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第二の人生76

おい❗️紗奈美‼️といきなり下の名前を呼ばれて、紗奈美はびっくりして、名を呼ばれた方を見ると、兄の丘野真一が紗奈美が所属する総務課の窓口カウンターに立ってこちらを見ていた。

周囲の職員もエッ⁉️という顔で紗奈美とその男性を見ている。

紗奈美は、あっ兄です💦
ちょっと離席させてくださいと、上司に許可をもらい、兄の元へ寄って行った。

紗奈美は、兄と同じ連れ立って、廊下の端にある待合の簡易スペースへ向かった。
兄の真一は、椅子に腰掛けると、なんでお前がこんなところにいるんだ⁈と、以前と変わらず怒ったような物言いで聞いて来た。
紗奈美は、立ったまま、正規職員ではありませんけど、春からここでお世話になっています。と応えた。

真一は、紗奈美の足のつま先から頭のてっぺんまで撫でるようにジッと見上げ、ニヤッと笑って、お前、随分と垢抜けたな…と、そして男でも出来たのか?といやらしい顔付きで、下衆なことを言ってきたので、紗奈美は全身に悪寒と鳥肌が立った。が、ここで余計なことを言って、涼さんに迷惑をかけちゃダメだと思い…仕事中ですから失礼しますと言って、自席に戻ろうとすると…。

おい!ちょっと待て!職員で渋谷さんという人がいるか?と聞いて来た。
紗奈美は、先日の土地の売買の件があったので、涼を訪ねて来たのか?と予測はしてたので、驚きもせずに、ハイ。いらっしゃいますよ。と言って、涼が在籍する部署のフロアの場所だけ教えてやった。

すると、真一は、お前、金持ちの男を引き入れるか、宝くじでも当てたのなら、俺のところにも少しは、持って来いよ!散々、うちに迷惑をかけたんだからな!と言って立ち去って行った。

紗奈美は、我が兄ながら、どうしてこんなにも最低なんだろうと思いながら、涼さん大丈夫かしら?と心配しつつ、でも涼さんだから…大丈夫!と自分に言い聞かせて自席に戻って行った。

涼は、訪れて来た真一を、応接室に案内して、相手をしてやった。
話の内容は、当然、我が土地の売買に関することだった。要するにどうか買ってくれないか?と言うお願いだったが…。

涼としては、第一に紗奈美に嫌な思いをさせないことが最優先だから、最初から買うつもりはない。が、それを理由に断ることができないため、色々独自で調査をして、買わない理由を用意していた。

丘野さん、申し訳わけないが、結論として私としては、あの土地を買うつもりはありせません。

エッ⁉️なぜですか⁉️国道までのアクセスも悪くないし、駅までも車で15分程度に行けますし、宅地にして転売するには、いいと思うのですが…。

確かに丘野さんのおっしゃるとおりですが、あの地区はまだ都市計画区域に指定されていない地区で、下水道も完備されていません。
商業区域は、駅の反対側ですし、小中学校からの距離もかなりあります。
子育て世代からすると、中々あそこに家を建てるとなるとハードルが高い。

そ…それなんですよ!だからあの地区をもっと活性化させるように、役所に言って、もっと整備するように訴えてはいるんですが、中々役所の連中の尻が重くてですね…あっ💦すみません、渋谷さんも役所の方でしたね💦

いえ、大丈夫ですよ。役所というところは、わかってはいても、地元調整や予算の関係で、中々話が先に進まないものです。
ですが、今、あの地区をどのように再開発をしていこうかと、地区の代表者の方々の意見を聞きながら、役所が計画の策定に向けて検討しているということでしたが…地元の丘野さんも、それはよくご存知なのでしょう?

いや…はい、それは知っていますが…。

あの土地は、これから先、十分価値の上がる可能性がありますから、丘野さんこそ、逆にあの土地を売らずに価値が十分上がるの待ってお売りになった方がいいと思いますが…。

いや、自分もそこはちゃんと考えてはいますが、今、進めている新規事業に、早急にもう少し投資して、より大きな成果を得たいと思っておりまして…その資金調達も含めて、早めに売りたいと考えているわけなんです。

ほぉ!そういうことですか!でも,そんな大きな成果が見込まれる事業なら銀行からの融資を受けた方がいいんじゃないですか?
それこそ、あの将来性のある土地を担保にしれば、早々資金調達できるじゃないですか?

あっ…いやっ…確かにそれはそうなんですが…と言って言葉に詰まる。

涼は内心、んなことできないのはわかってるけどなっ…と思っていた。
丘野真一が、あの土地を担保にすでに銀行から借り入れしているの涼は知っていた。
あの土地をできるだけ高く買ってくれる人を探して、銀行に相談して、売買契約の内容を持って、借金の返済に充てたいというのが、丘野真一の本音だということは、百も承知だった。
それが出来なければ、あの土地だけでなく、自分の家も一緒に差し押さえられて、行き場を無くしてしまうのは目に見えている。

もう一度、よくあの土地の取り扱いについて、熟考なさった方がいいと思います。
それに、私はすでに十分な不動産を抱えていまして、全て運用益を出していますので、今からまた新規に投資して、時間をかけて回収するいったことを行うつもりはないのです。

当然、あの土地が、すぐに買い手の見つかりそうな物件であれば、安く買っても良かったのですが、先ほど申し上げたように、買い手が現れるまでには、まだそれなりの時間を要しますから、今回はご遠慮させていただきます。
と言って丁寧に頭を下げた。

丘野真一は、わ…わかりました…と残念そうに言って、帰ろうと背を向けた時、急に振り返って、あの渋谷さんのおっしゃる運用益ってどの程度の収入になるのですか?と聞いてきた。

涼は笑って、申し訳ありませんが、私の個人情報になりますので、お答えしかねますと言って返答を断った。
すると、次に丘野真一は、渋谷さんってご結婚はされているんですよね?と。

涼は、一緒、なぜそんなことを聞いてくるのか?と思ったが、すぐに紗奈美の話を思い出して、即答を控え、私が既婚か独身かということになぜ興味を持たれるのですか?と聞いてみた。

いや、たまたま偶然なのですが、この市役所に、私の妹が働いていたようで…。

涼は、自然に驚いたように見せて、エッ?丘野さん?総務課の丘野さんですか?と聞いて見ると、
そうです!そうです!丘野紗奈美です。
アレは、私の妹でして…あまり出来が良くないのですが、見た目だけは、まぁまぁ見れた方なので…。

そうですね。見た目だけじゃなく、まだ働き出して間もないですが、優秀ない人材だと耳に入ってきますよ。

へぇぇぇ!そうなんですね。まぁ今まで散々、家には迷惑をかけてきた存在ですから!と言って、とても申し訳無さそうな表情を浮かべた。
実の妹をまぁこうまで卑下できるものだな…と、涼は、呆れていた。

で、何かその妹さんがどうかされたんですか?と聞くと。

いや、もし渋谷さんがお一人身なら、その出来損ないの妹をもらっていただければ、我が家も安泰と思いまして…と言って笑った。

涼は、キョトンとした顔をして、ん?どういうことですかか?と聞くと、

いやいや、深い意味はありません!と言って笑っている。
涼は、真一が渋谷と紗奈美が結婚すれば、紗奈美を通じて、資金を融資させろと迫るつもりなのだろうと思った。過去にそうして自分の嫁の実家からも融資を受けた過去を紗奈美から聞いていたからだ。

涼は、でもそんな出来の悪い妹さんをどうですか?っておっしゃるのも理解し難いのですが…。
と言うと…。今度は、焦って…

いや、出来が悪いと言いますが、以前はあまり良くなかったのですが、自立して自分で生活するようになってからは、かなりまともになったようですので、大丈夫だと思いますよ💦と訳の分からない理屈をこねている。

涼は、これ以上、何かを言ったところでめんどくさいだけだと思って、ちなみに私にはちゃんとしたパートナーがいますし、土地の売買の件につきましてもお断りしますので、別の不動産屋さんなどを当たってみてください。じゃあ仕事に戻りますので…と言って、席を立った。

丘野真一は、車に乗り込むと、大きなため息をついた後、チッと舌打ちをした。
クソッ❗️…こんなはずじゃなかったのに…
なぜこうも全てうまくいかないんだ⁉️
どうにかしないと…と言って、その後に出る言葉を飲み込んだ。
倒産してしまうという言葉を…。

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