つらいことから書いてみようか
これも図書館にあった本。
作文に関しての本だった。
自分の言葉を文字にしてみようという内容で、まずはつらいことから書いてみよう、聞いてほしいことから書いてみようという内容だった。
なんかいいなと漠然と思った。楽しかったこと、嬉しかったことって、みんな一様に楽しい、嬉しいってなって、その人らしさが出てこないように思う。
つらいこと、辛かったことは誰かに聞いてほしいことだから、自然と文章が進むはずだ。昇進するかもしれないという話より、タンスに小指をぶつけてしまった話の方が人に話したくなる。
この本の中であった、骨折してしまった話なんて最高に良かった。
「骨折してしまって、つらかった。特に僕を骨折させてしまった子の顔を見るのがつらかった」
気持ちが痛いほど伝わる。この一文だけで小学生の彼と彼の友達の表情も声のトーンも浮かんでくる。文章が上手いとは思わないけれど、いい文章だなと思う。大人になったら、お金もあって自由にできることができて、折り合いをつけられるんだろうけど、子供はそんなことできないから、その子が失敗にちゃんと向き合わないといけなくて、当然気持ちを割り切って話すこともできなくて、気まずさが生まれてしまうんだよな。そんなことが自然と浮かんできた。
これは私の人間性による部分もあるのかもしれないけれど、人の成功談より失敗談の方が好きだ。
他人の不幸は密の味とか、ドイツ語のシャーデンフロイデとか、そういうのではなくて、ネガティブな人間にしか書けない文章ってのがあると思っている。
(自分の言葉で感情を書こうっていう本なのに、切り抜き動画貼ってるのどうなのって思うけど、めっちゃこれ好き。)
例えば太宰とかって、ああいう人生送ったからああいう文章かけるんじゃないかって思う。
”恥の多い生涯を送ってきました。”から始まる文章なんて、自身が人間の異物でことを思いながら生きないと書けないと思う。自身の心を吐露するような、自傷するような、あんな文章は私には書けない。
古典の名作でなくてもそうだ。
ネット小説やライトノベルでも、この作家歪んでんなって思わせるくらいの小説の方が面白い。
逆に、そうした作者の作品が世間の目に触れ、認められてきてしまうとどうもつまらなくなってしまうように思う。
(これは、マイナーな頃は尖っていたけれど有名になったら安定行動しかしなくなった芸人やYouTuberにも通ずるところがある)
人の人生を変えるような文章っていうのは、ポジティブな人間の感情からは生まれないと私は信じている。
人生の転機というのは失敗体験からしか来ないと思っているからだ。
転機、文字通り転がってしまわないと、考え方も人生も変わらない。成功したならそのまままっすぐいけばいいじゃないかと。成功体験を人生の転機と語るやつは、詐欺師に近いと思う。世の中の大体の成功は、成功すべくして成功しているのだから、転機なんて言葉は沿わない。
宝くじ当たったとかそういうのは転機になるかもしれないが。(私は宝くじで人生逆転することは失敗だと思うけどね)
仕様もない失敗の方が人生変えるにふさわしいと思う。遅刻して学校いけなくなったとか、仕事ミスって閑職に追いやられたとか、浮気して孤独になったとか。そんな話の方が、全国大会優勝者のスピーチより糧になるはず。
変わりたいって気持ちは自殺だよね、っていうくらいに、死にたくなるくらい自分を嫌いにならないと、人は変われない。自分の嫌い、辛いを書くことで、自問自答ができるんじゃないかと思う。
つらいことから書いてみようか。
嫌いな自分を書いてみようか。
恥の多い人生をおくってる私には、自慢話書くよりも何倍もいいかもしれない。
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