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マネーロンダリングには、環大西洋による連携で対処せよ(RUSIの記事)

写真出展:Darkmoon_ArtによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/darkmoon_art-1664300/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=5823325

 英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)が2021年8月25日に、イギリスとアメリカの連携によるマネーロンダリング防止政策に関する記事を発表した。この分野については何度か記事にしているが、国際的な連携について取り扱った珍しい記事であることから、本記事の概要についてご紹介させていただく。

↓リンク先(Building the Basis of a Transatlantic Response to Illicit Finance)
https://rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/building-basis-transatlantic-response-illicit-finance

1.RUSIの記事について
 ・対金融犯罪組織である金融活動タスクフォース(FATF)の尽力にも関わらず、違法金融犯罪の課題はその重みを増している。違法金融は犯罪の領域に留まらず、仮想通貨や汚職にまで発展している。中でもイギリスとアメリカは違法金融の中心地であり、地下経済を形成するのみならず、安全保障や民主主義の脅威にもなりえる状況である。
 ・この状況下で、RUSIは7月末に環太平洋違法金融対策タスクフォースの会合を開始し、アメリカ、イギリスの国内体制や違法金融に利用される金融制度などについて議論した。また、世界的な違法金融対策の失敗について着目を集めるため、イギリス・アメリカがどのように連携すべきであるのかを考察した。
・まず必要となることは、国内体制の強化である。
 ① 両国ともリーダー層の政治家が違法金融対策に取り組むべきである。イギリスの経済犯罪計画(ECP)は、国内体制の強化が国際レベルの違法金融対策強化につながるとしている。
 ② 弁護士、会計士、不動産管理士などの金融サービス従事者への監視を強化するべきであり、技術による支援も必要である。その他監視されていない業界にもより強力な措置を取るべきであり、同時に利益相反とならないよう監視者の権限を定めるべきである。
 ③ また両国は、違法金融の回避地となっている不動産、民間の資産へも注意を払うべきである。アメリカのスマート情報収集ツールの地理情報提供ツールを恒久的なものとするべきである。イギリスにおいては、この種のツールを導入し、インテリジェンスコミュニティを支援するべきである。
 ④ 私立学校や私立大学、市民権や居住権などの抜け穴についても、再検証が必要である。EUの新しい反マネーロンダリング規制では、投資家に居住の便宜を図る企業も監視対象にするよう提案されており、今後の規制に参考になるだろう。
 ⑤ イギリスは強力な規制を欠いており、体制の強化が急務である。民間企業の犯罪対策義務の強化も重要であり、各企業への犯罪対策の財政支援の導入なども検討するべきである。
・その他、国際的な議論を行うべきである。国際機関が違法金融に有効に対処できていない現状について率直に議論し、G7,G20などの場に広げていくべきである。また国士的な違法金融対策システムを再構築し、金融犯罪に貢献する要素を全て組み込んだものとしていくべきである。その他、国家間の情報共有を、違法金融対策の中核に据えるべきである。イギリス国内の情報共有体制は、ここ数年で改善しているものの、国際的な情報共有は進んでいない。このため、アメリカとイギリスは環太平洋で官民の情報共有協定を締結するべきである。この情報共有の取り組みには、インテリジェンスコミュニティだけでなく、幅広い民間企業も含めるべきである。
・イギリスとアメリカは違法金融対策の最前線にいる国である。他国は金融センターである両国の欠陥について批判しているが、このような事態を正当化しないよう、両国は先進的な取り組みを提示していかなくてはならない。

2.本記事についての感想
これまで何度か取り上げてきた、マネーロンダリング対策の記事の続編である。イギリスのロンドンは世界の金融センターであるが、意外と法体系がしっかりしておらず、イギリスだけで有効な取り締まりができていない。また金融犯罪は世界をまたがるものであり、各国の連携がなければなかなかうまく行かない。そこで、イギリスとアメリカの連携が有効になると言うわけである。
日本も香港の金融センターの役割を引き受けるような調子のいいことを言っていたが、マネーロンダリングを有効に取り締まることができなければ意味がない。大それたことを言うならば、それ以上の行動が必要になる。日本は自分の立場をわきまえ、まずは普通の国になる必要がある。安全は苦労して勝ち取るものであり、タダではない。政治や政府だけでなく、国民の意識改革から始めることが重要である。

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