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コロナウィルスの起源に関する調査報告書について(3)(NICの発表)

本記事は、コロナウィルスの起源に関する調査報告書について(1)及び(2)(NICの発表)の続編である。前回までの記事は、以下の記事を参照。

2.本報告書事読後の感想
  残念ながら期待に反してあまり深い内容ではないというのが、正直な感想である。もっとも最初から期待はしていなかったが、その水準すら下回っている。機密解除扱いとはなっているが、実際には機密情報らしきものはほとんど含まれていないと思われ、メディアで報じられている内容とほぼ変わらない。収集できた情報についても公開情報で取得できるものが大半を占めており、非公開情報はほとんど取得できていない、ないしは、その対象の範囲も十分に確定できているわけではないようだ。
 では、これはアメリカのインテリジェンスの低さを示すものなのかというと、そう単純な話ではない。自国内の事件ではないこと、もともと中国の情報管理があまり十分ではないこと、コロナウィルスの起源が非常に複雑であることなど、複合的な要因が積み重なったものであり、結論を出すに至らなかったとしても仕方がないと考えられる。
 こういう結論になると、本報告書は全く意味がないものなのではないかという意見を言う人がいるかもしれないが、これは間違っていると思われる。起源に関する説を確定するためにはどのような情報が必要であるのか、科学的に検証可能な範囲は何かといったことが良く分かる内容にはなっており、この点においてまとめとして見る分には有用ではある。特に記録にとどめておくべき点は、以下の項目であろう。

・SARS-CoV-2に最も近い種は、RaTG13というコウモリのコロナウィルスであるが、その一致率は96%程度でしかなく、これを直近の祖と確定することはできない。(ヒトとチンパンジーの遺伝子が約99%一致していることを考えると、かなりの差異があると言える。)
・ウィルスは変異を繰り返すため、あらゆる特徴が自然発生により説明が可能になってしまう。一部の研究で確定的とされた事項でさえも、自然発生でも生じ得ることが証明されるなど、人為的な遺伝子操作と特定することが困難である。
・中国が情報を隠蔽している、調査を妨害している可能性があることは明確である。武漢ウィルス研究所や武漢市の市場に関する十分な情報が入手できなければ、これ以上結論を出すことは不可能である。

 総括的な結論としては、ウィルスの起源を確定することそれ自体が非常に困難な作業であり、現在の科学では実質的に不可能であること、人間への感染から起源を探ることが時系列的、場所的にも困難であること、ウィルスの変異がいつ何時発生するのかがわからず、人為的か否かを確定できないないこと、その他周辺の科学的な情報が不足していることなどから、確定評価を下せないといった所だろう。
 では今後の展開として、新しい情報が出てこれば確定できるのかということについては、見込みが薄いと思わざるを得ない。ウィルスの変異株は多種多様であり、ある変化が自然発生か否かを決定づけるのは困難な問題であり続けるだろう。ただ、中国がエンデミックの対処に失敗したという有力な証拠にはなりえるため、国際社会の世論喚起や中国を批判する材料として続報を期待することとしたい。

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