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オーストラリアの量子科学研究への取り組みについて

写真出展:Oleg GamulinskiyによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/gam-ol-2829280/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=3460328

 2019年2月22日に、オーストラリアの量子科学の現状についてのレポートが公開された。量子科学の最先端はどの国かと言うと、多くの人はアメリカを思い浮かべるだろうが、実際には中国とオーストラリアである。ではなぜオーストラリアが最先端なのか疑問に思う事だろう。本件についてオーストラリアの取り組みについて、レポートの重要部分をピックアップしながら説明することとしたい。

↓リンク先(Charting the Australian quantum landscape)https://iopscience.iop.org/article/10.1088/2058-9565/ab02b4

1.レポートの内容について
  ・オーストラリアは1980年代から量子科学に力を入れており、オーストラリア国立大学やクイーンズランド大学で盛んに量子工学研究がなされていた。また1990年代に入り、研究インフラが設立され、量子科学者同士の交流が生まれるなどして、大規模研究の基盤が構築された。2000年代には量子科学の高度研究センターの設立が提唱され、高度量子コンピューター技術センター、高度量子-原子光学センターが設立され、政府は4年間で2,400万ドルを投入した。
  ・2011年ごろには、90年代の研究の財産を活かして新たな高度研究機関が設立され、新たな研究分野も生まれ、博士課程修了者などの卒業生たちが研究をけん引するようになった。また、量子科学の応用研究もなされるようになり、量子コンピューターの研究がなされるようになった。国防省や民間企業も量子科学への資金援助を積極的に行うようになった。
  ・70以上の量子科学派生及びスタートアップの関係企業が世界にあり、そのうちの5つはオーストラリアに本拠を構えており、世界的に注目されている。マイクロソフトはシドニー大学の量子技術研究に何百万ドルも投資している。
  ・最大の成果は、研究結果ではなく、何よりも人材である。
  ・2018年には、量子科学者が初となる政治家への働きかけを行い、量子科学の未来についての会議を主催するなど、積極的な取り組みがなされている。

2.本レポートについての感想
  中規模国家の強みを見たといったというのが感想である。台湾が半導体で成功しているように、中規模国は或る程度モノカルチャー的な産業政策で成功しているが、これは特定の分野に集中して資源を投入することが可能だからである。
 日本はあらゆる分野に強みがあるため、予算の取り合いとなる場面があり、器用貧乏になってしまう。ノーベル賞などで話題になっても寄付金は集まらず、また、日本特有の悪しき平等文化により研究費で優遇されることもあまりない。選択と集中をし過ぎてはいけないが、力を分散しすぎてもいけない。特に、量子科学はその応用範囲が狭く、実用化も困難とみなされていたことから、日本ではそれほど優遇されてこなかったように思われる。NECのように一部で優れた研究をしていても、商用化の目途が立たずに断念したり、研究開発費の減税を受けるといった特典もほとんどなかったと思われる。たった数億を5、6年かけて投資するだけでも目覚ましい効果が出る。これを30年も継続していれば、成果が必ずと言っていいほど出るのであり、長期的な戦略がいかに重要かがわかる。
 科学の未来を予言することは不可能ではあるが、有望な分野を見出すことはそれほど困難ではない。やはり将来を見通す戦略が重要である。ここで、国粋主義を発揮して日本も続けとなってはならない。後発で差を埋めるのは困難であり、新しい分野を見逃してしまうことにもなりかねない。苦手分野がある場合には、同盟国や友好国で連携していくという知恵も必要だ。
 最近何かと話題になるクアッドは、主に安全保障上の観点から議論されるが、他の分野に協力範囲を広めていくことで、よりよいものにできる可能性がある。NATOも単なる軍事同盟ではなく、研究機関も持っており、各国が共同で防衛に資する研究を行っているのである。
 日本人に必要なのは、長期的な戦略と真の意味での謙虚さだ。一般国民は国粋主義を克服し、頭を下げて学ばせていただくという姿勢を身に着ける必要がある。
 最後に、今回は大まかな概要しかピックアップしておらず、個別具体の例は取り上げなかった。詳しいレポートも出ているため、後日ご紹介することとしたい。

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