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COVAXを越えて:官民連携による発展途上国へのワクチン分配(2)(CSISの記事)

今回の記事は、COVAXを越えて:官民連携による発展途上国へのワクチン分配(1)(CSISの記事)の続編である。前回の記事は、以下のリンクを参照。

1.記事の内容(2)について
 ・COVAXの枠組みだけでは、現在のワクチン配分や配送の問題に十分に対処できないことから、更なる官民パートナーシップを推進する必要がある。具体的には以下の取組が必要である。

 ① アメリカ政府、COVAX、多国間コミュニティ、ワクチン受領国は、民間企業が提供する資源、技術、解決策を大いに活用するべきである。特に国際開発庁の発展途上国における、マイクロプランニングの取組と組み合わせた地理情報システム、データなどの情報を提供することにより、更に民間企業の運営を支援することができる。
 ② アメリカ政府は、世界銀行などの国際組織と連携し、中小所得国のワクチン生産能力や配送インフラを強化し、長期的な視点で支援していくべきである。
 ③ 民間企業の疲弊に配慮するべきである。利益の観点だけではなく、公益に資するよう促すべきであり、グーグルなどの巨大技術企業のネットワークや情報などの資源をパンデミック抑制に有効活用するべきである。
 ④ 中小の民間企業が継続的にパンデミックに対処できるよう、インセンティブを与え、強化するべきである。またグローバル企業が世界各国の民間企業との連携を支援するよう促し、既存の仕組みを機動的に活用できるようにするべきである。
 ⑤ 政府はワクチン供給・配送に強い影響力を持つ企業と契約を締結し、直接的に取り組むべきである。既存の取組の例としては、商工会議所のパンデミック対応グローバル作業部会があり、南アジアでワクチン接種事業を展開している。
 ⑥ 政府は、途上国の既存のコールドチェーンや配送システムを強化するため、民間企業に投資するべきである。例えば運搬可能な冷凍庫の大量整備により、中核都市から地方へのワクチン接種会場の移動が可能になるだろう。
 ⑦ 官民パートナーシップは、各国の衛生当局との連携を強めるべきである。特に、迅速かつ小口でのワクチン配送システムを構築し、小規模での運営が可能となるよう支援するべきである。
 ⑧ ワクチン接種事業に関する優良事例、ガイダンス、ツールについて迅速に情報共有を図るべきである。一つの例として、ラスト数マイルプロジェクトがあり、これはコカ・コーラのサプライチェーンを利用し、結核、エイズ、マラリアなどのワクチンをアフリカで配送する事業を行っている。
 ⑨ 民間企業のマーケティング、宣伝、顧客対応を最大限活用するべきである。特にワクチン忌避に関する認識の改善は重要である。
 ・パンデミックは今後も発生する可能性があり、既存のモデルだけでは対応しきれない。アメリカ政府及び多国間の組織は、新たなパートナーを見出し、地方の組織を支援する新しいモデルを構築するべきである。また政府の改革も必要であり、官民パートナーシップの部門間をまたがる案件への適切かつ柔軟な予算配賦、包括的かつ統一的な生産者、民間企業、各省庁の体制などの構築が可能となるよう尽力するべきである。

2.記事読後の感想について
  ワクチンの配布については、様々なことが言われているが、日本がいかに恵まれているかが良く分かるだろう。むしろ日本は途上国の分まで買い占めているとすら言える水準であり、予約ができないと騒いでいる人々はあまりにも不見識だと感じる。パンデミックは日本がワクチン接種済みとなっても解決しないのであり、各国がバランスよくワクチンを接種することで解決していくということを認識している必要がある。
現在の状況を整理すると、アルファ株の蔓延があった際には、アジア地域は感染者が少なかったことから、結果としてワクチン配布が遅れることになった。そして、デルタ株の蔓延によりアジア地域の被害が拡大することになり、ワクチン配布の遅れが叫ばれるようになったのである。
  アジアは世界のサプライチェーンにとって必要不可欠な地域であり、日用品から半導体まで、様々な物品に影響を与える。アジア地域の感染拡大は世界に影響を与えるのであり、例えば3月の感染拡大に伴うインドからの薬品輸出制限は、ワクチン配布に多大な影響を与えた。今後も継続的に感染拡大することが見込まれており、ワクチン接種率が高いシンガポールでもなかなか感染者数が下火になっていない。この地域には民主的ではない国家が多いことから、集団免疫的な放置戦略というのもあり得るが、早期にパンデミックが収束しなければ、今後数年に渡り製品の供給不足や価格の高騰などの問題が発生することになる。日本が支援するべきことは多々あるだろう。
  またSARSやMARSのように、10年程度に1度大規模なパンデミックにも見舞われていることも考えると、アジア地域の医療体制の拡充やワクチン接種体制などの整備も支援する必要がある。パンデミックは世界的な事象であり、広く俯瞰したものの見方をしなければならない。多少自国の犠牲が増えたとしても、大局観をもって対応するべきことはあるのであり、自己利益ばかりを考えるとかえって損をしてしまう可能性すらある。台湾へのワクチン供給はその一例であり、こういった取り組みを今後も拡大していくことが重要になるだろう。
  
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