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砕氷船で北極海を制する(ヘリテージ財団の記事)

 写真出展:Jaana PuschkeitによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/jmp71-10435/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=138924

 ヘリテージ財団は2021年6月18日に、アメリカ沿岸警備隊の砕氷船整備に関する記事を発表した。内容としては、北極海でロシアと中国に対抗するための政策提言となっている。日本では最近議論になっていないが、安全保障上の参考になると考えられることから、概要を紹介させていただく。

↓リンク先(U.S. Needs Icebreakers to Keep Up With China and Russia in Arctic)https://www.heritage.org/global-politics/commentary/us-needs-icebreakers-keep-china-and-russia-arctic

1.本記事の内容について
  ・バイデン大統領は、沿岸警備隊員学校の卒業式の演説で、北極海における沿岸警備隊の存在感が重要であると述べた。しかし、北極海でロシアや中国に対抗するのは、非常に困難である。
・北極海は天然資源の宝庫であり、レアアース、ガス、石油などが埋蔵されている。2020年7月現在で、13%の油田及び30%のガス田が発見されていないと見込まれている。従って、北極海の戦略的、経済的利益を活用するには、砕氷船が重要となる。しかし、1999年以降新しい砕氷船は建造されておらず、たった2隻しかない。1隻は耐用年数の30年を超過しており、もう1隻は電気火災で故障中であり、2021年8月まで活動できない。また、アラスカ北部の水域で活動させてすらいない。
・一方でロシアは、世界最大の砕氷船保有国であり、40隻以上保有している。アメリカの砕氷作業を代行することもあり、北極海での活動を積極化させている。中国は北極海に領海を有していないが、2隻の砕氷船で活動しており、原子力砕氷船を建造している。
・トランプ政権は、6隻の巡視用砕氷船建造に予算を配分しており、1隻目が2024年に入水する計画となっていた。アイデン政権は、新しい巡視船建造に1,700万ドルの予算を要求しており、北極海の巡視用砕氷船に優先的に配分している。
 現在の沿岸警備隊は古い巡視船の維持管理のために、年間150万ドルも費やしており、早期に新しい巡視用砕氷船を導入することで、ランニングコストを抑制することが可能となる。6隻揃わなければ、ロシア及び中国に対抗することは困難であることから、早期の配備を望むものである。

2.本記事読後の感想
  なかなか注目されていないが、砕氷船の重要性がわかる記事である。ロシアが活動しているのは理解できるが、中国はやはり侮れない。原子力砕氷船ができてしまうと、ディーゼル船では到底対抗し得ないため、装備の面で対抗していかなくてはならない。尖閣の問題も同様で、海警局に対抗するには海保の船舶を強化する必要がある。
また、一時期北極海航路が話題になっていたが、このことにも影響がありそうである。北極海航路が実現すれば、ヨーロッパからアジアへの距離が短縮され、スエズ運河のボトルネックを解消することができると期待されている。
  しかし、私は個人的に北極海航路の実現可能性はあまりないと思っている。むしろ、ロシアのプロパガンダによる情報操作で過剰に期待が高まっているだけだろう。ロシアの原潜がうろうろするルートが安全なわけがなく、冬季における航路のメンテナンスといった点においても、コストパフォーマンスが悪そうである。
  ただ、中国へのけん制と言う意味では使い勝手があるかもしれない。中国がマラッカ海峡などに手を出してきており、代替航路がなければアジア経済は、中国に命運を握られることになってしまう。ロシアは中国に国境線を侵犯されており、内心では中国を何とかけん制しなくてはならないと考えているはずである。一定程度ロシアを取り込むことで、中国の海洋進出活動による影響をある程度軽減することができるだろう。
  この辺りの大きな戦略図を誰かに描いていただきたいのだが、日本にはその担い手がほとんど見当たらない。NSCに期待したいが、どうだろうか。

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