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二酸化炭素回収・貯留技術の非現実性(CFACTの記事)

写真出展:Gerd AltmannによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/geralt-9301/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=7143344

 2023年5月3日にCFACTは、二酸化炭素回収・貯留技術の非現実性に関する記事を発表した。内容は、二酸化炭素排出量に対して回収・貯留量が非常に少なく、コストも法外であることから、本技術が非現実的であることを指摘するものである。
 日本でも資源エネルギー庁が宣伝しており、苫小牧などの地域でも実践されているが、壮大な無駄遣いであることが良く分かる内容となっている。ニセ科学を見抜くための参考として、本記事の概要を紹介させていただく。

↓リンク先(The practical impossibility of large-scale carbon capture and storage)
https://www.cfact.org/2023/05/03/the-practical-impossibility-of-large-scale-carbon-capture-and-storage/

1.本記事の内容について
 ・米国環境保護庁は、発電により発生する二酸化炭素量をより厳格に規制する規則を制定しようとしている。新しい発電所は二酸化炭素回収・貯留施設を導入するか水素発電施設に移行するかの2択を迫られることとなる。今後は発電所以外の重工業にもこの手の規制が適応される可能性があるが、二酸化炭素回収・貯留技術そのものが非現実的であり、この試みがとん挫することが予見される。
 ・二酸化炭素回収・貯留技術は、工場などから発生した二酸化炭素が大気中に放出される前に貯留施設に移送し、半永久的に貯蔵するというものである。貯留はフィルターをかけるなどの手段で実施されるとされており、地下タンクなどに貯蔵される。本技術はここ20年ほどで大きな注目を浴びるようになり、石炭精製や鉄鋼製造、化学、肥料などの生産工場の二酸化炭素排出を大幅に削減することができるとされている。
 ・しかしながら二酸化炭素回収・貯留技術は、その法外なコストのため、なかなか実装されるまでに至っていない。世界で39施設が稼働しており、年間4500万トンの二酸化炭素が貯留されているが、これは世界の二酸化炭素排出量のたった0.1%に過ぎない。またこれらの施設は予算に見合ったほどの貯留量を達成できていないにも拘らず、先進国は数十億ドルもの補助金を拠出しようとしている。世界中で300以上の施設の建設計画があるが、それでも世界の二酸化炭素排出量のたった0.5%しか貯留できないのである。
 ・イリノイ州、アイオワ州などの石油産業が盛んな州は、二酸化炭素排出を抑制するパイプライン建造に苦慮している。しかし地下貯蔵施設などの建造に対しては、地元の農家などから強い反発を受けている。ワイオミング州は石炭産業が盛んな州であり、貯蔵施設建造の有力な候補であることから、2020年3月に2030年までに石炭火力発電の20%に二酸化炭素回収・貯留技術を導入するよう義務づける下院法案を可決した。しかし州の2大発電企業はこの法案に反発しており、2つの石炭発電所に二酸化炭素回収・貯留技術を導入するだけで、9億8000万ドルの予算が必要であり、経済的に現実的な案ではないと主張している。
 ・本技術で回収できる二酸化炭素量に比して、排出量は膨大である。産業が排出する二酸化炭素量は、自然が排出・改修する量の5%程度でしかないが、二酸化炭素回収・貯留技術にとってはその水準でも膨大である。例えばボーイング747の燃料消費により、大気中に3.16kg/kmの二酸化炭素が放出されるが、たった1,000kmのフライトで二酸化炭素排出量は3トンになる。ノースヨークシャーの発電所は2万トンもの木材ペレットを発電に使用しているが、これは毎日475台のトラックにより運搬されており、二酸化炭素回収・貯留技術が1日に貯留できる二酸化炭素量の2倍の量となっている。
 ・発電所以外の産業も含めた場合、二酸化炭素回収・貯留技術のコストはス兆ドルにも上り、数十年単位での投資と道程の水準となる。国際エネルギー機関は、2050年までに9%の二酸化炭素が貯留されるようにする目標を設定しているが、目標を達成するには70から100の大規模施設が必要となる。現在39施設しか稼働しておらず、目標の20%を達成するにも数千億ドルの予算が必要となる現状を考慮すると、コスト的にも、技術的にも見合わないことは火を見るよりも明らかである。

2.本記事読後の感想
 今回の記事は、地球温暖化対策に関する科学や政策が、揃いもそろって非現実的なものばかりであることをよく示している。少しばかり科学リテラシーがあれば気づきそうなものだが、大半の日本人は勉強をしないため、こういった単純な情報に騙されてしまうのである。
もし二酸化炭素回収・貯留技術が、地球温暖化対策ではなく農業に利用されるということであればまだ現実味があるというものだが、こういったことを指摘するまともな言論がないのが、日本の現状なのである。
 報道が貧困であるのは言を俟たないが、地球温暖化に対する反論もお寒いものである。例えば、保守系論者は太陽光発電パネルのせいで河川が氾濫したというような安易な批判をしているが、これは事実確認や検証が十分でない情報である。確かにこういった部分的な要因が作用した可能性はあるが、短時間でどの程度の雨量があったかを確認し、反乱危険水位との関係性を見なければ、科学的な根拠に基づいた反論とはならないのである。
 批判する側がされる側と同程度の説得力しか持たないのであれば、情報量が多い敵に負けるのは必然である。好みで定性的に情報を取捨選択するのではなく、情報の内容でものごとを判断するべきである。

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