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サイバー外交を成功させるには(CSCの記事)

写真出展:David MarkによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/12019-12019/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=83519

 2021年8月25日にサイバー空間ソラリウム委員会は、サイバー外交を成功させるための提言に関する記事を紹介した。内容は、国務省の組織体制などについて考察するものである。日本では外務省がサイバー外交で役割を果たすことはあまり期待できないが、サイバーを基軸とした外交を展開することの問題点を明確にする優良な記事であることから、その概要を紹介させていただく。

↓リンク先(THE RIGHT WAY TO STRUCTURE CYBER DIPLOMACY)
https://warontherocks.com/2021/08/the-right-way-to-structure-cyber-diplomacy/

1.記事の内容について
  ・国務省は、技術により急激に変化する国際社会にいかに対処するかという課題に直面している。しかし国務省の組織は、このような状況に対処するよう構築されておらず、多くの有識者もこのことを懸念している。ポンペオ前国務長官が提案したサイバー空間セキュリティ及び新興技術事務室は、安全保障に特化しすぎており、新しい国務次官の下で新たな組織を創設するよう提言する有識者もいる。
  ・ただ、新たな統合的部署の創設は必ずしも有効な解決策ではない。厳密には、サイバー空間政策と新興技術の問題は異なっており、サイバー外交法案で提案された国際サイバー空間政策室を創設するべきである。サイバー外交に特化した部署により一貫した外交を展開しつつ、新興技術については他のふさわしい部署に任せるべきである。
  ・サイバー空間の重要性は2000年代から認識されており、戦略資産であるだけでなく、紛争の領域にもなり、国際的な合意が無ければ混乱の一途をたどることになる。2015年に国連政府間専門家パネルが、サイバー空間における国家の責任ある行動に関する規範について合意したが、国際法の適用については合意されなかった。2021年には国際法について一定の合意に達したが、それでもサイバー犯罪、重要インフラ、諜報活動などの概念については合意されなかった。国務省はこのような難題について取り組むべきである。
  ・国際サイバー空間政策室は、比較的確立された外交に注力するべきである。自由で開かれた、信頼ある安全なインターネットを推進し、権威主義的国家の台頭に対抗し、利害関係者による未来のサイバー空間のモデルを構築することが重要である。特に、途上国などの同調しない国家が権威主義的陣営に加わらないようにし、サイバー能力構築事業を提供することが重要な課題となる。その他、同盟国や友好国との共同でのサイバー攻撃への対処、国連などの国際組織での協調した投票行動、能力構築事業などの取り組みが重要課題となる。
・サイバー外交と新興技術が交差する分野についても取り組みが必要であるが、国内の各機関との調整が重要となる。技術分野は各機関にまたがっており、専門とする部署がすでに存在したり、比較的短期間の取り組みだけで十分対処可能な分野もあり、個別の取り扱いの調整が重要となる。従って、国務省の下で一元化しても問題の解決にはつながらないのである。
・国際サイバー空間政策室は、安全保障問題に特化しすぎてはならない。前政権が提唱したサイバー空間安全及び新興技術室は、データやエビデンスの提示ができておらず、他省庁との連携を欠いており、安全保障、経済、人権などの分野を調整する役割を十分担うことができないと指摘されていた。下院で可決したサイバー外交法は、国際サイバー空間政策室のトップに国務次官補級の大使を配置することとしており、国務長官、国務副長官に直接サイバー外交を報告する体制になっている。狭い領域に特化しすぎると専門部署の創設それ自体が回避される可能性もあり、中国への対抗だけでなく、経済や人権の側面も含めた総合的な役割を担うようにするべきである。
・ただ、国務省の組織改革は非常に困難を伴う。新たな部署や地位の設置には、国務省基本権限法の改正が必要となることから、サイバー外交法のように大使級の地位を設置するという提言は、当座をしのぐにはよい方法である。その他、サイバー外交には多様な課題が含まれており、どの権限を引き受けるのかについて慎重に調整する必要もある。例えばデジタル経済問題については、経済相務局との事務的調整が必要であり、e-コマースは他省庁との調整が必要になる。サイバー調整委員会は、各省庁の次官補級高官が個々の音大についての優先順位付けをする場となるだろう。


2.本記事についての感想
  日本では全くと言っていいほど話題にならない、サイバー外交についての記事である。クアッドの共同声明などで取り上げられることはあるが、個別具体の動きはあまり見えてこない。日本の実力では、指導的な立場を取ることはできず、せいぜいアメリカに追随するか、地域で小規模な支援事業を行うといったぐらいのことしかできないだろう。
  まずは国内体制の整備が重要であり、基本的なサイバー防衛の強化、民間企業によるサイバー防衛への投資促進、国民への広報が必要である。日本人はとかく安全、水、情報がタダだと思いがちであるが、これは当然に手に入るものではない。身の回りの防犯などを含め、セキュリティ意識を底上げしていくことが最も有効かつ確実な道になるだろう。
  その他、愚かな議論について耳を貸さないようにすることも必要である。大規模接種センターへの違法取材のような事態があった際、日本ではメディアを擁護する議論が出てくることそれ自体が異常であると認識するべきであり、安全保障やサイバーセキュリティについては議論がぶれないようにしていかなくてはならない。
  ただ、道のりは遠いように思われる。深刻なサイバー事件が起こってからでは間に合わないため、継続的な取り組みになることを期待したい。

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