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危険な賃金・労働時間部長の議会承認(ヘリテージ財団の記事)

写真出展:mohamed HassanによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/mohamed_hassan-5229782/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=6686755

 2022年1月13日にヘリテージ財団は、労働省の賃金・労働時間部長の議会承認に関する記事を発表した。内容は、オバマ政権時代に賃金・労働時間部長を務めたデビッド・ウェイルの再任が上院で承認されたことから、過去の経歴などの紹介とともに、今後予期される労働政策を概観するものである。組合重視の社会主義的な労働政策を推進したことで知られる同氏の再任は、バイデン政権の今後の労働政策の象徴であり、今後の展開を見据える上での参考になると考えられることから、その概要を紹介させていただく。

↓リンク先(How This Labor Department Nominee Threatens 59 Million Workers)
https://www.heritage.org/jobs-and-labor/commentary/how-labor-department-nominee-threatens-59-million-workers

1.本記事の内容について
 ・ある調査によると、5900万人のアメリカ人(3人に1人)が、2021年にフリーランスの仕事をした経験があるとされている。このうち9割の人々は、フリーランスの仕事に将来性があると考えており、55%のフリーランス労働者は、健康上の問題や家庭の状況などから、サラリーマンとしての労働が不可能であると回答している。
パンデミックにより柔軟で裁量の大きい労働への志向が強まり、2021年には、56%の非フリーランス労働者が将来フリーランス労働への移行を希望していると回答している。
 ・しかし、今回のデビッド・ウェイルの労働省の賃金・労働時間部長再任が上院で承認されることになり、この流れに水を差すことになりそうである。ウェイルはオバマ政権下においても賃金・労働時間部長を務めていたが、この時はフリーランスの労働者に不利となるような労働政策を推進してきた。バイデン政権が推進しようとしている労働政策は、巨大労働組合の陳情をかなえることである。
 ・ウェイルの承認は、社会主義的労働政策の始まりでしかない。労働者の個人情報や秘密投票の権利を奪い、組合に情報を把握できるようにしようとしている。その他、フランチャイズの規制、27州の労働権法制の停止、第2次ボイコット(非組合員に組合のストライキやボイコットに従わせる)の法制化などが予定されている。
・ウェイルはオバマ政権時代にもフランチャイズビジネスを攻撃してきた。彼の政策により、毎年度333億ドルもフランチャイズビジネスのコストが上昇し、37万6000名が失業し、フランチャイズ関係訴訟が93%も増加した。トランプ政権ではフランチャイズビジネスの規制が緩和され、現在は73万件の個人フランチャイズビジネス、40万名の労働者という規模となっている。39%の女性フランチャイズオーナーは、フランチャイズモデルが無ければ事業が維持できないとしている。
 ・ウェイルはオバマ政権時にも、残業手当の例外適用に関して越権行為に及んでおり、2016年に最高裁から議会の権限を超越した措置を講じたという判決を下されている。彼は政策の推進について遠慮するところはないと見られており、社会主義的労働政策が推進されることは疑いようがない。労働市場はパンデミックにより、裁量性や柔軟性がますます求められるようになっており、過去の労働組合主体の画一的な労働法制になじまなくなっている。このような現状下において、彼の再任は悪夢でしかない。

2.本記事読後の感想
  アメリカ人のたくましさが垣間見える記事だったと思う。日本ではフリーランスは、不安定、失敗しやすいと言った、負の側面が語られがちであり、利点についてもどちらかと言うと組織になじめない人の負け惜しみのようなものが多いように思われる。
  ただ、終身雇用や年功序列体制の崩壊が進んでおり、労働市場の流動化や副業解禁の流れなどにより、フリーランス労働は今後ますます注目されていくことになり、多様な働き方の主要な選択肢として政策の対象にもなっていくだろう。
  しかし、日本は労働規制の強さや税制などのため、サラリーマンが優遇されているという側面もあり、フリーランス労働の魅力が損なわれている。規制の恩恵を受けているのが正社員であり、特に労働組合に所属している社員や連合などの一部既得権益者である。またあおりを受けているのは契約社員や派遣社員であり、社員としての地位が低いために能力に見合った給与を受けられない。アメリカは規制緩和が行き過ぎていると言われているが、フリーランスを有効活用した中小企業の経営は、日本が見習うべき点も多いのではないだろうか。政府ができることは、できうる限り余計な規制をかけないことであり、適切な経済的自由を確保することである。今回のような記事の情報を通じて、日本人があるべきビジネス規制や労働市場の在り方を考えるようになってくれることを望むものである。

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