろ?何か目的があって声をかけて来たんだろうから…(笑)

紗奈美は驚いた顔をして…えっ?そうだったの?
何か目的って💧

目的って言うか…、と言って横目で女子2人に目を向けると、小柄な可愛いらしい女の子が、お姉さんってめっちゃめっちゃ綺麗なんですけど、モデルさんか何かですか?お二人って夫婦なんですよね?と聞いて来た。

紗奈美はビックリした顔をして、ううん💦と首を横に振って、モデルなんて…普通の市…会社勤めてのOLみたいなものよ。

涼も笑って、俺も普通のサラリーマンで同じ職場だ。で、付き合ってはいるけど結婚はしてないね。
お互いバツイチ同士でね。去年知り合って、今は一緒に暮らしている。まぁ先々、結構するかもしれないけど、あんまり結婚って言う形式に囚われていないかなぁ(笑)こうして、お互いに時間を共有して、休日に楽しい時間を過ごしてるって感じだな。

そうなんですね。でも、いいですねぇ。素敵!

男子は、紗奈美に、女子が隣のキャンプの女の人が、ヤバいぐらい美人でかなりヤバいって言ってて…そんなことを聞かされたら、やっぱちょっと見たくなるのが男の性と言いますか…(苦笑)

涼は、笑って…まぁそりゃそうだな…見るだけタダだから、しっかり見ていいよ(笑)

エッ?もう涼さん💦やめてください💦

女子達は、お肌綺麗!色白ヤバいです!
ってか、男子の前で失礼ですが、おっぱい大きいですよね!羨ましいなぁ…何カップあるんですか?

紗奈美は、照れて、んーーーー、G…だね。と応えると…。

G⁉️ヤバ‼️と男子が叫ぶ(笑)

でも、これ、本当に肩凝るのよ(苦笑)

いいなぁ〜あたしも一度でいいから、胸が大きくて肩が凝るって言ってみたーい❗️

だよねー❗️

4人は、友達って、今後恋愛に発展する予定はないの?と涼が聞くと、互いに顔を見合わせて、んーーー。ないかなぁ…(笑)
友達感覚でいるから…と女子達。
男子達は、そうですねぇ…恋愛となると色々面倒くさいと言うか…、今のようにみんなでワイワイってなれないって言うか…なんかイメージが湧きませんね💧

涼さんが、大学生の頃って、どうでしたか?と紗奈美が聞くと…。

俺?俺は…、(笑)完全な肉食男子だったから、手当たり次第、女子を追いかけ回してたな(笑)

で、結局のところ、傷つけもしたし、傷つけられたりもしたし…俺って最低だなって思ったこともあれば、あの女、最悪だったなってこともあったな(苦笑)
でも、その結果、自分で言うのも何だけど、それなりに人の心の痛みがわかる人間になれたと思うし、人を見る目が養われたってこともある。

そうやって、恋愛を通して、友達付き合いだけじゃない、人間関係の築き方みたいなものも学んだし…。

俺は、比較的ポジティブな性格だったことも功を奏したってのは、あるけど…な。

おっさんの俺から言えることは、怖がらずにどんどん人を好きなっていいと思う。
人に迷惑をかけない程度で、自分に素直に感情をできるだけ表に出していった方が、楽に生きていけると思うよ。
簡単なことじゃないけどね。

いつの間にか、4人は涼の言葉に聞き入っていた。そして紗奈美も…。

すると、1人の男子が、確かにそうですね…自分の素の感情って、やっぱり相手に伝えていかないと、後で後悔したりしますよね…と言い出した。

エッ?何々?告白タイム?もしかして…と、友達が囃し立てる(笑)

涼は笑って、まぁ夜はまだまだ長いから…ちゃんと言葉を考えて、時と場所を選んで、しっかり勝負しなさい(笑)

ハイ❗️そうします❗️

エーーーー⁉️とみんなで騒ぎ出す(笑)

ひとしきり恋愛トークで盛り上がって、解散した。

涼と紗奈美は、2人きりになると、若いっていいなぁって思いますけど、あなたの言ったように、若い時の色々な大変な経験を超えてたどり着いた今を思うと、昔のダメな自分のことを許せると言うか、肯定できる気がします。

俺だってそうだよ。紗奈美と出会ったことで、過去の残念な自分を許せるようになったから。
だから、やっぱ過去に囚われずに、今と今から先の自分がどうありたいか、どんな幸せをどうやって築いて行くのか…それを考えて毎日を過ごすことが大事なんだよ。


はい…私もあなたと出会って、今、同じように思うことができています。

そうして、この夜も、2人は、波の音を聞きながら、キャンピングカーの中で抱き合ったまま穏やかな時を過ごした。


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