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中国の情報サプライチェーン分析(3)(ASPIの報告書)

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本記事は、中国の情報サプライチェーン分析(2)(ASPIの報告書)の続編である。前回までの記事は以下のリンクを参照。

 2.本記事読後の感想
  この事業は複数年に渡るもので、2019年から開始されている。アメリカ  の国務省が支援していると言う点でも興味深く、ファイブアイズ内での役割分担という側面もあるだろう。オーストラリアとニュージーランドは、英連邦内で中国大陸や朝鮮半島の情報収集を担当しているようで、意外と知らない情報が出てくることがある。日本も中国の情報分析には優れているが、親中派などの動きによって、このような内容の報告書を公開しているところはないと思われる。
 ただ、本報告書はページ数の割には、日本人にとっては薄味な感がある。これは、レベルがそれほど高くないというよりは、オーストラリア人の中国に対する理解度に合わせてわかりやすい内容に書いているということであり、決して日本に劣っているというわけではないと思われる。中国が情報を収集していることや情報を悪用していることについては、日本では周知の事実であり、その具体的な手法について再確認できるという点で本報告書は優れていると言える。
  具体的に学びとなった点は以下の通り。
 ① データ生態系の実態が具体的に把握できた点は良かった。中国のサ                                                 イトを利用すると情報を取られると不安がる方が多いが、実際のデータ生態系は非常に複雑であり、アメリカや日本のサービスを使っていてもデータを取られるルートが複数あり、データを守るのは非常に難しい。このような状況では、もはや一定程度のリスクを背負うのはやむを得ないと考え、普段から情報を分散して保存する、サービスを使い分けるといったことに取り組むしかないだろう。
 ② 中国の法律の条文をじっくり読む機会がなかったことから、新たな視点で中国を見ることができた点が良かった。日本と同様、法律自体は立派であるが、政府の自由裁量が多いことが特徴である。(もっとも、安全保障や国益に関する恣意性は比べるべくもないが。)法的には、収集された個人情報はほぼ全て中国共産党が自由に使える状態になっていると考えられ、プライバシーポリシーに同意してしまえば、情報は取られ放題になるのである。

 不満がある点は以下の通り。
 ① 超限戦や統一戦線などの軍事的な面には触れていない。軍にどのように活用されているのかの事例があればよかったと思われる。ただ、この手の情報を公開情報から入手するのはかなり困難であり、含められなかったとしてもやむを得なかったのだろう。
 ② 提言において、具体的な法制度や体制強化に触れられていない。貿易制限、アメリカのCEFIUSや日本のNSC経済班などの強化といったようなものがなく、個別具体の成功例をもう少し取り上げても良かったのではないか。オーストラリアは政治主導で法律的ではない手法で対処しているが、政権や担当者が変わっても現行の政策が維持されるような体制づくりが必要と思われ、これはオーストラリア国民にとっても需要があるのではないか。
 
 日本人はどうしても中国に対しては感情的に物事を捉えてしまうが、こういった報告書をきっかけとし、多くの人々が個別具体的に中国の実態を把握できるようになればと思う。本報告書の続編となる「中国の巨大技術企業を抑止する」についても、後日紹介予定であるため、そちらもぜひご覧いただければ幸いである。

  最後に、以外にも朝日新聞が関連する記事を発表していた。会員登録が必要であるが、ご興味のある方は以下の記事をご覧いただければと思う。
  ↓中国が進める世界規模のデータ収集「リスク認識を」
   https://www.asahi.com/articles/ASP716THGP6WULZU00H.html

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