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量子コンピューターの実現は近い(ハドソン研究所の記事)

写真出展:Gerd AltmannによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/geralt-9301/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=540253

ハドソン研究所の2021年6月7日に、量子コンピューターの実現についての記事を発表した。内容としては、量子コンピューターが予想よりも早く実現する可能性があり、対策を早める必要があると提言するものである。日本のことについても言及されているため、本記事を紹介させていただく。

↓リンク先(Q-Day Is Coming Sooner Than We Think)
https://www.hudson.org/research/16993-q-day-is-coming-sooner-than-we-think

1.記事の内容について
  ・暗号解読可能な4,000量子ビット以上の量子コンピューターの実現が現実のものになりつつある。現在のところ、グーグルのブリストルコーンは72量子ビットの能力しかなく、専門家や米国標準技術研究所(NIST)も実現まで10年以上必要であるとしているものの、油断してはならない。
  ・量子ゲート方式はなかなか進展していないが、量子アニーリング方式は成功していることが知られている。こちらは組み合わせ最適化問題に特化しており、暗号解読に用いることはできないと認識されているが、技術者たちがショアのアルゴリズムを回避しながら、素因数分解を最適化問題へ変換する方法を模索しており、ノイズ付量子ビットにより実現可能であることを証明する論文も出始めている。
  ・論文の一つは、中国人科学者によるものである。現在のコンピューターで素因巣分解可能な限度であるRSA-768の暗号を、ノイズ付量子ビット147,454個で解読できることを示した。これは量子ゲート方式の数値から見ればかなり低い水準ではあるが、アニーリング方式が到達できる数値である。グーグルとスウェーデン王立工科大学の共同研究では、RSA-2028の暗号をノイズ付量子ビット2,000万個活用して、8時間で解読できることが証明された。2012年当時は10憶個必要になると見込まれていたことを考えると、より少ないビット数で暗号解読が可能になることも十分考えられる。
  ・以上のことを考えると、量子コンピューターの実現はそう遠くない未来に起こるだろう。このため、ポスト量子暗号や量子暗号の準備を急ぐ必要がある。

2.本記事読後の感想
  量子アニーリング方式による組み合わせ最適化問題の成功についてはよく話題になるが、ノイズ付量子ビットの活用(量子誤り訂正符号や量子誤り抑制による)については、あまり日本語にもなっておらず、一般には知られていないと思われる。
  ノイズ付量子ビットを利用することには技術上の困難が伴うのだが、これほど早期に実用化の目途が立つとは思っていなかったため、大変な脅威となるだろう。現状の技術で対処可能なポスト量子暗号の整備が急務になる。NISTの基準発表などが2024年になると見込まれているが、候補となるアルゴリズムは15組にまで絞り込まれており、日本独自でも実験をするなど、本分野で先行するべきだろう。
  また量子コンピューターについて、日本はそれなりに優位性を持っているものの、政府や学会の支援は十分とは言えないだろう。また、研究の秘密を守る規則なども十分ではなく、折角の研究が生きてこない可能性もある。
  安全保障の枠組みを構築すると共に、10兆円ファンドなどをうまく活用して、早期の商用化に向けた政策を期待したい。

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