見出し画像

第二の人生80

涼!親父から連絡があって、岸田さんのところに丘野泰三と真一が2人、雁首揃えて、お前に圧力をかけてくれってお願いしに来たそうだぞ!と、電話でいきなり捲し立てた。

のは、東郷甚八…涼の小学校、中学校の時からの同級生だ。東郷甚八は、東郷兼顕の長男で、今は東郷兼顕の秘書をしている。

涼は、笑って、やっぱそう動いたか?と応えた。

東郷甚八は、幼少の頃から父の後ろ盾もあって、周囲に威張り散らし、自分を特別ない存在だと勘違いしていたドラ息子だった。
父が国会議員であることをいいことに、二言目には、親父に言いつけるからな!と言ってわがまま放題に育った。
その上、体格も良く腕っぷしも強かったため、周囲を威嚇して回っていた。
そんな中で、全く甚八のことを気にせず、真っ向から腕力と口で押さえつけたのが渋谷涼だった。
元々直接的な繋がりのなかった2人だったが、中学一年生の時、涼の友達が甚八からいじめられて、持っていたお金、五千円をカツアゲされた。これを聞いた涼が激怒して甚八を呼び出して、甚八をケンカでボコボコにした。
それだけならまだしも、ボコボコにして歩けなくなった甚八を涼は背負って、甚八の家を訪れた。
顔を腫らして鼻血を垂らし、制服は破れ、ボロ雑巾のようになった甚八を見て驚いた使用人らしき者が慌てて、たまたま家にいた父親の兼顕を連れて玄関に出て来た。
その兼顕に向かって涼は、
親父さんがどんなに偉いのか知らんけど、あんたの息子は二言目には親父に言いつけるぞと言って、周囲に言いたい放題わがままを言って困らせている。
それをいい事に、自分より弱いと見ると脅して、今回は俺の友達をいじめて脅して五千円を巻き上げやがった。
男として、コイツは最低なことをやったから、俺がボコボコにしてやった。
親父さんよ…親なら責任取って、コイツの代わりに五千円返してくれ‼️と。
更に、コイツをどんな風に教育してんのか知らんけど、男なら弱いもんいじめなんかさせんなよ。わがままばっか言いやがって、周りに迷惑ばっかかけて、自分がどれほどのもんかも知らずに情けねぇ真似ばっかさせんじゃねーよ…と。

同時、衆議院議員になったばかりの兼顕は、涼を自宅に招き入れ、すぐに担任の先生を呼び出した。その間に涼から息子の学校でのなりふりを聞かされ、申し訳なかったと涼に頭を下げた。
すると、謝るんなら俺じゃなくて、息子にいじめられた俺の友達に謝ってくれと言った。俺は、息子の性根を懲らしめてやっただけだ‼️と…。

その後、兼顕は担任の先生から我が息子の学校での話しを聞き、自分に気を使うことなく息子の悪について、全て報告してもらうようにお願いした。が、その場にいた涼から、大体からしてここに学校の先生を呼びつけること自体が間違ってんだよ。我が息子の醜態を知って、それを確認したいのなら我がが学校に出向いて聞く聞くべきだろ?
だから、自分が言ったら、周りの人間は言うことを何でも聞くってバカ息子が勘違いするんだよ‼️と言い放って、担任の先生を慌てさせた。
兼顕は、確かに渋谷君の言うとおりだ…先生…呼び出したりして申し訳ありませんでしたと、その場て頭を下げた。

この後、甚八は兼顕から、こっ酷く怒られ、この一件以降、大きな態度を取らなくなった上に、学校やそれまで散々いじめていた同級生や後輩にも断りを言って改心した。
そしてこれ以降、涼と友人として付き合うようになった。
そしてまた兼顕からも大いに気に入られ、兼顕に言わせると、未だ涼には頭が上がらないと甚八に笑って話すそうだ。

その後、甚八は涼の親友となり、何かつけて涼に相談して助言をもらい、時には兼顕でさえ、涼に相談するようになった。
株や不動産の投資についても、涼は甚八に情報を流して、その資金調達の手助けをしてやったりもして、東郷親子にとって涼は、絶対的な存在だった。

こういった関係もあり、丘野家のことを調べた涼は、紗奈美とのことが、丘野家の知るところになると、恐らくこう動くだろうことを予想して、甚八に相談。甚八は兼顕と兼顕の派閥に属している岸田にも話しを通して、先手を打っていたのだった。
紗奈美は、涼から話を聞いて、だから俺にも紗奈美にも一切害はないから安心していいよと言われ、安堵するとともに涼に感謝した。

一方、丘野泰三と真一は、絶望的な状況だった。
泰三の嫁、紗奈美の母、麗子は、紗奈美が大層優雅で贅沢な穏やかな生活を送っていると聞き、どうにかして紗奈美を利用して、取り込み、その富を我が物にできないかと考えたが、どう足掻いてもダメだった。
真一は、嫁と嫁の親に頭を下げて、追加の融資をお願いしたが、丘野家のこれまでの事業展開の失敗の数々から信用できないと言って、一切聞き入れることはなかった。
挙げ句の果てに、真一は離婚を言い渡され、嫁と息子は丘野家を去った。
そして泰三は、その言動がおかしくなり、病院で認知症と診断された。

そして、この年の暮れ、丘野は2度目の不渡りを出して倒産した。

紗奈美も一部の資金について、本人の知らないところで勝手に連帯保証人にされていて、負債が発覚したが、当時の紗奈美は、出版社に就職したばかりで、大した年収ではなかったため、多額の保証人にはなれず、200万円のみだったため、涼が肩代わりして一括で負債を解消した。
保証人の無効を訴えることもできたが、涼が手続きがめんどくさいからと言って、払って終わりにした。

その後、丘野泰三は認知症がひどくなり、施設に入所。
麗子と真一は、破産手続きをして、家も競売にかけられて追い出され、市営住宅に移り住んだ。
プライドが人一倍高い麗子は、自ら働くことを嫌がり、自らの境遇を紗奈美のせいにして、逆恨みし、涼の家の敷地内に無断で侵入…警備会社への通報によって警察に逮捕され、精神を病んで、泰三と同様に精神科の病院に収容された。
真一は、同業者のツテで就職し、細々と生活している。

涼は、丘野家のその後について、全てを把握していたが、紗奈美には多くを語らず、父母、兄共に、全てを失って今は、細々と人並みの生活をしているから、紗奈美にはこれ以上、害が及ぶことはない。だから安心して自分だけの人生を好きなように楽しむといいよ…と話した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?