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再生可能エネルギーのライフサイクル(2)(ヘリテージ財団の報告書)

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本記事は、再生可能エネルギーのライフサイクル(1)(ヘリテージ財団の報告書)の続編である。前回の記事は、以下のリンクを参照。

② 風力発電
 ・アメリカにおける風力エネルギーは、2011年の40GWhから2020年には118GWh以上に達している。一般的に風力発電機は、3つの明確な部品であるタワー、エンジン室、風車羽から構成されている。一般には金属により建設されるタワーは、約295フィート(約90m)の高さがあり、重量は1万9000ポンド(約8.62t)程度である。ギアと主要な駆動軸を有するエンジン室は、ファイバーグラスで覆われており、重量は約2万2000ポンド(約10t)である。典型的な風車羽は、中空構造のファイバーグラスから構成されているが、軽量の木材及びアルミから作られている実験的な羽もある。羽は約50フィート(約15.2m)の長さであり、重量は約2500ポンド(約1.13t)である。タワーの基礎部には、エネルギーを電力に変換する電力箱が設置されており、地下パイプ経由で近場にある他のタービンや変電所に接続されている。洋上風力発電機はより大型であり、直径623フィート(約190m)の風車羽を持つ高さ410フィート(約125m)のタワーになっている。
 風力発電機の平均的な寿命は、継続的なメンテナンス及び発電機の寿命を延長する維持管理を行ったとしても、機械及び構造的な部品の劣化に伴う更新が必要となる約20年程度である。(例えば、一般的なギアボックスは、8年から10年に1度更新が必要である。)
 一部の部品はリサイクル可能であるが、樹脂とファイバーグラスから作られる風車羽そのものは容易にリサイクルできず、ほとんどは埋め立て処分となる。最近GEがセメント生産のため、風車羽のリサイクル取引を開始すると発表したが、この技術がどれだけ早期に展開されることになるのかは不透明である。
 アメリカの埋め立て地のほとんどは、技術の進展に伴い極端に大きくなった風車羽を処理することができず、その他の困難も伴う。まず風車羽の運搬は困難であり、3台のセミトラックに積み込むためには、個々の羽は高額な特別な設備を活用して、3分割しなくてはならない。数多くの風車羽切断の実績を有する2つの処分場は、アイオワ州とワイオミング州にあるが、その処分について苦戦している。アメリカでは今後4年間で、少なくとも毎年8000枚の風車羽が寿命を迎えると予測されており、廃棄物の処分は大きな問題になっていくと考えられる。
 全米ローレンスバークレイ研究所の研究員による最近の研究によると、10年経過した風力発電機の発電効率の大幅な下落が認められており、風力発電税控除(PTC)の失効年限と合致している。この研究は、メンテンナンスコストを抑制してくれるPTCの期限が切れると、定期的なメンテナンスがなされなくなる可能性を示唆している。もしこの事実を考慮すると、風力発電機は予想よりも寿命が短くなる可能性があり、今後数年において、処分される発電機の両が増大する結果になるだろう。
 発電機の処分は有害物質ほどの環境悪化を伴わないが、大量の廃棄物が埋め立て地及び処分作業を圧迫することになり、廃棄物の搬出作業の煩雑さは、風力発電にマイナスの環境的側面を付加することになるだろう。
 風力発電設備の途上国への輸出市場は活況を呈しており、ヨーロッパやアメリカからの多くの風力発電機はラテンアメリカ、アフリカ、一部のアジア諸国に輸出されている。これはクリーンエネルギーを支援する慈善的な行為に見えるが、西洋諸国のような処分管理の習慣がない国々に耐用年数間近の風力発電を販売しているのが実態であり、世界的な環境問題をさらに悪化させることにしかなっていない。

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