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下院で可決したメタンガス増税法案について(CFACTの記事)

写真出展:Gerd AltmannによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/geralt-9301/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=70507

 2021年12月25日にCFACTは、下院で可決したメタンガス増税法案に関する記事を発表した。内容は、メタンガス増税法案のもたらす効果及び現在のエネルギー状況について概観するものである。原油価格高騰のニュースはよく取りざたされているが、日本の言論空間では、詳しい数値はなかなか出てこないことから、正確に状況を把握することが困難である。今後のエネルギー動向を先読みするうえで参考になると考えられることから、その概要を紹介させていただく。

↓リンク先(Proposed tax on natural gas will be rough on Santa)
https://www.cfact.org/2021/12/25/proposed-methane-tax-will-be-rough-on-santa/

1.本記事の内容について
 ・先日下院で可決したメタンガス増税法案により、石油およびガス産業の排出ガスに課税されることとなり、2025年までに1トン当たり1500ドルもの税金を納めなくてはならなくなる。バイデン政権は年収40万ドル以下の国民には増税しないと公約していたが、1億8000万人の天然ガスを暖房に利用する国民及び550万もの企業への増税に外ならない。
 ・エネルギー情報局によると、天然ガスを主な暖房燃料としている家庭の半分は、昨年度比で30%以上も高い料金を支払っており、もし今年が厳冬であれば50%以上にも達すると見込まれている。アメリカガス協会の試算では、今回のメタンガス課税で更に17%値上がりするとしている。ただ民主党はこれに留まらず、更なる規制を導入しようとしている。
 ・エネルギー省によると、この課税は低所得者層を直撃するものであり、富裕層と比較して3倍の負担になるとしている。エネルギー情報局によると、天然ガス備蓄は昨年度比で16.5%低下しており、電力用石炭備蓄は1997年以降の最低水準に達しているとしている。分析者によると、今年がたとえ厳冬でなくとも、石油・天然ガス価格は記録的な水準に達すると見ている。
 ・このような規制の始まりは、2010年の炭素排出権取引法案に始まっている。この動きに続くは、オバマ政権のクリーン電力計画による化石燃料規制である。(これは裁判にて敗訴した。)そして今回のメタンガス増税法案となるわけだが、これは新しいクリーン電力計画であり、急速に発電エネルギーを再生可能エネルギーに代替しようとするものである。(しかしこの法案は、上院で民主党のマンチン議員により否決された。)
 ・ただバイデン政権は矛盾する動きも見せており、最近の電力価格高騰に伴い、OPEC諸国に原油の増産を要請しており、ホワイトハウスの高官は石油ガス産業に価格高騰を抑制する最善の対策を聞き取りしている。ただグランホルム エネルギー長官は、政府がエネルギー価格を下落させることはできないと述べている。
 ・本法案のそもそもの目的は、全エネルギーの85%を占める化石燃料を再生可能エネルギーに代替することで気候変動・地球温暖化に対処するというものであるが、風力発電機及び太陽光発電機は中国から購入しており、更にその中国は毎週1基ずつ新しい石炭発電所を建設しているのである。
  また今回の計画によると、現在98%を占めるガソリン車を電気自動車(現在2%)に代替することとしているが、これは大量のレアアースを必要としており、これも中国から購入することになる。(中国のレアアースの世界シェアは、85%を占めている。)
 ・このような動きの中、石炭価格1メータートン当たり200ドル以上上昇しており、これは2019年度比で3倍もの価格となっている。フィリピンの石炭生産企業によると、昨年度比4倍の価格で取引されているとしている。
 ・インドは深刻なエネルギー不足に陥っている。インドの発電量の70%は石炭であり、石炭備蓄が過去最低水準になっていることから、ラジャスタン州は計画停電を予定しているほどである。ヨーロッパもロシアの天然ガスへの依存を強めており、バイデン政権が黙認したノルドストリーム2が活躍することだろう。

2.本記事読後の感想
  今回の記事は現状をまとめたものであるが、何度もひどい状況である。アメリカやヨーロッパは港湾施設などの頑張りが足りないなどの要因もあり、いびつな形でインフレが進行しているため、全体としての物価がなぜか下落している日本とは同列に語れないが、ただこれは他人事ではない。
  少しばかり原油価格が落ち着いているからと言って、トリガー条項を発動させなくてもいいという水準ではない。エネルギー価格の高騰は低所得者層を直撃するものであり、冬季の死者増加にもつながりえる問題である。今年が厳冬でなければ問題ないが、ことし2月のような状況が発生しないとも限らない。ここ数日の寒波によりかなりの降雪があったことから、同様の寒気が流れ込めば同じような状況に陥ることは容易に予見できる。アメリカやヨーロッパの自滅に付き合わず、日本はエネルギー確保に動くべきである。
 
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