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計算資源と説明責任について(Tech Policy Press記事)

写真出展:David MarkによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/12019-12019/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=79578

 2022年11月30日にTech Policy Pressは、スーパーコンピューターなどの巨大な計算資源の説明責任に関する記事を発表した。内容は、巨大な計算資源の状況や運用に際しての基準、他の分野と比較して求められるべき要件などを概観するものである。本件はまだまだ手探りの分野であり、確立されたプロトコルがなく、今後どのような方向性で検討されるかのヒントになると考えられることから、参考として概要を紹介させていただく。

↓リンク先(Compute Accounting Principles Can Help Reduce AI Risks)
https://techpolicy.press/compute-accounting-principles-can-help-reduce-ai-risks/

1.本記事の内容について
 ・コンピューターの計算能力は、AIの機械学習などに必要不可欠な能力である。ここ10年で巨大なニューラルネットワークが構築され、深層学習の時代が到来したのであり、AI開発者だけでなく、政治家、学界、民間企業などにも利用されるようになった。このような状況下においては、巨大な計算資源に関して何らかの基準が設けられるべき時が来たとも言えるだろう。
 ・計算資源に関する基準が設けられるべき理由は2つある。第一に、組織が優良事例に基づいて計算資源に割く予算を決定することを支援し、第二に、AIの技術が経済のあらゆる分野において責任をもって活用されることを保証するためである。その他、計算資源が標準化されれば、企業の経営陣が法令に基づいた組織内での計算資源の分配や活用を考慮することが容易となり、他の交錯する部門との経営判断における比較考量の基準にもなっていくだろう。
 ・AWS、グーグルクラウド、マイクロソフトアズールは、利用者が計算資源がどのように使われているのかを追跡できるツールを提供している。しかしこれらは企業の独自サービスに留まっており、産業共通の基準は存在していない。この状況を金融、エネルギー、工場などの生産部門と比較すると、計算資源そのものについての情報が少なく、法令の遵守や会計監査の基準も設定することができず、その適正なあり方についての判断も困難である。
 ・基準策定に向けて取り組むべき事項は以下の通りである。
① 企業にとって有用なツールの提供
中小企業は開発能力が高くないことから、公開されている有用なツールを利用することで新規開発への敷居を低くすることができる。また標準化された報告書があれば、消費者側も容易に計算資源の利用状況を確認することができ、同業他社とも比較が可能となる。

 ② 環境負荷に関する情報提供
計算資源は多くのエネルギーを必要とすることから、どれだけの環境負荷を与えるのかを正確に把握するための基準が求められている。AI開発者は機械学習に要した時間やエネルギー源を十分に公開しているとは言えないことから、開発環境に使用された電力の内訳を明確にするための手段を考案する必要がある。

 ③ 重要な計算資源に関する情報提供
現在利用されているスーパーコンピューターなどの計算資源が、どのように利用されているのかについての情報公開が重要である。関連産業が利用可否について検討する際の根拠となるのみならず、政策決定者がAI研究にどの程度の資源を割くことができるのかを明確にすることができるようになる。また利用状況の不均衡是正にも資することにもなるだろう。

 ④ 規模に関するリスク
   規模の拡大に伴うリスク評価も重要である。小規模であれば問題にならないことであっても、大規模になると現在展開されているサービスやモデルに対する影響も大きくなることから、安全対策やテストに際しての要件設定なども重要になる。
  
2.本記事読後の感想
  巨大な計算資源はビジネスとして重要ではあるが、同時に兵器に匹敵する能力でもあり、その利用状況についてはある程度透明性が求められる。暗号通貨のマイニングに利用しているという程度ならかわいいものだが、兵器開発やハッキングなどに利用されているというのであれば、大きな懸念事項になるだろう。最もそのような利用状況について公開するとは思えず、たとえトラッキングツールなどが標準化されたとしても、各企業や所有者の情報公開の範囲設定の領域に留まる懸念はある。計算資源の説明責任に関する取り組みはまだ手探りの状況であり、今後関心が高まって来るだろう。
  ただ本文では二酸化炭素排出量とニューラルネットワークの関係について基準が必要であるといった趣旨の議論があり、こんな所でも温室効果ガス排出削減なのかとは思わされてしまう。西側諸国の左翼的価値観に任せていると、日本にとって不利なルールを押し付けられることになる。先駆者があまりいない中で先行して価値観を提示していくことが、日本の国益にかなることになるだろう。

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