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お望月さん/かせいさん対談記事

「もしお近くにいるのでしたら、お話しませんか?」

きっかけは偶然。妻に頼まれ稲城市立図書館に本を返しにきたとき。

自分も借りたい本があり、メモを見ようとスマホを開いたときについtwitterを眺めていると(悪い癖だ)、お望月さんのツイートが目に入る。

「図書館の位相に来ています」

前後のツイートを鑑みるに、どうやら稲城図書館にいる様子。以前から私はお望月さんが多摩地区近郊、おそらくは高幡不動近くに在住していると予測を立てていたが、ここに証拠は揃った。

千載一遇。少し緊張しながらお望月さんに上記のDMを送る。

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「あの、ひょっとしてかせいさんですか?」

後ろから声をかけられ慌てて振り向くと、ゴルゴ説を取るならば確かにこのくらいであろう、大学を出てすぐくらいの女性が立っていた。(お望月さんの年齢、性別は諸説ある)

私がかせいさんである旨を話し、挨拶をしようとした直後、本を押し付けられた。

「ああ良かった。頼まれたんです。かせいさんにこの本を渡せと」

渡された本は、稲城市立図書館の分類シールが貼られた「海の祭礼」という文庫本だった。表紙には「216ページ4行目」と書かれた付箋が貼られている。

『これよりお奉行所のご指図にしたがい、アンゲリア語の稽古をおこなう。心して励むように』

アンゲリア語とは。顔を上げると女性はもういない。

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稲城市立図書館にはシュロスベルグという大仰な名前のカフェが併設されている。

「アンゲリアってラテン語でイギリスのことなんですよ。あとシュロスベルグはドイツ語で『白山』。図書館がある地域の名前ですね」

女性の店員はふふっと笑いながら、不意に話しだす。驚き店員を見ると名札には「望月」。

慌ててアンゲリアのことやお望月さんであるかを問いただすが、店員はもういない。

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普段以上に静かになった図書館で、海の祭礼を読みながらコーヒーを飲み終える。

ふと、ソーサーでカップに蓋をして裏返す。トルコでは底に溜まったコーヒー滓をソーサーに広げて模様で占いをする。稲城はトルコにちかいので興味深い結果が出るだろう。

結果は「トマト」。お望月さんだから当然か。

「アンゲリア語はオランダ語訛りが強く、じっさいの英語とはだいぶ位相が異なっていたらしいですね。わたしのtwitterとかせいさんのtwitterのようなものなのではないでしょうか」

トマトの形のコーヒー滓がそんなことをつらつらと話しだす。位相が近づいてきたようだ。

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ドカベン魔界編のこと、進撃の巨人のこと、榎本俊二の漫画のこと。コーヒー滓のお望月さんと話すうちに、外は暗くなってしまった。

ああ、だいぶ遅くなってしまった。家族が待っている。もう帰らねば。

お望月さんに別れをつげ、コーヒー滓を捨てる。

稲城の白山に浮かぶ、定まらない3つの金星と2つの月を眺めながら、家で待つ妻のことを考え、わたしは未来カーにまたがり帰路につく。

noteにはお望月さんが私との対談記事を上げてくれていることだろう。楽しみだ。

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