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第二の人生54

山間の道を抜けると急に辺りが広がって、小さな盆地に小さな温泉街が現れた。
そこも一面雪景色で、昔は街道沿いの宿場町だったのだろう。昔ながらの建物を文化財として保存しており、静かな情緒ある街並みだった。
夏は、涼しい保養地、秋は紅葉が美しい観光地、冬は良質な温泉地として、観光客で賑わうが、年末年始となると、観光客で混雑しているという感じはしない。

その古い街並みの狭い車道をゆっくりと抜けて行くと、ある一軒の宿に到着した。
ここも、古くからの古民家を今風の和モダンに改装した作りになっていて、とてもおしゃれで落ち着きのある雰囲気だ。
駐車場に車を停めて下立つと、紗奈美は、わぁぁ!素敵❗️と声を上げた。
涼もいいなぁ❗️と声にだす。
ネットで見てイイなぁと思って予約したんだけど、ホントにイイ雰囲気だなぁ。

2人はキャリーバックを引いて、フロントに向かった。正面玄関に近づくと、すぐに中から女性の仲居さんが引き戸を開けてくれて、いらっしゃいませ。ようこそおいでくださいました。と丁寧に頭を下げてくれる。
涼は、渋谷で予約している者です。と答えると、その仲居さんは、今日から4泊の予定で予約されてらっしゃいます渋谷様ですね。本日は遠いところ、当館においでくださり、ありがとうございます。ご案内いたしますので、どうぞこちらへ。お引のお荷物は、お預かりいたしますと言って、他の仲居さんが横から頭を下げて、お預かりいたしますと、代わりにキャリーバックを引いてくれる。

涼は、フロントで几帳すると、お部屋は、予約時に承っております、露天風呂付きの離れですので、ご案内いたします。と言って案内してくれる。
涼と紗奈美は、仲居さんに案内されて、フロントのある建物から裏手へ抜けて、瓦屋根の通路を歩いてついて行く、中庭は、庭園になっていて、そこも綺麗な雪景色となっていた。

離れは、フロントのある建物から20メートルほど離れたところにあり、計8棟ほどの離れがあるようだ。その中のひとつの部屋へ案内された。鍵を開けて、中に入る。

ここでも2人して、わぁぁぁ❗️と感激の声をあげた。

玄関を入ってすぐがトイレと洗面所になっていて、その先の引き戸を開けると12畳ほどの板の間で真ん中に畳が8条ほど埋め込まれていて、その真ん中が掘り炬燵になっている。
その隣の部屋が寝室になって、キングかクィーンサイズほどのベッドが畳の部屋の中央に低目の位置に埋め込まれるように置かれてある。
枕元の壁は、大きな鏡が設置されていて、桜の花模様が施されてあり、部屋の広さを際立たせている。
寝室の隣が脱衣所と浴室になっていて、内風呂は檜風呂で、そこから直接外の岩の露天風呂に移動できるようになっている。
露天風呂は、板の間の方からも見えていて、外の中庭は、手前かウッドデッキになっていて、石のテーブルと椅子か備え付けられて、その奥は、芝生が敷き詰めてあるらしいが、今は一面、雪景色になっている。
室内は暖房が効いていて、床暖房も入っているため、暖かい。

案内してくれた女性が、改めて正座して、当館の女将をしております…と頭を深々と下げて挨拶してしてくれて、お気に召したでしょうかと問われ、素敵ですねと言って、ここなら、ゆっくりとくつろいで、癒されながら新年を迎えられます。4泊ですが、お世話になりますと頭を下げると、紗奈美もそれに倣う。

そう言っていだだけると当方も大変嬉しく思います。夜のお食事は、何時ごろにご用意いたしましょうか?と問われ、18時でお願いしますと答えると、承りました。と、その後、館内の大浴場やサウナ、非常口、各種サービスなどの説明を受けて、それではこれで失礼いたします。ごゆっくりお過ごしくださいませ…と言って出て行った。

2人は、はぁぁぁっと息をついて、炬燵でくつろいだ。
紗奈美は、立ち上がって、備え付けの茶道具で温かいお茶を入れてくれた。
ありがとうと言って、お茶を啜る。

紗奈美は、あなた…こんな素敵なところへ連れて来てくださって、しかもこのような場所で年越しなんて…本当に夢のようです。
私、とても幸せです。ありがとうございます。

涼は笑って、いやいや…これも俺の夢のにひとつだったんだよ。
静かな温泉宿で、何も考えずに、家事なんかも気にせず、ゆっくり風呂に浸かって、ゴロゴロしながらテレビ見て、年越しするって。
贅沢の極みだね。
でも、これをひとりでってなると、やっぱりちょっと寂しいしね、できれば好きな女と2人でってのか理想だったから、この夢の実現は、紗奈美が俺の側にいてくれるからこそ、叶ったわけで、俺もお前には感謝してるよ、ありがとう。

ハイ…もうそう言っていだだけるだけで…本当に幸せです。
あなた…お側に寄ってもいいですか?

笑…ん…おいで…。

紗奈美は、立ち上がって涼の隣りに座って、涼の胸に顔を埋めた。
涼も紗奈美を抱きしめて、互いに今の幸せを実感した。

涼と紗奈美は、ひとまず風呂に入ろうと、内湯ではなく、外の大浴場に入りに行った。

大浴場も室内と露天が直接行き来できるようになっていて、涼は、掛け湯をしてから、洗い場に座り、頭と身体を洗ってから、室内の浴槽に浸かり、その後、露天風呂に移動して、温泉を堪能した。すぐ目の前に高く聳える山々の雪景色がとても美しく、来てよかったと思う。

ひとしきり湯に浸かって上がると直接の入れるサウナに行き、5分を3セット、水風呂に浸かり整えた。

風呂から上がって部屋へ戻ると、紗奈美はすでに戻って来て、髪を乾かしていた。

どうだった風呂は?

ハイ、すっごい気持ち良かったです。
長湯し過ぎて、のぼせそうになりました(笑)
涼さんもゆっくりできたようで。

うん、サウナに入ってたから、戻ってくるのが遅くなった。待たせてごめんな。

いえ、大丈夫です。涼さんがサウナ好きって聞いていましたから、多分そうだろうと思っていました。

紗奈美は、サウナには行かなかったの?

私も5分だけ入って、水でスッキリしできましたよ。でも、長過ぎると疲れちゃうので…。

お客さん、多かった?男湯の方は、俺を含めて、4人ほどいたかなぁ。

女湯の方は、もっといましたよ。私以外に6ほどいらしてました。
50?60代ほどの年配の方が多かったです。

あぁ、男の方も、それぐらいの年代の人ばっかりだったね。

皆さん、ここで年越しなんでしょうね。
そうだね。さっき仲居さんと会って、少し話したら、この時期に来るお客さんは、ほぼ毎年来る常連のお客様ばかりですって言ってたよ。

そうなんですね。涼さんも常連さんになるんじゃないですか?(笑)

いや、俺は、他にも紗奈美と一緒に行きたいところがあるから、次はまた違うところかなぁ(笑)

えぇぇ⁉️そんな…もう今から楽しみが過ぎます。

うん、そのために来年も頑張って仕事しよ(笑)

ハイ、私も頑張ります❗️

そこへ、玄関の呼び鈴がなった。
紗奈美が出ると、仲居さんが、お食事の準備をさせていただいてよろしいでしょうかと。
お願いしますと紗奈美何応えて、室内に通して、夕食の準備が始まった。

お風呂には、入られましたか?と聞かれ、大浴場に行ったこと、露天、サウナに入り、その良さを話すと、喜んでいただけて安心しました。と。

全ての料理が運ばれ、準備が整い、料理の説明を受けて、それでは失礼いたしますと仲居さんが出て行く。紗奈美は、それを見送り、鍵を閉めて戻ってきた。

2人で料理の数々を眺めて、美味しそう!すごいねー!と感嘆し合い、いただきますをして、料理に手を付けていった。

初日は、カニ尽くしにして、中でもカニしゃぶが絶品だった。
最後はカニ雑炊でシメて、ごちそうさまをする。
お腹いっぱいだねと言って、紗奈美は、この年末年始で、絶対に太ってしまいます💦と嘆くと、年末年始は、太るもんだよ。
この連休中は、体重のことなんか一切考えずに、好きなものを好きなだけ食べようと言うと、ハイ!そうします!
だから、お腹がポコっと出ても、突っ込まないでください💦とお願いしてくる。
涼は、絶対、俺も人のこと言えないような腹になっちゃうから大丈夫と言って笑った。

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